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他称邪神のアイリスさん  作者: イトーちゃん
第一章 魔王軍元帥のアイリスさん
2/46

2.会議して5分でバトル

 1.魔王城・アイリスの自室


 コンコンっと朝っぱらからノックの音がしたと思ったら返事も聞かずに四天王のニルバーナちゃんが部屋へ上がり込んで来た。とても可愛らしいダークエルフの娘さんである。


「失礼します。宰相さんに言われて来ました」


 何を言われて来たのかは分からないが後ろに続く四天王のイフリートくんが押してる台車に拘束具と思しき物体が山程積まれている所からして碌な用事ではあるまい。


 全て任せる。好きにしたまえ。


 任せた結果私には首環、手錠、鉄球付きの足枷が装着され、全身を鉄鎖でぐるぐるの簀巻きにされた。


 なんでこんな意味の無い事を?


「言われた通りにやっただけなので私にも意味は分かりません」

「……」


 ニルバーナちゃんにも意味の無い事をしている自覚があったらしい。

 私は影が本体の不定形魔法生物だ。現影流体とも言われるこの身体はその気になれば魔王城を包み込むくらい巨大化する事もできるし針の穴に通す糸の如く細くなる事もできる。

 変幻自在の自慢のボディーである。

 であるので物理的な拘束は意味を成さない。

 そしてそんな事は魔王軍の者なら誰でも知っている事なので縛り上げられる意味が分からない。


 イフリートくんは何も言わない。

 別に無口キャラと言う訳ではない筈なのだが私の前では滅多な事では発言をしない。

 私が居ない所ではペラペラ喋り倒しているのを盗聴魔法で聞いた事もある。

 しかし私の前では何故か喋らないわけだが……


 影が本体の私に体重は無いので実質無意味な鉄塊分の重量を得た私を二人がかりで担いで部屋の外までえっちらほっちら運び出してくれた所、四天王のミノタウロスくんが待ち構えていた。


「会議室までお運びしますぜ」


 良きに計らえ。


 私はミノタウロスくんにお俵様抱っこで会議室まで連行された。


 2.魔王城・会議室


「揃ったようですね」


 ニヤけ面を晒しながら宰相くんが掛け声を発した。


 頂点に立つ魔王くん。

 武官トップの元帥。つまり私。

 文官トップの宰相くん。

 現場指揮官の四天王たち。

 以上の7名によって魔王軍の会議は行われる。

 本日の議題は植民地支配も安定した為、次なる戦略目標の策定と私の軍法会議である。

 罪状は味方兵士の乱獲、宰相抹殺未遂、魔王城の器物損壊である。


 なんで拘束したの?


 どうせただの嫌がらせだろうが一応聞いてみる。

 答えを返して来たのは予想に反して魔王くんだった。


「形だけでも反省してる風に見せたくてね……」


 切なげな声音であった。

 宰相くんの差し金とばかり思っていたが魔王くんの発案だったらしい。

 形以外で私が反省する事は無いと思われている様だった。


 別に私だって反省する事は山程あるが。

 例えば国土錬成陣を発動した時に家族を逃さなかった事とかは反省も後悔もしている。


「しかし軍法会議って言ってもアイリス様にどんな罰が下せると言うんで? 鞭打ちでもしてみるんですかい?」


 ミノタウロスくんは私への処罰に否定的な様だ。何せ意味が無いからな。痛覚も無い。


「挙げ句打った鞭と同じ数の隕石がこの魔王城に撃ち込まれるのでは……?」


 たまに口を開いたと思ったら私への解釈率の低い発言をするイフリートくんであった。


 やらねーしやれねーよそんな事。


 魔力は身体から切り離した瞬間から凄まじい勢いで霧散する。

 それを防ぐ為に魔法はまず魔力を属性と言う型に嵌めて世界に楔を打つのだ。

 仮に魔力を引力あたりに変換したとしてもそれを宇宙まで届かせて、千里眼で漂流小惑星を見つけてキャッチして地上まで引っ張り込むのにどれだけの魔力がかかると思ってるんだ?

 人間がやるなら確実に儀式魔法クラス。

 隕石落としと言う言葉に浪漫は感じるが、実現可能性の低いコストパフォーマンスだ。

 そんな無駄な事に魔力を使うくらいなら、


 岩塊を生成して投射すればいいだけだろう?


「「……」」


 無言の視線が飛んで来た。


「生身の肉体を持たないアイリス様には精神的な罰を与えないと意味が無いと思います! おやつ抜きとかどうでしょうか!」


 可愛いニルバーナちゃんは私への理解度が高い。

 この魔王軍で無条件で私の味方をしてくれるのはニルバーナちゃんだけである。

 罰の内用が緩いのも加点対象だ。


「食べなくても死なない存在に食事制限を……? もっと……こう……精神を破壊する魔法とか無いんですか?」


 そんな魔法があったらのならきみは既に廃人になっているだろうね。


 私への害意を隠そうともしない宰相くんに世界と私の慈悲深さを伝えた。


「そもそも文化が違うのでは? アイリス様のご出身は不定形生物が寄り集まったヘーランド公国ですから、部位欠損を軽視する土壌が出来てしまっているんです! 普通の魔族は体が欠けたら致命傷だと言う事を知ってもらいましょう!」


 ニルバーナちゃんが擁護してくれているが私とて元は人間だったのだから人間だったら指の一本でも欠けたら大事件だし魔族だって再生に時間がかかる事は理解している。

 しかしヘーランドにおいてはノリツッコミで相手の身体を爆散させる事は良く見られる光景だったので碌な否定を思いつかなかった。


「種族の問題か? 元帥様は殿方に愛を嘯きながら心臓を抉り取っていそうな性分をしていそうじゃないか?」


 どういう事だよそれはぁっ!

 そんな事したことが無いわ!

 偏見ってレベルじゃないぞこのクソ人魚。記憶を勝手に改竄してやがるっ!


 四天王のマーメイドちゃんとは専門分野の違いで戦場を共にした事が無い為、私が戦う所を見た事が無い。

 だから私の実力を過小評価していてたまに舐めた口をきいてくるのだ。

 圧倒的な力で他者を嬲る時に愉悦を感じる気持ちはあるが、そこに愛情が混ざり込む程に私は破綻した人格をしていない。


 突然のヘイトスピーチにキレた私はスックと立ち上がりテーブルの反対側に居たマーメイドちゃんの元へと回り込む。

 怒りで沸騰した魔力が私の体に纏わり付いた拘束具をジュワッと蒸発させていく。


「形だけすら無理なのか……」


 魔王くんが切なげに鳴いた。


「こんな事もあろうかと転移魔法陣を床に刻み付けてあります」


 広くも無い会議室で戦闘行為をされたら困るのだろう。

 会議室に仲間割れを想定した装置を仕込むと言う性根の悪さを披露しながら宰相くんがテーブルの裏側のスイッチをポチッと押した。

・魔王軍。人間襲撃サークル。

魔王くん。意識高い系青春派魔族。

宰相くん。文官然としていながらAGIが高い。

ニルバーナちゃん。風の四天王。ダークエルフ。

イフリートくん。火の四天王。

ミノタウロスくん。地の四天王。

マーメイドちゃん。水の四天王。

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