2/20
人知れぬ怪しい地下の小部屋にて……
その暗闇の中で、今まさに時代が変わろうとしていた。
軍事力……経済力……国々のパワーバランスを決めていたそれらの概念が、ほんの十平方メートルにも満たないこの地下の小部屋で、たった今覆されようとしている。
「……博士は始末したか」
黒ずくめの男がそう問いかけると、向かい合った男は静かに頷いた。
「研究員どももまとめて消えてもらった」
「これで、コイツの製造方法を知るのは我々だけになったということだな」
二人の間には、小さなテーブルが据えられていた。裸電球が揺らめいて、机上に置かれたボストンバックを不気味に照らしている。
「死人を自在に操るこの兵器さえあれば、もはや我々に逆らうことができる存在はいなくなる」
「ああ……」
顔の見えない男は、そう言ってボストンバッグに手を伸ばした。
ジジジ……とジッパーが開かれる音がコンクリートの壁に反響して、ついに驚天動地の兵器がその姿を――
「……え?」「……あれ?」
しかして、ボストンバッグの中身は空だった。