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0−1 始まりは迷惑メール?

「働きたくないなぁ……」


 出勤前、いつもと同じ愚痴をこぼす。

 大学を卒業して10年、俺は代わり映えのしない毎日に飽き飽きしていた。

 大手IT企業のカスタマーセンターで勤務している俺は、いつもと変わらないスーツで、いつもと変わらない業務を淡々とこなしていた。

 かかってくる電話といえば、自分勝手な顧客からの見当違いのクレームばかり。

 だからと言って適当な対応は出来ず、電話越しに頭を下げてばかりの日々を過ごしていた。

 たまの休みは疲れ果てて自宅で寝ているか、趣味のゲームを少しやるばかり。少なくはない給料も使い道がなく貯まっていくばかりだ。

 そして、口座の残高が貯まっていくと共に、ストレスも溜まっていく。


「働きたくないなぁ……」


 また同じ愚痴をこぼして俺は家を出た。


 茹だるような暑さの中、最寄り駅まで自転車で向かう。

 駅構内にあるワクドナルドで朝ワックを食べながら、スマホでメールをチェックする。


『ご当選のお知らせ』


 怪しげな件名のメールが届いていた。きっと迷惑メールだろう、特に懸賞など申し込んだ記憶がない。


「しかし、ご当選のお知らせってひねりがないなぁ……これくらいの方が皆開きやすいのか?」


 ボソッと呟きながらメールを開く。個人的には「主人がスナネズミに殺されて3年が経ちました」など一瞬で興味が湧いてくるような件名の迷惑メールが好きだ。迷惑メールの送信をしている悪徳な業者とはいえ、そのユーモアには脱帽される。

 それはさておき、メールには、こう書いてあった。


『貴方の夢が何でも1つ叶う権利に当選されました。下記のリンクからフォームの入力をお願いします。なお、本日中に入力がされなかった場合は自動的に貴方が最後に心で願った夢を叶えます。とても些細な願いだとしても決定されてしまうのでご注意ください』


「怪しすぎるだろ、これ」


 きっと入力フォームには個人情報を入力する箇所がたくさんあるのだろう。ホイホイと引っかかった入力者の個人情報を販売するか酷い場合は架空請求などのターゲットにするに違いない。

 そういえば、うちの会社のサポートセンターにも「個人情報を入力してしまったがどうしてくれるんだ」と見当違いのクレームが来ることがあるな。自分で入力しておいて、どうしてくれるんだは無いだろうと思ったな。

 とにかく、こういった迷惑メールのリンクはそもそも踏まないのが鉄則だ。開いただけでウイルス感染源がダウンロードされてしまうこともあるからな。

 メールを直ぐに削除して俺は仕事に向かった。


 いつも通り仕事を終わらせ自宅に帰り、いつも通りに食事を摂る。

 そういえば、ここ数年ちゃんとした自炊をしていないなぁ、と思いながら今日もインスタントラーメンを食べていた。

 大学時代はパンを焼いたり、しっかりとした食事を準備していたのにな、と自嘲しながら麺を啜る。


「貴方の夢が叶う権利ねぇ……本当にそんなものに当選すればいいのに……」


 食事をしながら思い出していたのは今朝の迷惑メールだった。

 もし夢が叶うなら、どうしていたかなと考える。やっぱり仕事はしたくないよな、でも、仕事をしないなら一生遊んで暮らせるくらいのお金がないと駄目だよな。

 それなら、宝くじの当選とかが俺の夢なのか? それもまた違う気がする。

 そもそも毎日の仕事の中で現代日本の人間の暗い部分、嫌な部分を見過ぎていたのだ。どうせ宝くじに当たったところで、どこかから情報が漏れ、知らない親戚や宗教団体から寄付やら金を貸してくれやら電話が来るに決まっている。

 だったら、ハワイとか南の島で一生遊んで暮らすのはどうだろう?


「駄目だ、俺英語わからん」


 自慢じゃないが英語は中学からずっと苦手で一度も試験で平均点を超えることはなかった。

 それなら、英語ペラペラにしてくれてハワイで一生遊んで暮らしたいならどうだ。


「いっそのこと漫画やラノベみたいに現代知識を持ったまま異世界に行かせてくれたらどうだろう。一生遊んで暮らすお金を持ち異世界旅行……凄く魅力的だな」


 そんな馬鹿馬鹿しいことを考えながら、気づいたら俺は眠りについていた。


「おぬし、メールをちゃんと読んだのか。何でも叶えられる夢は“1つ”だけじゃぞ」


 夢の中で知らない声が聴こえた。あぁ、確かにそんなこと書いてあったな。

 そうか異世界に行くのと、一生遊べるお金が欲しいは確かに2つの夢になってしまうか……

 しかし、それなら異世界に行きたいは駄目だ、言葉がわからない。

 選ぶなら一生遊ぶ金しかないかな……


「ふむ、この世界ではないどこかに行きたいが言葉に不安があるんじゃのう……」

「まぁ、それくらいであればちょっとしたオマケで何とかなるじゃろうな……」


 見知らぬ声は何やら一人で納得していた。夢の中の意識は、そのまま薄れていった。

初めての執筆のため誤字脱字やおかしな表現があるかもしれません。

思いついたままに書いているのでおかしなところがあれば是非ご指摘ください。

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