超能力者の憂鬱 part9
超能力者の憂鬱 part9
俺はスクーターで警察署に向かう。
頭がパニクっている。
「社長、、社長、、」
社長には迷惑をかけられない。
こんな俺を拾ってくれた社長に迷惑はかけられない!何も恩返ししていない!
俺はヘルメットの中で涙を流していた。
警察署に着くとすぐに事故車両が目にはいった。
早川の車だ。。
リア部分がメチャクチャだ。フロント部分も潰れている。
俺は心臓が痛むほど苦しかった。
そして急いで交通課に行った。
すると社長が一人で廊下の長椅子に座っていた。
「社長、、」
俺は社長に声をかけた。
「なんだ、笹本、、お前はいいから家に帰ってろ!」
「そんな訳にはいかないです!俺が事情を話しますから、、」
するとすぐに交通課の警察官が現れた。
課長と名乗る警察官はどうされましたか?あちらでお話しを聞きますと言って、個室に入った。
俺と社長は事情を話した。
その話しを聞いた課長は、しばらく考え込んでいた。
そして立証は難しいと言った。
事故とエンジンオイルとの因果関係は検分では分からないし、もしエンジントラブルで車が止まったとしてもオイルのせいかまでは分からない。
大体、エンジンルームも潰れてオイルも当然漏れている。
正直、分からないとの事だった。
そして、この件は黙っておくのであまり考えすぎないように、と言ってくれた。
俺と社長は頭を下げて警察署を出た。
そして、駐車場に止まっている早川の車を二人で見ていた。
確かに、あんなに潰れているのではエンジントラブルかどうかは分かるはずもない。
俺は、正直ホッとした。
こんな事を思ってはいけないのかもしれない。
しかし、人間の心というのはそんなものだ。
そんな事を思っていると社長が俺に聞いてきた。
「笹本、正直ホッとしているか?」
「え?、あ、、いや、、」
俺は何も言えなかった。
社長は俺に思いもがけないことを言った。
「笹本、俺は、、もう工場を閉めようかと思っている。」
「え!?そんな、、」
「まあ、そのうち分かる。今日はゆっくり帰って明日の通夜に行ってこいよ。」
社長はじゃあなと言って帰って行った。
俺も家に帰った。
正直、今日の出来事は忘れたい。考えたくない。
俺は早目に寝る事にした。
そして次の日、中々布団から出られない自分がいた。
眠たい訳ではない。何もしたくなかった。
夕方になってやっと起き出した。
早川の通夜に行かなきゃ、、
俺はスーツに着替えて早川の通夜の葬儀会館に向かった。
葬儀会館に着くと顔見知りの同級生、そして親族の方達がいた。
俺は誰とも話したくなかった。
遺影に手を合わせすぐに帰ろうとした。
「おい!笹本!」
早川と仲のいい同級生の土田だった。
「お前、事故の日に早川の車の点検したんだろ?何も異常なかったのか?」
俺は当然だ、エンジンに異常はなかったしタイヤも大丈夫だった。と答えた。
「そうか、、なんかエンジンから変な音がする、、とか言ってたけどな、」
俺は、何も異常はなかった。と言ってすぐに家に帰った。
俺は動悸が止まらなかった。
俺は、、俺は、、、葬式に行きたくない。
もう同級生に顔を合わせるのは嫌だった。
ごめん、早川、、、
俺は次の日、家から一歩も家に出なかった。
その日の夜、、
23時過ぎだろうか、、
消防車の音がやけにうるさい。
近い、、
!!
工場の辺りだ!
まさか!?
俺はすぐにスクーターに乗った!
工場に近づくにつれ、まさか、、が最早確信に変わった。
工場が燃えている!!!
俺は工場に着くと、愕然として膝から崩れ落ちた。
そして、社長、大石君、三吉も現れた。
俺は「社長、、社長、、」
と泣きながら社長を見上げた。
社長はただ黙って自分の工場が燃えているのを見ている。
三吉は「そんな、、」と言い言葉が出ない。
大石君は泣いている俺の肩に手をやる。
そして大石君が俺に言う。
「全部、三吉から聞いた。笹本。お前は早川にいい事をしようとした。そして工場の為に顧客を紹介した。お前は悪くない。」
俺は大声で泣いた。そして、早川と偶然コンビニで出会った事を後悔していた。
あの時、、コンビニでバッタリ合わなければ。。
明け方、、
ようやく鎮火した建物の残骸をみんなで片付けていた。
そして、社長が瓦礫を拾いながら俺に言う。
「笹本、、俺が会社を辞める、、って言った意味が分かったか?もしこれが放火なら、、」
放火、、、
「もしこれが放火なら、人の憎悪は計り知れない。その責任を取って辞めようと思った。事故の原因は分からない。でも死んだ方になってみたら、分からないではすまされない。」
俺は何も言えなかった。
社長はただな、と言って続きを話す。
「さっき大石が言った事、お前はいい事をしようとしたんだ。お前は悪くないから。」
そう言って俺を励ましてくれた。
ある程度片付いた後、社長はみんなに悪いけどこの会社はもうなくなった。みんな済まない。と言って頭を下げた。
大石君も三吉も、、
泣いていた。
社長は次の仕事を紹介するからと言ってくれた。
しかし、、俺は断った。
その一週間後、、
俺はこの街から引っ越した。
逃げるようにこの街から去った。




