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3章 12話 無念。。

3章 12話 無念。。


差出人は不明。パソコンで打たれた手紙だった。

『前略 突然このようなお手紙をお届けするご無礼をお許し下さい。32年前の事件、あなたのご主人は殺されました。自殺ではありません。犯人は田口という男です。金貸しの夫婦が殺されたのも犯人は田口です。その犯行に使われた拳銃は前川という男が持っています。田口が遠い知り合いでもある前川に預けたのです。前川は、現在前川総業という会社の社長をしているはずです。32年間、ずっと黙ってて申し訳ありませんでした。私は末期ガンです。死ぬ前にどうしてもあなた様にお伝えしたくてこのような手紙を出しました。私はスナック経営をしていた田口の常連客でした。本当に申し訳ございません。』


これは、、、

私とらんはこの手紙を読みお互い言葉が出なかった。

事実は過酷だ。32年間、ともこ、、工藤ともこは悲しみと苦しみと憎悪と心の痛みそして無念、ずっとずっと闘いながら生きてきた。お子さんを育てながら。そして子供も大きくなり、自分の年齢も60歳を超えやっと余生をゆっくり過ごせる。そんな時にこの手紙。。

私はともこの憎悪、そして無念。。拳銃を手に入れた時のともこの感情。。警察の建物に発砲したい気持ち、、計り知れない想いだったんだろうと思った。


「それで、前川さんのまかないを?」

「いえ、、それは実は偶然なんです。偶然派遣先が前川邸で。その偶然が心に何かが生まれたのかもしれません。」

偶然、、、

私は、死んだご主人が導いているとしか思えなかった。

私はここにいる。私の拳銃はここにある。。と。


「それで、核心を聞きますがその拳銃を、その金庫から盗んだのはあなたですか?正確にはあの金庫を開けたのはあなたですか?」

「、、、それは、、言えません。」

「それは何故ですか?」

「、、、、」

ともこは話そうとしない。


「では、質問を変えます。その元旦に発砲した後、その拳銃はどうされましたか?誰かに預けませんでしたか?」

「、、、言えません。。」

私は少しため息をついた。


「ともこさん、あなたの娘さん、お名前は?これは調べたら分かる事です。お答え頂けませんか?」

ともこは少し強い口調で答える。

「娘は関係ありません。さあ、もういいですか?夕飯の準備がありますので、この事はいずれ時期が来たら前川に話すか警察に行こうかと思っておりますので、、」

私はらんを見た。

らんも首を横にふる。。仕方ないか。。

「ありがとうございました。ともこさん。きっとあなたのご主人が守って下さいます。あ、最後にご主人のお仲間の金子さんという方、ご存知ですか?」

「金子さん、、ああ、少し背の小さい、、」

「はい。金子さんもご主人の無念を晴らすためにあの発砲のあったビルに来ていたんですよ。きっとご主人が金子さんを呼んだのだと思います。その金子さんから色々お話しをお伺いしました。」

「そうですか、、」

ともこはそれっきり黙りこんでしまった。

私は何かあればここに連絡くださいと名刺を置いた。

「それから、、」

ん?

ともこはまだ何か言いたそうだ。

「もう一人の探偵さんも、今日の午前に来ました。」

何!?

「青田!?」

「はい。もうお二人の探偵さんにそこまで調べられてるので、もう、、」

「そうですか。その判断はともこさんにお任せ致します。」

そう言って前川邸を後にした。


車中、、

「青田か。違うルートからともこに辿りついたか。となると後は拳銃の在りかだけだろうな青田は。さすがだな。」

青田はあの元旦の発砲のあったビルには辿り着いている。

外国人に聞き込みをすれば、女が拳銃を発砲したぐらいまでは分かるか。。

「だけど、これで元旦までの拳銃の謎はほぼ解けたな。らん。」

「事件の概要は全て揃ったわ。けど、本当にご主人さんが呼びおこしたのかもね。」

「ああ、そうだな。外国人から守ったのも、金子さんと俺たちを結びつけたのも、そして前川邸のまかないの仕事についたのも、全てご主人の工藤さんかもしれないな。」

「そうね。結びつけるか。あるのかもね。」

独り言のように話したらんはその後、車の窓の外を見ながら黙ってしまった。


事務所に着いた時刻は午後16時過ぎ。

ホワイトボードに書き出した推理をらんと整理する。

◯32、3年前に前川が知人から拳銃を預かる。

→田口から預かる。

◯年末から年始にかけて金庫から盗まれる。

→滝口ともこ単独?

◯元旦に発砲事件。(銃弾が二発残っている。無関係か?)

→滝口ともこが偶然発砲する。

◯高田が綾さんの家に拳銃を隠す。1月2日から3日頃。

◯1月10日、別れ話し。

◯1月14日、拳銃発見。

◯3月15日、綾さんが事務所に相談。

◯3月16日、石井所長と前川宅へ (今日)

◯3月20日、高田が出張から帰ってくる。


そして、謎。

◯前川氏が拳銃を預かる事になった理由。知人は誰?

→殺人容疑者の田口から預かる。

◯金庫から盗まれる。錠前師?ピンポイントで拳銃だけ盗む。

32、3年前との関連は?

→滝口ともこ単独?

◯銃弾の残り二発?今手元にあるのは二発。盗まれたのも二発。これはあっている。が、元旦に発砲しているのが今回の拳銃なら残り一発のはず。錆びてるから撃てない?

→実は一発あった。

◯高田が持っている理由。元旦に何が?

◯綾さんに連絡を取らない?恋愛の別れ話が理由?


「なあ、らん。こうやって見ると綾以降の事が分からないよな。」

「結局そうね。前川さんの依頼はほぼ全て出揃ったわ。

拳銃もここにある。。、、、あ、、」


「ん??」

らんが何かを思い出した。

「コインロッカー。。」

私は、あ、、と言い、すぐに

「急いでいこう。まだ3日目だから調べられてないはずだ。」

私とらんは急いで駅のコインロッカーに向かう。

コインロッカーに到着。急いで開ける。

カバンはある。。セーフ。

中身は、、私はカバンを外に出さずにロッカーの中でそっと中身を確認する。

らんがうまくガードしてくれている。

「あった??」

らんが小声で聞いてくる。

セーフ。。

私はらんに大丈夫と言い、違うロッカーに閉まった。


そして事務所に戻る。

「なあ、らん、正直こんな事してられないな。拳銃。」

「そうね、、前川さんは今日は遅いだろうから、明日正直に話すしかないかもね。本当は警察に事情を話して欲しい所だけど。」

「我々が言うわけにはいかない、、よな?」

「当たり前でしょ店長。守秘義務という鉄の掟があるからこその探偵業よ。それがなくなったら私達は芸能人の秘密を暴く週刊誌の記者と同じよ。」


上手いこと言うよな。と心の中で感心した。


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