3章 5話 車内。。
3章 5話 車内。。
この金庫を開けた犯人。確証はない。そう何もない。だかららんに言おうか迷っていた。
らんは金庫をまじまじと見ている。
「結構年代物なのかしら?それさえも良く分からないわ。」
「まあ、らん。そこは大した問題ではないさきっと。昭和初期の金庫なら開けるのは難しいが、32、3年前だろ?昭和の終わりの金庫ならそんなに難しいものではないはずだ。」
らんはまじまじと私を見る。
そして一言、
「探偵オタク。」
「いや、俺も本当の所は良く分かんないけど。」
らんは冷たい目でじーーと私を見る。
「宮ちゃんが教えてくれないかしら、」
「まあ、石井さんとは別々になったからな、あてにするのもなんだかな。」
「確かにそれはそうね。」
そしてしばらくすると、1階から声が聞こえた。
「石川くん、らん、終わったわよ!」
石井所長が私達を呼んだ。
1階に降りると、石井所長は玄関でヒールを履いていた。
「じゃあ、私は行く所があるので帰りは宮ちゃんの車で帰ってね。」
そう言って、早々に玄関を出て行った。
私達は前川にまた連絡すると言って家を出た。
宮ちゃんの車に乗る。
助手席に私、後部座席にらんが乗る。
「石井所長は忙しいんだな。正直どう思ったか意見を聞いてみたかったけどな。」
車を走り出したすぐに私は独り言のように話した。
「店長、石井所長が宮ちゃんと帰ってって言った意味分からない?」
宮ちゃんはまっすぐ前を見て運転しながら少し微笑む。
「意味って?」
私はらんに聞く。
「宮ちゃんから色々聞いてね、って事でしょ。ね?宮ちゃん。」
「さすが察しがいいですね。らんさん。所長からは何でも教えてあげてと言われております。」
!!
なんて、器の大きい人だ。
歳下なら惚れてしまう所だ。
私は早速聞いた。
「じゃあ、らん、俺が聞くぞ。なんせ質問のプロだからな。」
らんは冷たい目でルームミラー越しに私を見た。
「宮下さん、あの金庫、ダイヤル式ですが開けるのは難しいですか?」
「レベルがあるとします。レベル5が最高難度とすると、レベル4ですね。」
レベル4、、
宮ちゃんは続ける。
「レベル5はプロの錠前師でも3日はかかるでしょう。レベル4ですからプロでも丸1日はかかると思います。」
「もし宮下さんならどれぐらいで開けれますか?」
「私なら8時間、、」
「宮ちゃんでも8時間なの?」
らんがびっくりして声を上げた。
「はい。あのダイヤルは4層構造になっております。通常はダイヤルを回しながら、引っかかりを探します。それでもダメなら聴診器で音を聞けばその4層の1枚1枚を探る事ができます。あの金庫は引っかかりや音が聞こえにくい素材でできており、その音を聞き分けるのに時間がかかります。」
「時間がかかる、逆に言うと時間はかかるが開けれない事はない、、」
「そうゆう事になります。」
時間がかかる、、私はますます確信を持った。
この金庫を開けた犯人がだ。いや正確には犯人ではないのだが、、
「前川氏との面談、石井所長はなにを聞いてたのかな。」
これは流石に教えてはくれないか、
「石井所長は事件の事は何も聞いておりません。」
「え?」
「本業の仕事の事を聞いておられました。宝石はおいくらするのか、とか一回のイベント催事でおいくら売上げるのかとか、」
「それはびっくり、何か意味があるのかな。らんはどう思う?」
私はらんに聞いた。
「正直、あの人の考える事は計りしれないわ。でも意味のない事はしないとも思うけど、」
でも、と言って続ける。
「もしかして、私達に任せる、って事かもしれないわね。」
そうか、、
それなら期待に応えなきゃな、青田と一騎打ちか。
青田か、少し気になる事があるんだよな。
「宮ちゃん、、あ、いや宮下さんは青田の事は良く知っているんですか?」
「ええ、良く知っております。青田さんは錠前師です。」
!!
何!?
「錠前師か!それでか!」
「何がそれでなの?店長。」
私はらんの質問は差し置き、続けて聞いた。
「宮ちゃん、あの金庫はパッと見てどんな構造か分かるもんですか?レベル4の金庫とか、」
「そうですね。分かると思います。」
「だから!何がそれでか、なの!?」
らんは珍しくしつこく聞いてくる。
「あ、いや、金庫を見せてもらった時、青田は金庫に触ろうともしなかった。写真も撮っていない。少し見ただけだ。それが少しおかしいなって。」
らんは頷く。
「確かにね。錠前師なら一見しただけでレベル4って分かったからかもね。」
「でも、らん。物事には一つの理由だけとは限らないからな。」
「え?どうゆう事?」
「まあ、少し待て。ちょっと頭で整理してから俺の推理を言ってみるから。」
そう言って私は目をつぶった。
らんは少しため息をついて、座敷シートに深く腰掛けた。
そんならんを宮ちゃんはルームミラーで見ている。
そして、車が事務所に着く。
「ありがとう。宮ちゃん。」
私はそう言って事務所に入っていった。
車を降りた宮ちゃんとらん。
「こちらがらんさんの新しい事務所なんですね。」
宮ちゃんはコンビニの建物の事務所を見る。
そして宮ちゃんはらんに話しかける。
「らんさん。中々いいコンビですね。らんさんが自分のペースで会話ができないなんて初めて見ました。」
「まあ、あの人は素人の探偵オタクだからね。でも素人なりに中々いい勘を持っているかもしれないわね。」
そう言って少し微笑んだ。
「いい相棒に巡り会えたんですね。らんさん。石井所長との約束時期も丁度のタイミングで。」
「まだいい相棒かは分からないけどね〜。ありがとう宮ちゃん。」
そう言ってらんは、宮ちゃんと別れて事務所の中に入っていった。




