3章 3話 金庫。。
3章 3話 金庫。。
テーブルの上に並べた400万。誰も受け取らない。が、一人だけ明らかに考え事をしている探偵がいる。
竹川だ。
竹川はテーブルの上に置かれている100万を手に取り、閉じてある自分のノートパソコンの上に置きながら冷静に話す。
「前川さん。お気持ちは分かりますが情報がなさすぎる。ここに我々を呼ぶと言う事は防犯カメラもなかったんでしょう。せめてこの拳銃が盗まれる心あたりでも聞かせて貰えないと手の打ちようがありません。」
正論だ。私もそう思う。
犯人の心当たり、つまり犯人が拳銃を盗む動機。この事件はここが鍵だ。
「竹川君の言う通りっすねー。ただ逆に言うとっすね、ただの泥棒なら探し出すのは意外と難しい。しかしピンポイントで拳銃をとなると意外と見つかるかも知れんっすよ。まあ、心当たりがあればっすけど。」
青田だ。正論だ。私もそう思う。
「前川さん、私達には守秘義務があります。無礼を承知で言いますね。例え過去犯罪をしていても、業務上知り得た事は一切お話ししません。それが守られないと私達の仕事は成り立ちませんわ。」
おーー、、石井所長に言われたら最もに聞こえる。
前川は目を閉じて険しい顔をしている。
仕方がない。私も探偵四天王の一人だ。見事口説き落としてみせよう。私は前川にとどめを刺す。
「どっちみちですね、この件は間違いなくこの拳銃を狙った。つまりこの拳銃に関わる事以外でも、色々調べちゃいますよ。そう、色々ある事ない事。それなら今言える所だけでも情報をお話しした方が賢明ですよ。前川さん。」
石井所長は私の顔を見て少し微笑む。
青田は、おーーその通りと言い、竹川は私の顔を睨む。
らんは、相変わらず前川をじーと見ている。
「分かった。言える所だけでいいなら。」
よし!
「約30年ぐらい前の事だが、ある友人から預かったものだ。それしか言えない。」
青田はふうとため息をつく。竹川は首を横に振る。石井所長は手帳にメモを取ろうとしたが辞める。
らんは相変わらず前川を見ている。
「私は降ります。自信がない。」
竹川はそう言って、誓約書にサインをして100万を受け取った。
「仕方ない。」前川はお礼を言って、帰る竹川を見送った。
「竹川君らしいわね。データが揃わないと仕事さえも引き受けないわ。」
「どうします?石井さん。」
「あら?きっとあなたと同じよ。青田君。やれるだけやってみるわ。」
「石川君はどうします?」
青田は私にも確認してきた。
1400万は確定している。これは完璧に勝ちゲームだ。降りるはずがない。
「どこまでやれるか分からないけど、、」
私はわざと自信がないように答えた。
「おお、、ありがとう。」
前川は、現金を持ってくると言って一旦部屋を出た。
青田は私達に意思の確認をする。
「で、どうします?共闘して1000万を分けるか、競争して1000万を独り占めするか。」
「あら、青田君、1匹狼のくせに共闘はないでしょう。」
石井所長は青田に言う。
「まあ、そうっすね〜。しかし手がかりがなさすぎっすね〜。」
「差しあたり、個別で前川さんに質問をしましょう。まだ聞きたい事はあるはずよ。お互い。」
石井所長は頭の回転が速い。
そして、私にも話す。
「ここからは別々でいいわね、石川君。あなたも探偵としてここに来ている訳だし、何しろあの落とし文句はさすがよ。」
「もちろん。私なんか何もできないでしょうけど。」
これは本音だ。もし何も知らずいきなりここの家に連れてこられても何もできない。そしてこの探偵達と闘える気もしない。
青田が独り言の様に言った。
「そうっすね〜。とりあえず金庫を見せてもらわないとね。」
前川が戻ってきた。
紙袋3つ持っている。現金が入っているようだ。
ではこれをと言って私達に渡す。
「では、前川さん。これから一人ずつ個別にお話しを聞きます。その前に金庫を見せて頂けないかしら?」
石井所長が前川に聞いた。
「ああ、、もちろんだ。2階の寝室に置いてある。」そう言って私達を2階の寝室に案内する。
少し広めのベッド。前川は奥さんはおらず一人でこの広いベッドに寝ているとのことだ。
そのベッドの横に置いてある金庫。
バーナーで無理矢理開けたのかと思いきや、見た目は綺麗だった。
青田は金庫の前でしゃがみこみ熱心に外側や中側を見る。が触りはしない。
「よく分からないっすね〜。」
青田は首を傾げながら金庫の前から離れる。
石井所長は何やら携帯にメールを打っている。
私は金庫などさっぱりなので、らんに聞く。
が、らんも金庫は素人で分からない。
一応見るだけ見てみるが、少し古そうな金庫としか分からない。中の隠し扉を前川に見せてもらう。一見すると金庫の中の奥は壁みたいになっているが、左端の下を押すと奥の壁が開きもう一つの中が現れる。なるほど、素人には絶対分からないな。
メールを打ち終わった石井所長が、
「お二方、できればお先に面談して下さらない?私は専門家を呼ぶわ。」
と言う。
らんは独り言の様に呟いた。「宮ちゃんか。。」
私は青田にどちらが先に聞くか尋ねた。
「そうっすね〜、僕が先でいいっすか?」
私はどうぞ、と言って青田に譲った。




