2章 1話 依頼。。
2章 1話 依頼。。
らんと一緒に始めた探偵事務所。
オープンから1週間がすぎた。やる事といえば人通りの多い歩道でビラ配り。
地道だがこれが一番効果がある。多分。。
まあ、とりあえず暇だし何しろ経費が安い。
この一週間の仕事といえば、一人暮らしの風俗嬢が急遽実家に帰らなきゃいけなくなり、飼っている猫が病気なので病院に行ってなんの病気か突き止めて欲しい、、とか、、
犬の散歩をしていたら、首輪が取れて走って逃げて行ったので探して捕まえて欲しいとか、、、
何だか、ペット絡みの仕事が多い。。
こんなんだったら、ペットの何でも屋でもやった方が儲かったかな、、とか思う程、、、
暇だ。。
そして、らんはずっと一日中パソコンをいじっている。
ホームページを1日で作りあげ、何やら色々情報発信している。
どうやら『無料の一言アドバイスコーナー』なるモノを作って、相談があった人に無料でアドバイスを送っているらしい。
相変わらず、マメな女だ。
しかも、その『無料の一言アドバイスコーナー』に載せている写真、、、
らんの思いっきり笑顔の超キュート写真。
これは、モテないネット住人から別の意味合いで色々相談が来そうだ。
午前11時。
「はあ、、今日もそろそろビラ配りでも行くか。」
私は残っていたコーヒーを飲み干して席を立とうとした。
そんな時だ。
らんがパソコンの画面を見ながらこう言った。
「昼13時には帰って来てね。どうやら依頼が来そうよ。」
まじか!
ネットでの初の依頼の応募か!
「13時に予約受け付けました、って返事したから、
この人、昨日私の無料のコーナーに書き込んできたんだけど、一度ご相談だけでもいいのでお待ちしています。って返事したら、今日13時に来るって。」
らんも何気に嬉しそうだ。
「でも、どうせらん目当てのネクラ男だろ?」
私は嫌味たっぷりにらんに返した。
「あら?ヤキモチ?意外と可愛いじゃーーん。」
そう私に返したらんは、
「女性よ。30代、、みたいね。」
「よし!12時半に帰って来よう!何なら一緒に昼飯でも食べながら内容聞いちゃお。」
そう言って私はビラを持って外へ出た。
らんのネットでの募集、、さすがだな。
もう今はどんな業界でもネットだよな。
こんな優秀な人材、石井所長は良く手放したな。今度理由でも聞いてみよう。
そう思いながら、貰ってくれる筈もないビラを配っていた。
そんな中、一人の男性がビラを受け取り歩きながらビラを見て止まった。
年齢は40代ぐらいのスーツ姿だ。
そして、私の方へ戻ってきて声をかけてきた。
「相談無料ってほんとですか?」
「ええ!オープン記念として30分相談無料なんです!もう相談が殺到して中々予約が取れないんですけどねー!」
私は調子のいい営業マン並みに嘘をついた。
だいたい、予約が殺到してたらこんな朝からビラ配りなんてしていない。
「へー、、そうなんだ、、」
40代の男は一言だけ話し去っていった。
まあそうだろ、、そんな簡単に依頼なんて、、
と思っていたら、またさっきの男が戻ってきた。
「あなたが探偵事務所の人?それともただのビラ配りのバイトさん?」
「はい!私が所長の石川です!」
「へー、若いのにね。じゃあ何かあったら、、また。」
そう言ってまた立ち去っていった。
何か困った事でもありそうだな。走って追いかけて聞いてみようか、、とも思ったが辞めた。
何しろ、今日は予約がある。
30代女性の。
そして、私は事務所に戻る事にした。時間はまだ12時前だが、、
「ただいま。」
「あら、早かったのね。」
らんは相変わらずパソコンを見ている。
「今日の依頼の内容ってどんな内容だろうな。」
「さあ、詳しい事は何も聞いてないから、ただ相談行こうか迷っています。って書き込んできただけよ。」
30代女性か。。
「結婚してるんかな。浮気調査とか、、」
「アンケートでは未婚ね。」
なるほど、、
ペット絡みじゃない事だけは祈っておこう。。
らんはお昼に行ってくると言って外に出た。
私はカップラーメンを食べながららんの作ったホームページを見ていた。
ほんと凄いよな。
以前少し聞いた事があるが、らんはなんで探偵なんかしているのだろう。
ずっとそこの部分は踏み込んで聞けないままだった。
そして、もうすぐ依頼者が来る13時になろうとしていた。




