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らんと拳銃と花束と 1章 1話 面接。。

らんと拳銃と花束と

1章 1話 面接。。


私は小学生の頃から探偵小説が大好きだった。不可解な事件、謎解き、人間模様、様々な思いが重なって探偵が解決に導く。何しろ脳が刺激されるのが子供心に分かった。

謎。。

この一言でワクワクする。

テレビドラマも刑事物が楽しみだった。時には悲しい結末に涙したのを覚えている。

将来、私も探偵になりたい、、

そんな憧れがあった。


私は今年で30歳になる。

思い立って探偵事務所に面接に行こうと思った。

サラリーマンになるにはまだいいだろう。

憧れもあったが、一度本物の探偵に会ってみたい。という興味本意もあった。

まあ、ある探偵事務所が所員募集をしていたからってのがいいタイミングだったのもあるが、、


駅前の少し入り込んだ路地を入った雑居ビルに、まあまあ目立つ看板。

『いしいゆか探偵事務所』

7階建てはあるビルの3階だ。

さほど綺麗ではないビルだが、こんな大きな駅前で事務所を構えるのだからまあまあ儲かっているんだろう。

どんな人が出てくるのか。

私は臆することなくビルに入り、小さいエレベーターに乗って探偵事務所が入っている3階へ行ってみる。

エレベーターを降りたら、ガラス張りの大きいドアがあった。

そのドアを開け、中に入ってみる。

パテーションが置いてあるので中は見えない。

『御用の方は内線電話で0を押してください』

と言う案内が電話の横に置いてあった。


すかさず0番を押す。。

電話に出たのは、40代半ばぐらいの女性だった。

不思議と電話の声で年齢って分かるもんだな、、

「面接にお伺いした石川と申します。」

「はい、今お伺いいたします。」

女性は事務的に答え、電話を切った。


そして、やや小太りの中年のおばさんが出てきた。

「お待たせしました。どうぞ。」

事務的だが、愛嬌はある。が、どこにでもいる主婦っぽい。

きっと、事務員さんなんだろう。


パテーションの向こうへ入ると、右側にオフィスっぽい机の並びで1台、1台パソコンが置いてある。まあ、普通の会社のオフィスだ。

案内されたのは、左側のドアの中。密室だ。

きっとこの部屋で、クライアントの話しを聞くのだろう。


オフィスに置いてある様な机。

そこに向かい合うように座った。

そして、その女性はハッキリとした口調でこう言った。

「初めまして、私が探偵事務所の所長の石井です。」


!?

え?

所長さん?

私は少しギャップに驚いた。どう見ても普通の主婦だ。

「石川 健と申します。この度はお時間頂きましてありがとうございます。こちらが履歴書となります。」

私は、驚きを悟られないように冷静に話した。


「拝見致します。」

なんだ、、なんか普通の会社の面接と同じだな、、

まあ、いいか、、


「ご実家は、北陸?」

え?ああ、、またか、、

「いえ、生粋の名古屋生まれの名古屋人です。」

なぜ、私が『またか、、』と思ったか。

名前のひらがなを見直すとよく分かる。

『いしかわ けん』

昔からよく突っ込まれたものだ。


でも、1回目でよく気付いたな。。

さすが探偵。


所長と名乗るこのおばさんは、履歴書を流す様に読んだ後、

こう言った。

「石川さん、あなた探偵になろうと思った理由、電話で少し伺ったけど、憧れなんですってね。」

「はい、20代が終わる前に憧れの職業を経験したくて」

「じゃあ、質問。うちの事務所、女性の所員は何人でしょうか?」

お、、なんか普通の会社の面接ではなくなったな。。

「そんなの簡単です。全員ですよね。6、7人。そんな所だと思います。」


「なぜそう思うの?」

「まず、人数は先程のちらっと見えたオフィスの机。

7台置いてありました。事務員さんは一人はいると思うので6人、いなかったとして7人。」

所長は、少しニヤケながら話しを聞く。


「そして、全員女性って言ったのは、わざわざその質問を最初にするって事が珍しい。珍しいという事は全員女性かなと。」

「まあ、答えは言わないわ。探偵はクライアント以外は答えを言わないから探偵。」


なるほど、、上手いこと言うな。。


「じゃあ、私の年齢はいくつに見える?」


なんか、居酒屋の合コンみたいだな。。

「正直に言いなさいね。」

私は、遠慮なしに言ってみた。ここでおべっかを言ったら逆効果だと思ったからだ。


「45歳、、ですか。。」


所長と名乗るその女性は、黙って立ち上がって部屋を出て行った。

あれ?なんか、怒らせちゃったかな、、

と、一瞬思ったがそこまで私はバカではない。

自分から年齢を聞いておいて怒るなんて、そんな空気を読めない人間が探偵なんてしないだろう。


5分後、一人の女性が入ってきた。

見た目は30代前半、細めですらっとした美人だ。

ショートの黒髪が気品を漂わせる。

目もぱっちりしていて、脚も細くいい女だ。

何も言わず私の前に座る。

そして、肘を机について自分の顔を支えながらこう呟いた。


「45歳ね〜、、、。。」


ん?


「私が所長の石井です。」


ん??


じゃあ、さっきの40代の小太りの主婦みたいな女性は誰??


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