ハロウィンが嫌いな私の話
どもども、こんばんわ〜リーフです
連載はどうなってるんだとかはまず置いておいてからちょっと書きたくなったので書きました。どうぞお楽しみください……!
私はハロウィンが嫌いだ。
突然何を言ってるのかと思う人もいるかもしれないけどそれでも言う、私はハロウィンが嫌いだ。
小さい頃は家が貧乏で、仮装なんて買うお金も、作るための材料費もないからハロウィンなんていつも通り過ごしていた。
でも周りは違った。
自分以外の家に行って、トリックオアトリートと言ってお菓子を貰う。
勿論仮装をして。
私はしなかったけれど。
いや出来なかったの方が正しいか。
別に、私はそういうのに絶対参加したい、などというお祭り大好き人間ではなかった。
でも子供というのは周りがやっているとやりたくなるものなのだ。
しかし私は母親に一度も仮装させてくれと頼んだことは無かった。
出来ないことぐらいとうに分かり切っていたから。
ある年のハロウィン
その年は自治会かなんかでクラスの友達の家を回ってお菓子を貰おう、みたいな企画があった。
私の家にクラスの友人達が来た。
彼等はいろんな家にしてきたように私の家のドアをノックしてトリックオアトリート、とお菓子をもらいに来た。
その時私はお使いで家にいなかった。
だから、玄関に出たのは母だった。
私の母は子供達に
ごめんね、今日みんなに渡すためのお菓子を忘れてしまったの。ごめんね。
と言ったらしい。
普通の対応だ。
しかしそれがいけなかった。
次の日に私が学校に行くとクラスメイトは私を囲んで言った。
お前ん家貧乏すぎてお菓子も買えないのかよ
と。
私の家は決してお菓子も買えないほど貧乏な訳では無い。
一般家庭に比べれば少し貧乏というくらいでそんなに酷い貧乏家庭というわけではない。
しかし私がいくら弁明しても子供は一度信じたことを疑おうとはしなかった。
その日から私は貧乏貧乏と罵られ、貧乏が伝染るから失せろよ、などと言われ、孤立した。
先生や母には言わなかった。
先生に言っても母に言っても、どのみち母には伝わるのだ。
そんな不要な心配はかけたくなかった。
でも全ての元凶があのハロウィンだと思うと私はハロウィンというものを憎まずにはいられない。
ハロウィンなんて……大嫌いだ。
さて、話は変わるがこんな私にも彼氏が出来た。
付き合ってようやく半年を過ぎるかというまだ初々しいといっても差し支えないカップルだ。
彼は一歳だけ年上だけど、一番に私の事を考えてくれるいい彼氏だと思う。
そんな彼のことが私も大好きだ。
でも今、私達は喧嘩している。
いや、私が勝手にキレているだけなのだけれど。
原因は昨日のハロウィンだった。
彼は私にハロウィンの日は一緒に過ごそうと言ってくれた。
私は、なんだハロウィンだからって、と笑いながらも私はそれを了承した。
今年のハロウィンは初めて楽しめるかもしれない、と柄にもなく思った自分がいた。
しかし昨日のハロウィン当日、彼から、急な仕事が入ったすまないが一緒に過ごすことが出来なくなった。といった内容の電話が来た。
詳細は覚えていない、だけどそんな感じの内容だったと思う。
私はここで何故か怒ってしまった。
一緒に過ごそうっ言ってたくせに、私と過ごすよりも仕事を取るんだ、と今考えてみるとなんともイヤな女である。
そして今は頭を冷やそうと思って外に出ている。
「ハロウィンなんて気にもしてなかったはずなのになぁ……」
不意に言葉が漏れた。
なんて彼に謝ろう、もう別れるって言うかな、彼は私の事を嫌いになっただろうか……そんなネガティブな考えが私の頭を覆い尽くす。
頭を振ってその思考を追い出すと一呼吸ついた。
「ふぅ……」
まだ10月の終わりだと言うのにひどい寒さだ。
私はコートのボタンを止めた。
日はとっくに沈み、風も強くなってきた。
とりあえず寒いし家に帰ろう、と私は寒い中一人で歩いて自宅に向かった。
「……あぁ〜」
家に帰るととても暖かかった。
「あちゃー、暖房付けっぱとか……電気代今月もヤバそう……」
机の上にあったリモコンを手に、エアコンを止める。
周りは暖かいはずなのに
私の心は寒いままだ。
謝ろう。今回のは完全に私が悪い。
携帯を手に取って、彼にLINEを送る。
『近いうちに会えませんか、昨日のことを謝りたいです。』
家に私は一人暮らしだ。
友人が来ることも少ない。
ごちゃっとした部屋の物を全部端っこに追いやって布団を敷く。
布団の中に入ろう、とした時だった。
ピンポーン
玄関のチャイムがなったのは。
「なんだよ今寝ようとしたのに……」
寝ようとした所を邪魔されて気が立ってしまう。
玄関の前に立って、気づいた。
彼なのでは……
さっきLINEを送ったばかりだから来るわけない、と思うけどでももし、彼も仲直りしたいと思ってたまたま私の家を訪ねてくれたのかもしれない。
そんな思考が頭をよぎる。
ピンポーン
チャイムがまたなった。
開けてみよう。
そして彼だったら謝ろう。
私が悪かったと、仕事だから仕方がないのに怒っちゃってごめんねと謝ろう。
私は勇気を振り絞ってドアを開けた。
「……ママ?」
そこに居たのは彼氏ではなく母だったのだが。
「いやー、ごめんね遅くなっちゃって〜」
母を招き入れると母は開口一番そう言った。
「いいよ、別に、起きてたから」
私は彼じゃなくて安心したような、でも少しガッカリしたような気持ちを表にださないよう、母に返す。
「でもどしたのママ、今日来るなんて聞いてないけど?」
「アンタがちゃんと食べてるかと心配になってねぇ、来ちゃった」
母は来ちゃった、の後にてへぺろとでも付きそうな笑顔で言った。
思わず笑いが漏れる。
「そういえば、お腹減ったな……」
「じゃあ、なんか食べる?例えば、鍋とか」
母は顔の横に鍋を持ち上げて言った。
元からそのつもりだったのだろう、母が持ってきたレジ袋にはネギやら豚肉やら白菜やらが詰まっていた。
まったく、用意のいい親だ。
「じゃあ押し入れからガスコンロ出してくるよ、ママはコタツで温まってて」
私はそう言うとその場を離れた。
押し入れを開けると真っ暗で何も見えない。スマホ使うか、とスマホを取り出してライトを付ける。
「えーと、どこだっけ……あったあった」
端っこに埋まりかけていたガスコンロを無理矢理引っ張り出してくるとスマホのライトを消した。
その時ついでに、と見た彼氏とのLINEのメッセは既読すら付いていなかった。
「ふん、いいもん」
私は彼氏のことを一旦頭の端に追いやってガスコンロを片手に戻る。
「早く火付けましょうよ、外は寒かったんだから!」
「はいはいわーってるよ」
私はコンロにガス缶を差し込もうとして、固まる。
「ごめんママ、ガス缶買ってくる……」
「えぇー、ないのぉ?」
「ない……」
というわけで私はさっき脱いだコートを再び羽織る。
「外は寒いから暖かくして行きなさい」
母はそう言って自分の首にかけていたマフラーを私の首に巻いてくれた。
「ん、ありがと、いってきます」
「早く帰ってくるのよ、外は寒いし、危ないからね」
「わーってる、わーってるって」
ガチャリ
私の周りはまた、静かになった。
「はぁ……」
寒い
歩く
寒い
歩く
こんなことになるんなら彼も呼べば良かった。
そしたらじゃんけんで負けた方が買ってこいなー、とかくだらないこと言って、笑って、で結局二人で買いに行って。
でも出来ない。
彼からの返信はない。
明日になったら来るのかもしれない。
でも今日は少なくとも、来ない。
絶対に、来ない。
ドスン
「あ、ごめんなさい」
前をよく見てなかったせいで通行人にぶつかってしまった。
「謝るなよ」
「えっ」
顔を上げると彼だった。
彼は微笑を顔に浮かべながら、私を見ていた。
「こんな時間に一人で外に出るな、心配する」
「え、いや、なんで……?」
私はわけも分からず取り乱してしまう。
「なんでって……仕事終わったら君からLINEが来てたから、家に直接」
「向かったってか、この直結厨め」
私は照れ隠しのつもりでいつものような感じで返す。
「せっかく来たのに直結厨呼ばわりは酷くない?」
彼も笑った。
私も釣られて笑った。
「で、何してるの?どっか行くんなら付き合うよ」
「何言ってんの会ったんだから付いてきてもらうに決まってるじゃない」
わだかまりなんてなかった。
「わがままだねぇ、うちのお姫様は」
「うむ、くるしゅうない」
「なんだそりゃ」
お互い声に出して笑った。
「じゃ、いこ」
「うん、いこ」
歩きながら、私は聞く。
「ねぇ、私の事嫌いになった?」
「なんでさ」
「だって、昨日……完全にイヤな女だったじゃん……」
私の声は尻すぼみに小さくなっていく。
彼は何か考えるように黙った。
「……?」
「なってないよ」
……まずほっ、と安心した。
「そもそも元から君はワガママだし寂しがりだしワガママだしそしてワガママだし」
「よし殺すそこへ直れ」
私が仲直りをしたのは間違いだったかな、と考え始めると同時、彼は口を開いた。
「でも、そんな所も好きなんだよね君のことが」
「…………」
彼は屈託のない笑顔でこっちを見る。
「うっさいこっち見んな前向け」
「ええ!?今結構いい事言ったはずなんだけど!?」
「うるさい、いいから……前向け……」
彼の顔を無理矢理右手で前を向かせる。
だってそうしないと
「そのまま前向いとけよ、こっち見たら……許さないから」
泣いてる顔を彼に見られちゃうから
「ついたよ」
そのまま歩いて5分ほど、私の涙が乾いたところでホームセンターについた。
「ガス缶買わないといけないの、手伝って」
「はいよ」
彼はカゴを持って私の前を歩く。
「ほら、あった」
彼の後をついて行くとガス缶はすぐにあった。
「ありがと」
私はガス缶を一つ、彼の持っているカゴの中に放り込む。
「お菓子は?買ってく?」
「残念でしたハロウィンはもう終わりました〜」
私がべっ、と舌を出してレジに向かうと彼も慌てて付いてきた。
「ったく、ひどい仕打ちだな」
「いいんだよ、こんなことあんたくらいにしかしないんだから」
「それは喜んでいいのか?」
「喜べ」
「……はい」
そんなこんな、会計を済ませ外に出る。
「そーいえばねー、うち今お母さんいるよ」
「ええッ!?」
「だーいじょーぶだって、うちのママそんなこと気にする人じゃないし」
私達は歩く
「いや、そこは気にして欲しいけど」
二人になったからか、寒くない
「一緒に鍋食べよ、三人で」
私達は歩く
「僕も同席していいの?」
うん、やっぱり暖かい
「むしろしなさい、そろそろママにも挨拶しときたいんだから」
一人よりは格段に
「なら……」
「どしたん?」
「いや、気にしないで」
私達は帰る
暖かい場所へと。
「ふぇ〜、ただい〜」
「遅かったねぇ、あらそこの人は?」
ママは流石に帰るのが少し遅かったせいで心配させてしまったらしく玄関の前にいた。
「ああ、紹介します、私の
奴隷?従僕?」
「違いますよ!?娘さんとお付き合いさせてもらってるものです!」
私の発言に驚いていきなり訂正を入れる彼。
いつもこんな感じで慌ててたら可愛いのに。
「まぁ……あなたに……彼氏が出来るなんて……」
うちの母は本気で驚いたらしい、失礼な。
「よろしくお願いします……お義母さん」
こんなに呼びにくそうなお母さん初めて聞いた。
「まぁ入れよ!ママ、ガス缶買ってきたから早く鍋しよー」
「え、ええ!そうね暖かい鍋をみんなでつつきましょう!」
「え、えと、お邪魔します……」
その夜は楽しかった。
最高に楽しかった。
「ママ寝ちゃった……」
「そりゃ君の地元からわざわざ東京まで出てきてくれたんでしょ?そりゃ疲れもするさ」
なんでお前の方が知ってる感だしてんだよ、と思ったけど言わなかった。
「そういえば、さ」
「なんだよ〜」
彼が話を降ってきた。
「ハロウィン、一緒に過ごせなかったじゃん」
「……気にしないでよ、なんかあの時は気が立ってただけなんだってば」
事実、本当は謝らなきゃいけないのは私なんだけど。
「ねぇ、あの時は……」
「仕切り直し、したいからさ」
私が謝罪の言葉を出すより前に彼は話しかけてきた。
「トリックオアトリートって、言ってよ」
は?
こいつは何を言ってるんだろう。ハロウィン私嫌いなのに。
「いいから、一回でいいからさ、お願い!」
彼がそう頼み込むので、私は渋々その言葉を口にする。
「とりっく、おあ、とりーと」
絶対に言わない、そう思ってたはずの言葉を一語一語、渋々と、ゆっくりと口にする。
「お菓子ないけどね」
彼はそういたずらな笑みをその顔を浮べた。
「……なんなんだよ、言わせたかっただけかよ!」
私はついなんかお菓子でも貰えると思っていたから突然の何も無い宣言で笑ってしまう。
「あ、でもないってことはイタズラしてもいいってことだよね?」
私は手をワキワキさせながら彼に近づく。
「た、タンマタンマ!」
彼はポケットから何かを取り出すと、言った。
「お菓子はないけど、もっといいものをあげる」
そうして私の手を取って、それを指にはめた。
指輪
とっても綺麗な指輪。
「……えっ」
「ハッピーハロウィン」
「バカ……」
私の目から、雫が垂れた。
これじゃあさっき隠したのに意味ないじゃん……
「私で、いいの?」
「キミがいい、仕事ってのも実は嘘で君に似合う指輪を一日かけて探してただけだったりする」
「バカ……」
「流石にそんなに怒るのは予想外だったけど」
涙が、止まらない。
「指輪渡す前にフラれちゃったらどうしようとか考えててさー」
彼の言ってる言葉が半分も聞こえない。
「バカ……バカバカバカ」
「ひどいな、そんなに気に入らなかった?」
「そんなわけないじゃん、バカ」
「じゃあ、返事を聞かせて貰えますか、お姫様」
また彼はいつものノリで私に聞く。
その内容は全然軽くないけれど。
声ちょっと震えてるの分かってるんだぞこの野郎。
「一回しか言わないから、耳かっぽじって聞けよ?
私もあなたが大好きです、愛しています」
「で、返事は?」
「今ので察せよバカぁ!」
ハロウィンは過ぎたからハッピーハロウィンとは言わないけど。
私達にとって、ハロウィンが大切な日になったよ。
柄にもなくこんなのを書いてしまったなぁ……
後悔はしてない、してる点はハロウィンに間に合わなかったこと