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プロローグ「勇者の子供に大魔王が憑依(つい)ちゃってました」

「まーまー、えほんよんでー」

アベルは虚弱体質な五歳の子供で勇者が魔王を倒す絵本が大好きです。

「アベルちゃん 、もう一回だけですよ、読んだらすぐに寝んこしましょうね」



昔、世界を1人で滅ぼせる力を持つ大魔王がいました。

魔王は人間を沢山殺しました。

魔王討伐に向かった騎士団は返り討ちに会い、町や村が滅ぼされました。

人々は魔王が来ないようにお祈りするしかありませんでした。

人々が生きる希望を失いかけた時、勇者を名乗る剣聖が現れました。

その力は魔王を遥かに凌駕し、人知を超える技で魔王を追い詰めました。

戦いは数日に渡り、ついに勇者の剣が魔王の心臓を貫き、魔王を倒しました。

その後、人々は平和に暮らしました。



「・・・・・」

「可愛い寝顔」

そういえば、お風呂に入れるの忘れてた。

起こすの可哀想だからそのまま寝かせよう。

「おやすみアベルちゃん」



朝日が差し込み目が醒める。朝食の準備が出来てアベルを起こしに部屋に入る

「キャーーーーーーーーーーーーーーーー」

「キャッキャッキャッ」


「ガッシャーン パラパラパラパラ………」

大声で遊んで貰ってると思ったアベルが反応して

衝撃波を起こしながら声を出し、窓ガラスが全て割れる。


「ア、アベルちゃん?」

目の前には身長も伸び体格も大きい青年になったアベルがいました。

アベルを見て戸惑い、この子は間違いなく私の息子と自分に言い聞かせます。


「まーまー、おなかすいたー」

「この子はアベルちゃん。間違いなくアベルちゃん。ただ大きくなっただけ。」

「まーまー、まーまー」

「ちょっと人より成長が早いだけ。」

「まーまーー、グスッ、グスッ」

「相談しようにも変に思われて村八分されたらどうしよう」

「ふぇぇぇん、ふぇぇぇん」

アベルの周囲に強力な魔素が集まり魔法陣が描かれる

「まずい、プロティクション」

「ぎゃぁぁぁあ、びぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」

大地が振動しプロティクションにヒビが入り壊れ暴風が吹き荒れる

「よしよし、いい子いい子。 凄い魔力ね・・・


その後、アベルと食事して、

なるべくアベルを怒らせないように大好きな絵本を読み聞かせ

今日は疲れたのでアベルの隣で就寝しました。



次の日の朝、異様な妖気で目が醒める。

目の前には筋肉隆々のアベルが腕を組み仁王立ちで立ち構えている。

「勇者よ、久し振りだな」

「えっ」

急にアベルが流暢な言葉を発したのに驚き、何が何だか分からないで呆然としている。

「ははは、この姿だと分からないか。 心臓を突き刺された時は死ぬかと思ったぞ。」

「ま、まさか魔王!」

「そうだ、本来なら2日で全回復出来るのだが・・・。まさかこんなに時間が掛かるとわ・・・

(2日前って何かあったっけ?思い出せそうで思い出せない)


「勇者よ武器を取れ、無抵抗な奴を倒してもつまらん。」

勇者は聖剣を手に取りアベルに向けるが手、足、唇が震えて涙も溢れてくる

「ア・・アベルを倒したら元に戻るの?」

「ん?勿論この体は死ぬだろ。我は別の体を探すが。」

「うそでしょ・・」

「さあ来い勇者よ、ここでは戦い難いな。 ・・・ゲート」

2人は誰もいない荒野に瞬時に移動する。


「どうした?勇者、来ないならこちらからいくぞ」

「うそよ・・うそ・・ 」

躱す動作すらしないで魔王の拳の直撃を受けて数十メートル飛ばされる

「何故反撃も躱すこともしない?」

「アベル・・私のアベル・・」

「おい!話し聞いてんのか?ほら剣だ、本当につまんねーな」

聖剣を勇者の近くに投げる、勇者は聖剣を手に取り

「我のアベルを返してぇぇぇぇ!!!!!」

魔王が全く反応出来ない速度で聖剣を心臓に目掛けて突き刺そうとする

「何故だ?何故刺さない?」

「アベルちゃんを刺すなんか絶対に出来っこないよ……」

大泣きしてその場に座り込む勇者

「返してよ・・返して・・かえして・・・」


「興が醒めた。・・ ゲート」

元の場所に瞬時に移動して、座り込んでる勇者を見ると、返して返してと呟いている。

「はぁ・・・人間ってこんなにも弱く脆いのか、

弱い勇者に用は無い。この体じゃなくなったら本気で相手してくれよ」

「この体じゃなく・・このからだ・・うわぁぁん、アベル・・・アベル・・・」



「はぁ・・・倒す価値も無い。

ん?我の体少し臭うな。浴場はと・・大きいな、風呂に入りながらこれからのことを考えるか。

あ〜いい湯だ、全身の疲れが和らいでくぅ〜♩


(何だこれ?脳が溶ろけるような感じ

アポクリン線とエクレン線が溶ろけてるぅぅ

皮下組織と皮下組織深くの細胞が野球してるぅぅ

皮下組織がホームラン!!皮下組織深くの得点ボードに命中!!!

皮下組織は耐える、堪える

9回表、4番バッター魔王

ピッチャー投げました

「カキーーーーーーーーーーン!!!!」

魔王の場外ホームラン!!! 場外の筋上皮細胞を突き破り分泌コイルまで届いた!!

分泌コイルがとろけるぅぅぅぅぅぅぅ・・・・)


魔王は浴槽から黒いもやと一緒に上がって幸せそうに眠りについた。




「まーまー、ごはん」

「えっ、アベルちゃんが元に戻ってる・・もどってる・・」

号泣しながらアベルを力強く優しく抱きしめた

「まーまー」

「なぁに?」



「アベルはおふろすきー、ままもすきー」


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