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天色のなみだ  作者: 夏目はるの
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第6話

「・・ん?」


夏休みまであと少しとなった休日。

近所のスーパーに1人買い物に来ていた私。


特売品を買うことができ、

満足してスーパーを後にしたのだが。


スーパーの入り口付近で目に付いたのは、

まだ5歳くらいの小さな男の子。

その男の子は瞳を潤ませながら辺りをキョロキョロと見まわしていて。


・・もしかして。


「・・どうしたの?」


私がかがんで声をかければ、

驚いたのかビクッと肩を震わせた男の子。


「大丈夫?誰と一緒に来たの?」


私の事をじーっと見つめる瞳はとても大きくて。

まつ毛も長い、女の子みたいだな。


なんて思っていたら、その瞳から一気に涙が溢れ出す。


「ままっ・・どこーっ・・!」

「わっ!よしよし、泣かないで!」


突然泣き出した男の子に慌てふためいてしまう私。

どうやら迷子のようだ。


泣き出した男の子を必死になだめようとするも、

中々泣き止まなくて。


なんだか私も泣きそう、どうしよう。


何か男の子を喜ばせてあげられるものはないかとカバンを漁れば、

指先に冷たさを感じて。


「・・あ!ねえ、アイス好き?」

「・・・っ・・すき・・」

「じゃあお姉さんと一緒にアイス食べよっか!」


スーパーの袋から先ほど買った棒付きのアイスを取り出せば、

男の子は一旦泣くのをやめ、潤んだ瞳で私を見上げた。


・・ちなみにこれは鈴香さんに頼まれたアイス。

まあ非常事態だし。許してね鈴香さん。




「・・・」


スーパーのすぐ目の前にある公園のベンチに並んで座って、

2人でアイスを食べる。


「・・おいしい?」

「うん、おいしい。」


溶け始めてしまったアイスにかじりつく男の子は、

涙は止まっており、さきほどより表情も明るくて。


「お買い物、誰と一緒に来たの?」

「・・ぼくひとり。」

「ひとり!?」


私の声に男の子が驚いて肩をすくませる。

慌てて謝れば男の子は少し俯いて。


「ままがね、ちいちゃんのミルクが無くなっちゃったって言ってて。

ぼくお兄ちゃんだから、1人で買ってきてあげようと思ったんだ。」


男の子によれば、忙しそうなお母さんの代わりに妹用のミルクを買ってきてあげよう、と何も言わず家を出てきたらしい。


しかし持ってきた自分のお金では当然足りず、

帰ろうと思ったが道が分からなくなってしまい。


「いつもお買い物はここに来るの?」

「うん。いつもおうちからままと歩いてくるんだよ。」


・・なるほど。


つまり家からここまで遠いわけではなく、

このくらいの年齢の子が1人で来れる距離だという事だ。


黙って出てきたのなら迎えに来てくれる可能性は低いし、

小さい妹がいるというのだから、母親も探すのが大変だろう。

うーん、どうしたものか。


男の子の声が聞こえなくなった事に気づいて横を向けば、

彼はまた瞳に涙をためていて。


「・・まま・・・」


何故だろう。

その姿を見ていたら、すごく胸が苦しくなって。


私もこんな風に、

母親を思って涙を流したことがあった気がする。


・・迷子になった事がある記憶はないんだけどなあ。

本当に小さい頃にあったのかな。


「よし!」


そう声に出してから、

男の子の手を取って立ち上がる。


「お姉ちゃんと一緒にままの所に帰ろう!」

「・・どうやって?」

「一緒に道探してみようよ!どんな建物があったかとか、覚えてる?」

「・・うん、ちょっとだけ。」

「じゃあそこから見つけに行こう!」


不安そうに私を見あげる彼の頬に手を当てて、

目線と同じ高さにかがんだ。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんが一緒に探してあげるから。」

「・・・ほんと?」

「本当。絶対大丈夫だから。ほら、行こう!」

「・・うん!」


私の言葉にやっと笑顔を見せた男の子。


その事に安心しつつ、

彼の言葉を頼りに家までの帰り道を探し始めたのだった。

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