第54話
後日行われたお葬式に、抜け殻のまま参加した。
葬儀にはたくさんの人が参加し、
そして皆、泣いていた。
彼女は愛されていたのだ。
この場面を見れば容易にわかる。
全員が悲しそうに顔を歪め、そして涙をこぼしている。
葬儀が終わってもなかなかその場から動けない俺に、後ろから声がかかる。
「…要くん。」
そこに立っていた千里の目は真っ赤だった。
いつもの元気な姿からは想像できないほど、やつれていて。
彼女は、私のせいだと泣いた。
「奈月が何か抱えてるって、なんとなく分かってたんだ。」
そう言ってボロボロと大粒の涙をこぼす。
「でも話してくれるまで待とうって。それまでは気づかないフリしてようって。奈月は、こんなに苦しんでたのに…っ…」
彼女は最後まで言葉を紡ぐ事ができずに、そのままその場に座り込んだ。
なにも言葉をかける事が出来なくて、座り込む彼女の背中をさする。
…千里はなにも悪くない。
奈月は千里のことを本当に信頼していた。
千里と出会ったから奈月は少し変わったのだ。笑顔も増えた。
彼女に出会っていなかったら、奈月のあんなに楽しそうな笑顔は見れなかったかもしれない。
家の事も、奈月は周りに知られるのをとても嫌がっていた。
だから、千里は悪くない。
千里のせいなはずがない。
…でも、でも俺は ?
奈月の家の事も知っていた、
小さ頃からずっと一緒にいた、
それなのに、結局奈月のために何もしてやれなかった。
もっと出来る事があったんじゃないか、
奈月が嫌がっても大人の力を借りるべきだったんじゃないか、
俺が側にいる事で奈月の力になれるなんてただの思い上がりだったんじゃないか、
俺のせいで、奈月は、俺の、せいで。
そう考え始めると他の事は何も頭に入ってこない。
すすり泣く千里の背中をさすりながら、しばらくその場に留まり続けた。
奈月がいない。
その事実は、あまりにも重すぎた。




