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天色のなみだ  作者: 夏目はるの
53/70

第53話

海には誰もいなかった。


必至に奈月の名前を呼んだけど、返事は聞こえない。


叫んで、

走り回って、

そして、見つけてしまった。


誰もいなかった。

やはりそこには誰もいなかった。


けれど、浜辺に揃えて置かれていたのは奈月のサンダルで。

それが全てを物語っていた。


力が抜けて砂浜に座り込む。


頭がガンガンと痛んで、そして今までの全てが頭の中でぐるぐると回り続ける。


なんで、どうして、俺が最初の電話に出ていたら?いや、奈月はいつから決めていた?俺はなんで気づけなかったんだ、なんで、俺は何をしていたんだ、結局、何もできなかった、彼女のために何も、ああ。

__俺のせいだ。


溢れた涙は止まらない。

すすり泣きはやがて嗚咽の混じる号泣に変わる。


滴る涙が砂の色を変えて、

波音は俺の嗚咽をかき消した。



春の海は冷たくて、残酷で。

でもとても、美しかった。





その日の夕方、海の中から女子高生の遺体が見つかった。

検査の結果、それは奈月で間違いない、そう伝えられた。

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