第5話
夏休みを前にした日々は過ぎるのがとても早く感じた。
千里の行動力はもう何もつっこめないほどで、
発案から一週間後には更に二人のメンバーを確保しており。
「奈月ちゃんーー!!」
「・・・ねえ、痛い。」
先生に呼び出された千里を教室で待つ私の背中に、
誰かが勢いよくつっこむ。
・・・誰なのか、予想はついている。
「ねー、テンション低いよ!もっと上げてこ!ねえねえ!!」
「分かった分かった、わかったからちょっと黙りな??」
そう言ってデコピンをすれば、へへっ、と幼く笑う彼女、由香ちゃん。
クラスは違うものの委員会を通じて知り合った由香ちゃんとは、
千里を含め3人で出掛けることもあるくらい仲が良い。
「相変わらずクールですな〜。」
「由香ちゃんはもっと落ち着いてください?」
「わたしは元気だけが私の取り柄なのさー!
あ、奈月ちゃんもう水着かった?」
「元気がすぎるよ・・。うん、買ったよ。」
そんな彼女も千里が集めた海計画のメンバーである。
「やっぱり!?私まだ買えてないんだよねえ・・・。」
「・・・向こうの好み、聞いてあげようか?」
「っちょ!うるさいよ!!」
そうからかえば真っ赤になってバシバシ、と私の腕を叩く。
由香ちゃんには付き合っている人がいて、
それがもう一人の旅行メンバー、横山くん。
横山くんは要たちとクラスが同じなため、要たちとも仲が良いらしい。
「由香ちゃん顔真っ赤。」
「うるさいよ!!奈月ちゃんも要くんの好み聞かなくてよかったの?」
「だーかーら!そういうんじゃないから!!」
「またー、照れちゃって。」
「照れてないから」と私より頭一つ分小さい由香ちゃんの頭をぐりぐりと押す。
「ちょ!これ以上私を縮めないで!!」
女子の中でも小柄な由香ちゃんはそれがコンプレックスらしいが、私からしたらとても可愛いと思う。
「あ、ちび由香。」
「ちびって言うな!!」
「おかえり。なんの用事だったの?」
「課題出さなすぎだって。進級できねえぞって怒られちゃった」
てへ、っとピースをする千里。
いや笑えないから。
そんな千里に由香ちゃんはあっかんべー、とおどけて舌を出した。
「水着、いつ買いにいくの?」
「どうしようかなあ。」
「なになに?由香まだ水着買えてないの?」
「そうなの。どういうの選べばいいか分かんなくて。」
由香ちゃんの言葉に千里が腕を組む。
「うーん・・横山くんの好み、聞きださないとねえ・・」
「2人して同じようなこと言わないでよ!そこは別に関係ないの!」
「またまたあ~」
否定する由香ちゃんの顔はまた真っ赤になっていて。
本当に可愛い。女の子らしいとは由香ちゃんのような子の事を言うんだろう。
その後もしばらく由香ちゃんをからかい続けた千里。
由香ちゃんの水着は3人で選びに行くことになり、
ついでに甘い物でも食べよう、なんて話が出て楽しみなお出かけが1つ増えた。
「海、楽しみだね!」
そう満面の笑みで言う由香ちゃんに、私も千里も笑って頷く。
実は、結構楽しみにしている自分がいる。




