表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天色のなみだ  作者: 夏目はるの
49/70

第49話

「皆は可哀想だって、そう言うかもしれない。」


家庭内暴力。

誰にも助けを求められずに自殺。

なんて可哀想な高校生。


ニュースではそう報道されていた。

きっと多くの人が、私の事を可哀想だと嘆いているのだろう。


…でも。


「…私はそうは思わない。」


そう言ってから要の頬に手を添えて、

ゆっくりと目を合わせる。


…彼は泣いていた。


ずっと一緒にいたけど、

要の涙を見るのは初めてだった。



「大切な人に出会えて、私は幸せだった。」


こらえきれずに涙が溢れてきて、視界がぼやける。


「…奈月。」


震える声で私の名前を呼んで、

そっと私の頬の涙を拭った。


そして、一言、呟くようにこぼす。




「…ずっと好きだよ、これからも。」




__ ああ、私はやっぱり幸せ者だ。



その一言だけで、私の全てが報われた気がした。


返事をする代わりに要の頬にそっと口づけをする。


目を見開く要の涙を拭ってから、

ネックレスを外して要の首につけた。


「…これがあったから全然寂しくなかったよ。」


そう言って精一杯笑ってみせる。

笑った拍子に更に涙が溢れてきて、それ以上何も話せなくなってしまった。


要の口からは嗚咽がもれる。


そんな彼の涙をもう一度拭おうとして、

手が真っ直ぐ伸ばせない事に気づいた。


…もう時間なのかなあ。


世界が少しずつ揺らいでいく。

消えるんだろうな、そう気づいたけれど

大好きな人と一緒なら何も怖く無い。



崩れて行く世界の中で、私達は最後まで一緒にいた。


__ 春の海は今まで見たことがないくらい、

美しくて、そして、儚かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ