第49話
「皆は可哀想だって、そう言うかもしれない。」
家庭内暴力。
誰にも助けを求められずに自殺。
なんて可哀想な高校生。
ニュースではそう報道されていた。
きっと多くの人が、私の事を可哀想だと嘆いているのだろう。
…でも。
「…私はそうは思わない。」
そう言ってから要の頬に手を添えて、
ゆっくりと目を合わせる。
…彼は泣いていた。
ずっと一緒にいたけど、
要の涙を見るのは初めてだった。
「大切な人に出会えて、私は幸せだった。」
こらえきれずに涙が溢れてきて、視界がぼやける。
「…奈月。」
震える声で私の名前を呼んで、
そっと私の頬の涙を拭った。
そして、一言、呟くようにこぼす。
「…ずっと好きだよ、これからも。」
__ ああ、私はやっぱり幸せ者だ。
その一言だけで、私の全てが報われた気がした。
返事をする代わりに要の頬にそっと口づけをする。
目を見開く要の涙を拭ってから、
ネックレスを外して要の首につけた。
「…これがあったから全然寂しくなかったよ。」
そう言って精一杯笑ってみせる。
笑った拍子に更に涙が溢れてきて、それ以上何も話せなくなってしまった。
要の口からは嗚咽がもれる。
そんな彼の涙をもう一度拭おうとして、
手が真っ直ぐ伸ばせない事に気づいた。
…もう時間なのかなあ。
世界が少しずつ揺らいでいく。
消えるんだろうな、そう気づいたけれど
大好きな人と一緒なら何も怖く無い。
崩れて行く世界の中で、私達は最後まで一緒にいた。
__ 春の海は今まで見たことがないくらい、
美しくて、そして、儚かった。




