表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天色のなみだ  作者: 夏目はるの
47/70

第47話

春が来た。


もう何年続けたか分からないほど【いつも通り】私は朝5時に起きて、そして、皆の朝ごはんを作る。


これは、当たり前で普通の日常だ。


3人分のご飯を作り終えた私は。

なんとなく、テレビをつけた。


流れてきたのは朝のニュース番組で、

今人気のアナウンサーが神妙な顔でニュースを告げる。



【自殺者急増中】


画面に大きく出ているのはその言葉。



カラフルに彩られた画面には、

3つの事件が映し出されていた。




【上司のパワハラが若い命を奪う!】


一つ目、テレビ一面を使って映し出されたテロップ。

ふと私は鈴香さんが見ていたニュースを思い出した。

…そういえば、画面にこんな事が書いてあったっけ。


「大手企業で発覚したパワハラ問題。奪われたのは新入社員の女性の命でした。事件が発覚したのは先週、自宅で〜…」


どこかで聞いたことあるような文章をアナウンサーは淡々と読み上げる。


「被害者は…」


パッ、と画面が変わって、

映し出されたのは自ら命を絶った女性の写真。



_ その人は、とても綺麗だった。


彼女が笑顔で写っている写真が使われていて、その笑顔はとても眩しい。


いつも早起きしても台所で寝ちゃうし、

彼氏の話するとすぐ怒るし、

拓海さんとは喧嘩してばっかりだし。


…でも。


何度彼女のその笑顔に励まされた事だろう。



「〜…今井鈴香さんです。」


不思議と怖さはなかった。

バラバラになったパズルのピースがはまっていく、そんな感覚で。





【学校いじめ隠蔽。新任教師耐えられず !】



また画面が移り変わって、

2つ目のテロップが表示される。


映し出された中学校の写真は、何度も見たことがあった。


「冬頃にいじめを苦に自殺した中学生。学校側は担任がいじめの事実を認識していなかったと会見していましたが、その担任が自ら命を絶ってしまった事で新たな事実が〜…」


映し出された写真。


その写真にうつる男の人は、目を細めて眩しそうに笑っていた。


…教師になった理由を語っていた時も

こんな表情をしていたなあ、なんて思い出した。


「平野拓海さん。」


口は悪いし、

いつも人をからかってばっかだし、

でも、いつも誰よりも皆の事を考えていた。


ひときしり私をからかった後に、

彼はいつも優しく笑う。


そんな笑顔が大好きだった。





3つ目のテロップが映る。




【女子高生、家庭内暴力の実情は !】



「先日海で発見された女子高生の遺体。多くの痣があった事から親からDVを受けていた可能性を疑われていました〜…」


そう伝えるアナウンサーの顔があまりにも硬いから、思わず笑ってしまいそうになった。


ああ、そういう事だったのか。


これから何が画面に映るのか、だいたい予想はつく。

…不思議と、怖くはなかった。


画面が移り変わって、

正面に映し出されたのは。


「水原奈月さん。」



紛れも無い、私の顔だった。


パズルの最後の一欠片が、ぱちん、とはまる。


それを感じた途端急に襲ってきた眠気。

その眠気に任せて目を閉じれば、また夢を見た。


風邪をひいたときに毎日見ていた、

篠山荘に初めて来た時の夢。


私を見て驚いた顔をした要は、不意に笑って。


__ああ、そうだ。


やっと思い出せた。




『…奈月、久しぶり。』


泣きそうな笑顔で、要は、そう呟いたんだっけなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ