表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天色のなみだ  作者: 夏目はるの
45/70

第45話

「~~~~・・」


壇上でマイクを使って話すのは音楽の先生。


体育館の中はとても寒くて、そのうえ制服でひざ掛けも禁止。

そのためほとんどの生徒が疲れ切った顔をしていて。


卒業式が迫った3月上旬。

今日は卒業式での全校合唱の練習が行われていた。


かじかむ手に息を吹きかけながら、

もうすぐ卒業を迎える3年生に目を向ける。


・・卒業、か。


大学進学なのか、

就職なのか、

それともそれ以外の道なのか。

ほとんどの先輩がもう既に決めているのだろう。


・・・私は。


私は、卒業できるのかな。


急に頭の中に浮かんできた疑問に、

自分でも驚いて。


卒業できるのかな、って。

なんでそんなことが心配になっているんだろう。


・・・変なの。




「旅行行こうよ!本格的に受験生になる前に!」

「あー、いいね!」


1時間ほど寒さに耐え教室に戻ってきた私と千里は、

教室で旅行会社のパンフレットを広げていた。


「美味しいもの食べれるところがいいよね。」


そう言って笑う千里に頷いて、

曇っている窓の外を見つめる。


「…つき!奈月!!」


「…ごめん、ぼーっとしてた。」


最近あんた気抜けすぎじゃない?

そう言って千里は私の頭を笑って小突く。


「旅行って結構お金かかるよね。」

「ねー!泊まりだとかかっちゃうよね。」

「奈月、両親から仕送りとか来てるの?」


なんとなく、本当に千里がなんとなくした質問。

なぜか私は咄嗟に答える事が出来なくて。


…仕送り。


「もらっ…てるのかな・・?」

「なにそれ。」


私の答えに千里は呆れたように笑うけど、

私の頭は働かない。


あれ、私、どうやって生活してたんだ?


両親から雨野さんに直接お金が渡ってたんだろうか。


胸のあたりがぞわぞわする。


「奈月の両親に会ってみたいなあ。写真とかないの?」


…写真。

そういえば撮ったことないな。


そう千里に答えれば、そっか、と残念そうに口を尖らせる。


「じゃあじゃあ!奈月に似てる?」


どうだろう、と少し思考を巡らせる。


途端に胸のざわざわが大きくなって、

得体の知れない気持ち悪さが身体中を蝕み始めた。


胸が音を立ててなりはじめる。

息が、苦しい。


「奈月どっち似なんだろう、気になるー!」


そんな私の様子に気づかず千里は話し続ける。


しかし気持ち悪さは広がるばかり。

呼吸が難しくなってきて、

徐々に意識が遠のいていくのが分かる。


「…奈月!?」


私の異変に気付いたのだろう。

視界の隅に焦った千里の顔が映る。


「奈月!!大丈夫!?」


千里の叫び声に周りから人が集まってくる、

誰かが先生を呼ぶ声も聞こえる、

しかし私の意識はそれ以上持たなかった。



…落ちていく意識の中で。


浮かんで来たのは暗い部屋に座り込む私。


そんな私が見つめる先には、怒鳴り声をあげて暴れる男の人。


不意に動きを止めた男の人は、私の方を向いて。


『お前はもういらない。』


そう言って狂ったように笑った気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ