第33話
人混みに揉まれつつなんとかプレゼントを買い終えれば、
時刻は既に午後5時過ぎ。
「この後どうする?」
私たちはショッピングモールを出て、クリスマスに浮かれる街中を歩いていた。
横を歩く要にそう問えば彼は少し考えてから、
ポンッと手を叩く。
「・・・海。」
「へ?」
「海行こう!」
満面の笑みを浮かべる要とは対照的に、
私は大分間抜けな顔をしてしまう。
だって、海って。
この時間から?この時期に?
私のそんな訝しげな表情に気付いているのかいないのか、
要は颯爽と駅に向かって歩き出す。
「ちょ!ほんとにいくの?」
「もちろん!電車で行けばそんなに時間もかからないし。」
「そういう問題!?」
それに、と要は私の方を向いていたずらっ子のように笑う。
「行ってみたいじゃん、夜の海!」
「それは・・・ちょっと分かる。」
「だろ?絶対綺麗だって!」
・・・夜の海になんて行ったことはない。
だから、行ってみたい気持ちがあるのは確かで。
けれど少しあったのは不安。
夏に皆で行った時。
海を見た瞬間に感じた、
あの気持ち悪さを思い出してしまったのだ。
「ほら!」
「わっ!」
なかなか行く事を決めきれない私の腕を、
要が不意に引っ張る。
思わず転びそうになって間抜けな声を上げた私を見て、
要はお腹を抱えて笑いはじめた。
・・・まったくもう。
隣で楽しそうに笑っている要を見たら、
この人と一緒なら大丈夫かな、なんて思って、
さっきまでの不安はどこかへと消えてしまった。
2人で駅までの道のりを歩く。
辺りは既に暗く、周りのお店の前に出ている小さなイルミネーションが明かりを灯していた。
吹き付ける風は冷たくて、
手先の感覚が麻痺する。
「…鼻真っ赤。」
「だって寒いし。」
「トナカイみたい。」
「ああそうですか。」
「でも体型はどっちかっていうとサンタさんだ…っ…!お前割と本気で叩いただろ!!」
「うるさいばーか。」
要の背中を思い切り叩けば、
いてー!と大袈裟に肩をさする。
…正直かなりいい音がして自分でも驚いた。ごめん要。ただその言葉は一生忘れん。




