第3話
「奈月、これ分かんない。」
「教科書109ページを読んで下さい」
「ここは?」
「・・・92ページ!」
「これ」
「130ページ!!」
「なんだよ冷たいな〜」と口を尖らせながら教科書を開く要。
夕食の後片付け担当は基本鈴香さんと拓海さんのため、
部屋に引き上げた私達は2人で課題タイム。
運動は得意な要だが、
勉強はあまり得意ではなくて。
「この問題意味わかんないんだけど。」
「・・それ中学校の時習った公式だからね。」
・・いや、はっきり言えばかなりの馬鹿。
何でもかんでも質問してくる要をあしらって自分の勉強に集中していれば、
飽きたのか要は部屋を物色し始めた。
「要、勉強して」
「飽きた」
「・・・その課題もう提出期限過ぎてるよね。」
「・・・」
「また居残りで課題増やされてももう見てあげないからね」
そういって要を見れば、ふくれっ面と目が合う。
どちらも目を逸らさずにしばし見つめ合ったあと、ため息をついたのは、わたし。
「・・・後で見てあげるから」
その言葉にさっきとは一転して満面の笑みを見せて机へと戻る。
犬かよお前。
「出来るとこだけやってなよ。」
「はーい。」
「あと今度クレープ奢ってね」
「500円以内な。」
「だめ、640円のいちごとみかんとカスタードクリームが乗ってるやつ」
「・・・はいはい。」
要にクレープの約束を取り付けて満足した私は再び課題に取りかかった。
・・・要を付き合ってる、と今朝のように勘違いされる事は多く、
実際に全然知らない後輩の女の子に聞かれたこともある。
けれど私と要はそんな関係ではなく。
かといって、友達、という言葉もなんかしっくりこない。
「なー。」
「なに?」
「全然分からない。」
「・・・ばか。」
本当に困った顔をして私の方を見るから、
思わず吹き出してしまう。
「授業中ちゃんと聞いてる?」
「・・・・聞いてる。」
「バレバレの嘘つくな。」
だってあいつの授業めちゃくちゃ眠いんだもん、
と先生のせいにして開き直った要。
「朝あれだけゆっくり寝てるんだからさあ。」
「それでも眠いもんは眠い。」
異常にキリッとした顔と声でそう言うから、
また笑ってしまう。
・・・そうだな、私達はもちろん恋人ではないし、ただの友達でもない。
もはや家族のような存在なのだ。




