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天色のなみだ  作者: 夏目はるの
25/70

第25話

「バイトしてるの!?」


他のお客さんも帰っていき、

片付けが行われている店内。


テーブルをはさんで向かい合う横山くんの口から出た言葉に、

驚いてまた大声を出してしまった。


演奏の後。

案内してくれた女性に横山くんと知り合いなの?と聞かれ頷けば、

「彼はもうこれで上がりだからしばらくお店の中で待ってなよ。」とオレンジジュースを出してくれた。


ちなみに拓海さんはカウンター席でお店の人らしき男性と

談笑しながらお酒を飲んでいて。


私の言葉にそうなんだ、と横山くんは少し照れたように笑う。



横山くんの話をまとめると。


由香ちゃんの誕生日がもうすぐらしく(別に私も忘れてなかったもん)、

去年はあまり良いものをあげられなかったため、

今年は何か素敵なものをプレゼントしたいとアルバイトを探し始めたらしい。


そんな時に声をかけてくれたのが、

美沙さん、という女性で。


「僕の母がピアノの先生で、その教え子なんだ。

今はここのジャズバーで働いててさ。」


テキパキと機材の片づけをする

ポニーテールの女性に目を向けて、横山くんはそういう。


そう、私達を案内してくれた彼女こそが美沙さん。


・・・そして。


「由香ちゃんの友達に見られたのは、美沙さんと一緒にいる所だったんだね。」


私の言葉に横山くんは苦い顔で頷く。



『身長が高くて、

茶髪の長髪で、

由香とは真逆のタイプの人』


由香ちゃんの言葉を思い出す。

・・うん、絶対に美沙さんの事だ。


普段は演奏者として働いているそうだが、

その日はお店の備品が多く切れてしまい、

買い物の手伝いをしていたのだそう。


「バイトしてるのはバレたくないし、でも突然だったから何も浮かんでこなくて、上手く誤魔化せなくて・・・」


嘘がつけない素直な性格が裏目に出てしまったのだろう。

そのまま由香ちゃんと喧嘩になってしまったのだという。


「・・でもそれなら、要達になら言ってよかったんじゃ?」


ふいに浮かんできた疑問に、

横山くんは少し恥ずかしそうに俯く。


「・・普段お世話になってるから。せっかくなら何かあげようと思って。」

「・・・へ?」



何かあげる?

誰に?・・って、要?


・・あ。


「そっか・・!誕生日!!」


私の言葉に横山くんは小さく頷く。


この前鈴香さんに聞いたばっかりだったのにまた忘れていた。

私はどれほど馬鹿なのだろう、自分が怖い。


「・・そっか。そういう事だったのか。」


疑問に思っていたことがすべてわかって、

とりあえずは安心する。


由香ちゃんの誕生日が来れば誤解がとけるという事だし、

横山くんも危ない事に手を出してしまった(失礼)わけではなかったし。


「・・横山くん?」


横山くんが急に話さなくなったことに気づいて彼の方を見れば、

彼は少し俯きがちに、ゆっくりと口を開く。


「多分、それだけじゃないんだ。」


「・・どういうこと?」

「・・・僕、ピアノ弾いてる事を知られるのが恥ずかしいって思ってるんだと思う。」


自分の事なのに変な言い方だね、と横山くんは笑う。


「ほら、やっぱ男がピアノってなんかさ。もちろんたくさんいると思うけど、

僕みたいのはさ、似合わないっていうか・・」


そう言って横山くんは困ったように笑う。

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