第2話
「おはよ、奈月。」
「おはよう。」
がやがやと騒がしい教室の中。
友人の千里と挨拶を交わす。
「もー、今日も要くんと登校?ほんとラブラブだね~」
「だからそんなんじゃないって!」
住んでる場所が同じなため、登下校はいつも一緒。
ただ周りにはその事を話していないため大きな勘違いが生まれていて。
「またまたー。要くん、先週も1年生泣かせてたんだから。」
「知らないよ。ていうか千里はいつもどこから情報仕入れてくるの・・」
「私をナメてもらっちゃ困るよ。」
千里はそう言ってからウインクをしてみせる。全然できてないけど。
要はモテる。
顔立ちも整っているし、
なにより笑顔が素敵、らしい。
勉強はいまいちだが運動は得意で、
女子に騒がれているのをよく見かける。
「彼女が普通の女子だったらいじめにでもあってる所だけど。」
そこでとめて千里は私の方を見る。
「それが奈月じゃ誰も文句も言えないよね。」
「はー、何言ってんの?付き合ってもないってば!」
「頭もいいし運動もできるし・・・むかつく~」
「褒めるか文句言うかどっちかにしてもらっていい!?」
よしよし、まあ落ち着け。と千里に頭を撫でられる。
私は犬か。
千里とは仲が良くてとても良い友人なのだが、なんせ人の話を聞かない。
放課後、ブーッと振動を感じてスマホを見れば、
新着メールが一件。
差出人は、雨野さん。
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主語もなにもなく、書かれていたのはその3単語で。
雨野さんらしくて思わず吹き出してしまう。
「奈月ー。今日ドーナツ食べ行かない?」
「ごめん。雨野さんに買い物頼まれちゃって。」
「そっか、じゃまた今度ね!」
千里に手を振って帰り支度を始めれば、
「奈月。かーえろ。」
ドアからひょこっと顔を覗かせたのは要で。
「ちょっと待って。」
周りの視線を感じながらも、
要とともに教室を出た。
「今日要たち体育バスケだったでしょ。」
「そー。なんで?見てた?」
「クラスの女子が騒いでた。」
その言葉にへー、と声を漏らした要。
そして私の方を向いてにやにやと笑う。
「俺がシュート決めたところ見てた?」
「・・見てない。」
本当は見てたけど意地悪でそう答えれば、
ちぇー、と子供のように口を尖らせた。
私たちの高校は割と大きい方で、クラス数も多い。
要と私はクラスが違うため、
学校内で出くわすことはあまりなくて。
「そういえば、メール来てた?」
「誰から?」
「雨野さん。」
そう私が言うと要は思い出したようにふっ、と笑う。
「来てた。1人で爆笑しちゃったよ。」
そう言って私に雨野さんからのメールをみせてくるから、
私もまた笑ってしまった。
学校から数十分歩けばたどり着くここ、篠山荘。
住宅街のはずれにあり、
お世辞にも綺麗とは言えず
最初見たときは「ここに人が住めるのか」と不安に思った程である。
けれど、住んでみれば意外と快適で。
立て付けはかなり悪く虫も出るが、
皆との距離が近く全員で生活する感じが、私はとても好きである。
「ただいまー。」
帰宅は私たちが大体一番乗りで。
各自荷物を部屋に置いたらまずは夕食の準備。
「要。炊飯器スイッチ押してもらっていい?」
「ん。」
皆の洗濯物を分けていた要にスイッチを押してもらう。
・・・7時過ぎに鈴香さんが帰宅して、
8時頃に拓海さん。
そして雨野さんは篠山荘の裏で小さな珈琲店を営んでおり、
雨野さんの夕食はそっちに運ぶことになっている。
「なっちゃん料理上手になったわねー。」
夕食は出来るだけみんなで揃って食べる事になっているので、
拓海さんの帰宅を待ってから夕食。
スーパーで鶏肉が安く売っていたから、と選んだ唐揚げはかなり好評で。
「ほんとですか。」
褒められて自然と頬が緩む。
「あー、確かに。最初に比べてうまくなったよな。」
「・・・なんか拓海さんに褒められると気持ち悪いです。」
「お前後でしばく。」
おどけてそういえば恐ろしい返答が返ってきた、部屋の鍵しめとこ。
「俺もご飯炊くの上手くなったでしょ?」
「いやご飯炊くのに上手いも下手もないだろ」
「分かってないなー、拓海さんは。だから彼女出来ないんだよ」
「それ絶対関係ないだろ。お前も後でしばくからな。」
ケラケラと笑う要に拓海さんの蹴りが飛んでそこから始まるプロレスごっこ。
「ちょっとうるさいわよ。」と鈴香さんの注意が飛ぶ。
「要も拓海さんも!ご飯中にやめてください。」
「悪いのは要の方だろ。」
「うわー、そうやってすぐ人のせいにする。」
「ちょっと25歳。大人げないわよ。」
「そうだよね鈴香さん、もっと言ってやって。」
「要も調子に乗るな。」
ご飯中は基本的にうるさくて。
怒られた拓海さんと要はいじけつつも静かになる。
そんな2人の動作がそっくりで、
兄弟みたい、と思って吹き出せば
鈴香さんと目が合って、また笑ってしまった。




