第14話
「奈月、俺肉食べたい」
「却下。」
「なんだよ鶏肉でいいから!」
「そういう問題じゃないわ!!」
隣で駄々をこねる要に突っ込めば、
けちー、と口をとがらせる。
「いいじゃんたまにはいい肉食おうぜ」
「拓海の奢りならね。」
「いやお前教師の給料バカにすんな。…少ねえのなんの。」
「少ないのかよ。」
鈴香さんにつっこまれて開きなおって笑うのは拓海さん。
週末、久しぶりに全員の休みが合った私たちは、
皆で少し遠くのショッピングモールへ買い物に来ていた。
まずは食材を買おうとスーパーに来たのだが、
男2人(主に要)が騒いで中々買い物は進まず。
「ちょっと拓海!荷物くらいもってよ!」
「もう両手塞がってるわ!ていうか買いすぎじゃねえの!?」
「日曜日が一番安いのよ!溜め買いするにはお得なの!」
そういってしかめっ面をする鈴香さん。
拓海さんはため息をついて。
「持たされる方の気持ちにもなってくれるといいんだけど。」
「え?なんか言った?」
「ナニモイッテマセン。」
鈴香さんの言葉に拓海さんが視線を逸らしながら答えた後、
もう一度深くため息をついて、
「そんなカリカリしてっから彼氏できねえんだよ〜」
「「あ。」」
そして、地雷を踏んだ。
思わず声を出してしまった私たち。
直後自らしまった、という表情をして私と要を見る。
拓海さんの言葉で動きを止めた鈴香さん。
「…は、はは。」
拓海さんが引きつった顔で笑う。
…やばい、これはやばい。拓海さん、やってしまったどころではない。
というのもつい最近付き合っていた彼氏に浮気をされて別れた鈴香さんに、
彼氏の話題はタブーなのだ。
「…。」
無言で要と顔を見合わせる。
…別れた当日の夜はひどかった。
これでもかというくらいお酒を飲んで暴れた鈴香さんを、皆で慰めたのだ。
ちなみに海での線香花火対決は私が2秒差で勝利したため、
自らころされに行くような真似をしなくてすんだ。本当によかった。
もともと鈴香さんにこういう類のからかいは禁句なのに、タイミングが悪過ぎる。
動きを止めたままの鈴香さん。
背を向けているためその表情は分からなくて。
「…す、すずか?」
拓海さんが恐る恐る声をかければ、鈴香さんがゆっくりと振り向く。
…それはそれは。
もう、満面の笑みで。
「…なっちゃん。」
「ふぁい!?」
急に名前を呼ばれてなんとも間抜けな返事をしてしまった。
「…2人でお洋服を見に行きましょう。」
「…は、はい」
「要くんはここで残りの買い物をお願いしてもいいかしら?」
「…もちろんです。」
「ありがとう。後でアイス奢るわね。」
拓海さんをもはやいないもののように扱った鈴香さんは、
要にそう行ってから私に向き直る。
「じゃあなっちゃん、行きましょうか。」
「…はい」
怖い、怖すぎる。こんな怖い笑顔は初めて見た。
拓海さんに目で訴えれば、
悪い、と口をパクパクさせて胸の前で手を合わせる。
後でお菓子でも買わせよう、と心に決めてから
鈴香さんと共に洋服売り場へと向かった。




