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天色のなみだ  作者: 夏目はるの
13/70

第13話

海へ行ったのが夏休みの前半。

その後特に遠出をすることはなく、ダラダラ過ごす日々が続いた。


海以外の思い出を挙げるなら、

篠山荘の庭で皆でスイカ割りと花火をした事だろうか。


「要ちゃんと目隠ししろよ」

「えー、いいじゃんゆるくても。」

「お前なあ、勝負に手え抜くなっての。」

「いい年した大人が本気になって・・って、いたたた!」


要の手拭いを拓海さんがキツく締め上げる。

それはそれはとてもいい笑顔、うーん、恐ろしい。


せっかくなら割った人に何か景品を与えようという事になり、

スイカを割った人には一週間夕飯の献立を決められる権利が与えられた。


挑む順番はジャンケンで決められ、

運の悪い私にしては珍しく1番になったのだが。


三半規管の弱い私は回った後歩くことすら出来ず既に敗北、無念。


2番目を勝ち取った要も割ることが出来ず。

・・顔の上半分にはしっかり手拭いの跡が残っていた。

拓海さんどれだけ強く締めたんだ。


俺は回転には強い、と豪語していた拓海さんも足元がふらふらで

スイカを割る事はできなかった。

鈴香さんも同様で。


「・・お前ら下手くそだな。」

「「・・うっ・・」」


結局スイカを割った勝者は、

順番的には最後だった雨野さん。


回転をもろともせず、

まるで周りが見えているかのような足取りでスイカを真っ二つに割ったのだった。


それから一週間は雨野さんのリクエストでの夕食。

…料理してて気づいたのだが、勝った所で私にメリットなかったよね。

だってご飯つくるの私だし。まあ気にしない。


そんなこんなで一ヶ月足らずの夏休みはすぐに終わりを迎えて。




「奈月おはよう。」

「おはよ。」


登校日。

夏休み前とは学校の雰囲気も少し違う。

…理由は3年生だ。


夏休みも終われば、3年生は部活も引退しもう受験へとまっしぐら。


まだ2年生である私たちにも進路希望調査なんかが配られて、

現実と向き合わねばならない。


まだ進路についてなにも決まっていない私だが、

周りには意外と将来のことを考えている人も多く、少し焦りを感じる。


「あー、また学校が始まってしまった・・」

「休み明けってほんとにだるいよね。」


私の言葉に千里が大きく頷く。


海でかなり日焼けをしてしまったという千里は、

休み前よりも若干黒くなっていて。


・・私自身も多少色が変わった気がする。

ちゃんと日焼け止め塗ったのになあ。



「…そういえば、今週懇談会あるよね。」

「え!うそ!いつ!?」


腕の色を気にしつつ、何気なく言った私の言葉に青ざめる千里。

どうやら前回のテストがよほど悪かったらしい。


「うわ〜、どうしよう、絶対怒鳴られる。」

「千里ママ怒ると怖いもんね。」


普段はニコニコしてて優しい千里のお母さんだが、

一度だけ、千里の弟に対して怒っているところを見たことがある。


…普段からは想像もつかない、衝撃の怖さだった。



「…奈月のとこ、誰がくるの?」

「うーん、誰だろう。」


現在共に海外出張中の私の両親。

そのため両親の知り合いであった雨野さんの伝手で、

篠山荘に住まわせてもらっているのだ。


…雨野さん、は忙しいかな。

あまり裏の珈琲店には行ったことがないが、雨野さんはいつも忙しそうなイメージがある。


でも拓海さんも休む暇なんてないだろうしなあ。


ふと去年は誰が来てくれたんだろう、と思い返すけど、

全くもって思い出せない。


…あれ、私こんなに記憶力悪かったっけ。


少し戸惑いながらも話は駅前のケーキ屋さんの話へと移り、

三者懇談の話はどこかへと消えてしまった。

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