第12話
「あー・・溶ける~・・」
死にそうな声でそう呟くのは鈴香さん。
声のする方を見れば彼女は仰向けで床に寝転んでいて。
ぐでーん、という効果音が聞こえてきそうだ。
「鈴香さん、汚れますよ。」
「なっちゃんも寝てみなよ。床冷たくて気持ちいいわよ。」
「そうかもしれないですけど。」
「あー!!もう私床と結婚する!」
「・・・・。」
「無視はやめようよ」
鈴香さんが何か言っている(失礼)が、
床に寝転んでいる鈴香さんの気持ちはよくわかる。
皆で海に行ってから既に数日が経過した今日。
暑さは日に日に増していて、暑さのピークを迎えつつある。
特に今日は暑い。とてつもなく暑い。
太陽はカンカン照りで風もあまり吹いていなくて。
もちろんここ篠山荘にクーラーが完備されているわけもなく。
夏場頼りになるのは各部屋1台の扇風機だけである。
「本当に暑いですねえ・・・」
私の言葉に鈴香さんが大きく頷く。
外からはセミの大合唱がそこら中から聞こえてきており、
それが更に体感温度を倍増させている気がする。
「なっちゃん、アイス。」
「・・・私はアイスじゃありません。」
「アーイース―たーべーたーい―!」
「何歳児なんですか。」
寝転んだまま駄々をこねる鈴香さんに棒アイスを一本投げる、と聞こえてきたのはうめき声。
どうやらキャッチし損ねたようだ、ごめん鈴香さん。
私も棒アイスを口に入れ、
寝転ぶ鈴香さんの横に腰を下ろす。
「・・・夏だねえ。」
アイスを食べて少し元気を取り戻したのか、
鈴香さんが起き上がって胡坐をかく。
「今日の夕飯何がいいですかねー・・」
「そうねえ・・・。冷やし中華なんてどう?」
「あ!いいですね。」
「よーし決まり!涼しくなったら買い出し行きましょ。」
「はーい。」
じゃあそれまではダラダラする時間、と鈴香さんはまた床へと寝転ぶ。
そして冷たい~、と笑いながら私の方を見上げる。
なっちゃん、と私の名を呼んでぽんぽんと床を叩くから、
私も真似をして隣へと倒れこんだ。
・・・これは。
「・・・私も床と結婚します。」
予想以上に冷たかった、気持ちいい。
私の言葉に鈴香さんが吹き出す。
少し目をつぶってみれば中々気持ちが良くて。
そんな私を見て鈴香さんの笑い声はさらに大きくなる。
「笑いすぎじゃないですか?」
「だって・・っ・・結婚するって・・・」
「鈴香さんが先に言ったんじゃないですか!」
「そうだけど・・っ・・ふふっ・・」
私が言い返すのを聞いて彼女はまた笑う。
なんだか私も面白くなってきてしまって、
しばらくの間2人で涙が出るほど笑い続けた。




