川辺の家より 2話
鳥の鳴き声で目が覚めた。
窓を開けると数羽の雀が飛び去った。
そういえばお祖母ちゃんがこの広い庭で菜園をやっていた。
トマトやきゅうり、なすもあったかな?。
今は雑草だらけだけど、わたしにもできるかな?。
縁側に布団を干す。
今夜からは布団で寝れる。
朝食として、お湯を沸かしインスタントコーヒーを飲み菓子パンを食べる。
モソモソと食べているとふと疑問が湧いた。
「そういえば、どこで買い物が出来るのだろう?。」
一人口に出しても誰も答えてくれるはずもなし。
小さい頃の記憶を探ってみると、妹と二人お祖父ちゃんのワゴン車で買い物に行ったことを思い出す。
いずれにしても歩きでは遭難しそうなので何とかしなければならない。
外に出てみるが当然ながらワゴン車は無い。
自転車も見当たらない。
「困ったぞ。」
わたしは道に出て左右を見る。
東の方に車で行った記憶がある。
しかし、ポツンポツンと廃屋と草っパラが曲がり角まで見えるだけだ。
ため息をついて振り返ると板の貼り付けられた入り口が見えた。
そうだ、ひょとしたら店の中に自転車がしまってあるかもしれない。
わたしは玄関に戻り店の裏側から置いてあったサンダルを履いて降りて照明のスイッチを入れた。
「おお、スクーターですか。」
カウンター席とテーブル席の間にアイボリー色のスクーターがあった。
キーが入ったままなので回してスターターボタンを押す。
一回でエンジンがかかった。
「凄いじゃないですかキミ。」
勝手に擬人化してシートを叩く。
しかし、燃料メーターが少ないのですぐに止める。
わたしは裏の倉庫から工具を持ちだすと入り口の板を剥がし始めた。
扉を壊すわけにはいかないので慎重に板を剥がし入り口の扉を開ける。
風が、奥の庭へと抜けていった。
わたしは今度はスクーターの後ろの荷台についている例の「オカモチ」を取り外す。
しっかりと付いていたのでなかなかに苦労した。
腕時計を見ると、とっくに正午を過ぎていた。
空のリュックを背負い、わたしは綺麗に拭いてピカピカしているスクーターに乗った。
「さて、では行きますか。」
ところどころアスファルトのめくれた道路をテッ、テッ、テッと軽快な音をたてて走りだす。
右手には山々が見え、道路の両側にはすっかり手入れがされていない街路樹が大きく育っていて、ところどころトンネルのようになっている。
「おや?」
右手に大きな傘、パラソルが見えてその前に「ガソリンあります。」とペンキで書かれた看板が置いてある。
良かったと一安心して、パラソルの傍で止まると奥に立つ平屋に向かって声をかけた。
「すみませーん!。」
すると直ぐにドアが開いて、つなぎの作業着を着た小さな女の子が走って出てきた。
「いらっしゃいませー!。」
二話 スクーター おわり