069:光珠をその手に①
ユニスは翡翠色の天空を駆け抜けた。
結晶化した蒼い地面を踏み散らし、空間を、飛んだ。
自分が風を切って飛ぶ音だけが聞こえる。
ユニスは、トン、と地面に降り立った。淡い黄金色の光が満ちる、確かな地だ。
――良い頃合いね。
さあ、カウントダウンの始まりだ。
ユニスは右手を前に伸ばした。
その手の上に、黄金色に輝く小さな球が出現した。
これこそ、まごうかたなき光珠、嘘偽りのない本物だ。
右手にラディウスを掲げ、ユニスは目を閉じた。代わりにシェインの目を開く。
白炎大佐の一行が来る。
もうすぐ肉眼でも見えるだろう。
「ここをまっすぐ行けば、このエネルギー反応の場所に着くはずだよ」
ミッシュが歩きながら仲間に解説している。
彼らは明るい光に満ちた空間に出た。
この空間の光の源は、黄金色の小さな珠。それは、地に下りた太陽とも見紛うまばゆさだ。その側にはユニスがいる。こともあろうに、珠を取ろうと手を伸ばした格好で。
「あ、あの娘、あれだッ! あれがラディウスだ!」
ミッシュが叫ぶ。
ラディウスを右手に握ったユニスは、ギョッと目を見開いて、声のしたほうへ振り向いた。
「きゃーっ!!!」
ユニスは、思いっきり悲鳴を上げた。でも、手にはしっかり珠を握りしめたままで、走り出す。
「待て、それをよこせっ!」
白炎大佐が追って来る。
「やだっ、来ないでーっ!」
ユニスは振り向きざま、ラディウスを白炎大佐に投げつけた。
「おっと!」
白炎大佐はすんでのところでラディウスをキャッチした。
追跡が止まった。
ユニスは空間の歪みに潜り込んだ。白炎大佐達の目には、ユニスが空間に掻き消えたように見えただろう。
ラディウスを手に入れた白炎大佐は、すぐに、手持ちの分析機で解析を始めた。
ユニスは、クスッと笑った。偽物だと疑われる心配なんかしていない。だって、アレもラディウスには違いない。なぜって、ユニスが遺跡に入って取ってきた本物なのだから。
「これがラディウスか!!」
追いついたミッシュとクリトが、白炎大佐の持つ金色の珠を覗き込む。光珠の放つ光は、ユニスが手にしている時から弱まってきていた。光度が落ちた今は、内に金の炎を秘めた水晶玉にそっくりだ。白炎大佐のガードグローブの上で、珠はいっそう小さく見える。
ミッシュがもう一度、センサーで念入りに確認をし始める。
「これだ、ものすごいエネルギーの源は。で、あの娘はどうした?」
「放っておけ」
白炎大佐は珠を腰のパウチにしまった。
「用は済んだ。脱出するぞ。ランを呼び戻せ」
「チッ!」
ランは、いきなり鋭い舌打ちをして、じりじりと下がった。
「くそ、勝負は預けたッ」
ランは身を翻して、元来た道を走っていく。
晶斗は剣を小さくして胸の鞘に収めた。
「いいぜ、予定通りだ。俺もユニスのとこへ戻るか」
「急げ。ラディウスを取れば、迷宮は自動的に崩壊する」
ランが合流するや、白炎大佐は三つの装置を連動させた。
空間が歪んだ。電磁波による強引な干渉により、次元と空間が激しくきしみ、磁場が狂い、まばゆい発光現象の悲鳴を上げる。
白炎大佐の一行がマークした迷図の入り口まで、一直線のルートがこじ開けられた。それは白く光る氷の洞窟めいていた。迷図を突き抜けてなお洞窟は成長し、迷宮の壁をつぎつぎに食い破ると、ついに、まっすぐ外へ続く路となった。




