061:迷宮透視行⑥
「良かった、探したんだぞ!」
晶斗の顔のドアップが目の前にある!
ユニスは晶斗に抱きとめられていた。強く抱きしめられて、息が詰まって声が出ない。手足をじたばたさせて、晶斗がようやく腕の力を緩めたところで、グイッと押し離した。
「びっくりしたっ。なんでここに? よく、わたしと会えたわね?」
ユニスは心臓がドキドキした。今の今まで迷図探しに意識を集中していて、晶斗がメイレ・ランから離れた後は、居場所を把握していなかった。気持ちが少少後ろめたい。
「さっきまで記録していた地図があるしね。途中からは、それだよ」
と、晶斗が左手首のセンサーを向けたのは、ユニスの左手の指輪だった。
「特殊な造りだからな。調べた時にセンサーに記憶させておいた。おかげでシェインの波長をたどれたんだ」
「意外なことで、呪いの指輪も役に立つわね」
「で、守備はどうだ?」
「う、それが……」
ユニスは、変装したプリンスと会い、フラッターがサイメスの現役の軍人でシャールーン帝国に送り込まれた諜報員を束ねる指揮官の白炎大佐だった、というのをかいつまんで説明した。
晶斗は眉一つ動かさなかった。
「まさか、知ってたの?」
ユニスは拍子抜けした。
「まあ、予測済みかな。あいつらがサイメスの人間だってのは、蹴砂の町でもそう思ったし」
晶斗の勘はフラッターたちがシャールーン帝国人ではなく、ルーンゴースト大陸のどこの国の人間とも違う、という消去法に基づいたものだったようだが、たいした勘だ。
「それより、急ごうぜ。迷図はあったのか?」
「そうね。こっちの方よ」
ユニスは晶斗を連れて通路を進んだ。
さっき壁の中で透視した迷図らしきもの――まだ、やっと掴めたばかりの気配に過ぎなかったが――に、入れそうな場所へと向かう。
しばらくして立ち止まったのは、通路の一角の、他の場所と何一つ変わらない灰緑色の壁の前だった。
確証が無い以上、勘でしかないが、そこはシェイナーの勘だ。
「ここ! ここなら、ラディウスの近くへ行けそうな気がするの」
「何回、走査してもただの壁だけど、とにかく入ってみるか。残り時間は三〇分を切ってる」
と、晶斗が背後を振り返った。
「誰か来る」
二人で真後ろの直線の通路の向こうを見た。
聞こえてきたのは、走る足音。
闇の奥から現れたのは、白いプリンスの姿。あちらもユニスと晶斗を認めるや、その唇を驚きに少し開けた。プリンスも、ユニスとのシェインのリンクはとっくに切っていたから、ここに二人が居ることなど知るはずもない。
「なんで、プリンスまでここで集合するのっ」
「ということは、サイメス人も来るぞ。早く開けろ。迷図へ入るんだ!」
ユニスは壁にベタッと張り付いた。右手を伸ばして晶斗の手を取る。もし、白炎大佐たちサイメス人に、こうやって迷図へ入る処を見られたらまずい、という考えが頭をかすめた。
「開いた! 来て」
溶けかけたような灰緑の壁面に体を半ばまで沈み込ませ、晶斗の手を力任せに引っ張った。
「どあっ」
と、壁をすり抜けた晶斗は、ユニスと手をつないだままで、ひっくり返った。




