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ルーンゴースト  作者: ゆめあき千路


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052:ヒアデス・クラス⑦ 

「ああ、通信機があったっけ。トリエスター教授だ。ここらが音声で通信できる限界だろうな」

 晶斗は胸ポケットから小さな金属片を出し、左耳たぶの後ろに留めた。その小さな金属片が電波を拾い、音声に変換して、耳の後ろの骨から内耳へと伝導する。

 遺跡に入ると、入口のある階層から離れたら外部との通信はほとんど出来ないらしいが、これは入口付近に強力な中継機を置いているから一階層下まで届いたのだろうと晶斗は言った。

「フラッターだ、聞こえるか。現在、一階層下を移動中だ。外で何かあったのか?」

『ユニス君を出してくれっ』

 トリエスター教授が叫んでいる。

 フラッターが差し出した端末に、ユニスが返事をするや、

『よし、遺跡全体を破壊しろ。この遺跡が実体化する前にだ。どんな手段を使ってもかまわん、私が許すっ』

「はい?」

 三人で端末機を凝視した。


「おい、まだ、行方不明者の捜索中だぞ!」

『だから、救出と破壊と脱出を、同時にやれといってるんだ』

 晶斗が怒鳴ると、負けじと(とげ)とげしい返事がした。


「ちょっと待ってよ、破壊なんて、わたしできないわよ?」

 ユニスの真剣な慌てぶりが通じたのが、通信機の向こうで、ゲフンッ、とやけに焦った咳払いがした。

『――それはっ、君は遺跡の踏破ができるシェイナーだ。シェインで迷宮を分解したまえ。単純でも、遺跡全体の二割以上を分解すれば、理論上は遺跡が形を保てなくなって、自壊を始めるはずだ」

「その理屈、今考えたでしょ。そんな手作業みたいな事していたら、一階層を分解するのに何時間かかると思って――!?」

『手作業ではない、踏破だ。これ以上グタグタ言うんじゃない、君が遺跡をい踏破できるシェイナーだと知っているんだぞ。あと一時間無いから、我々はもう避難する。健闘しろ!』

 トリエスター教授の通信は切れた。

 フラッターが何度もスイッチを押したが、晶斗の装置も交信不能だった。

 二人があきらめて装置から手を放した途端、「お?」と、晶斗が左耳を押さえ、フラッターの端末から音声がした。


『ユニス、迷図に入って光珠(ラディウス)を取れ。そうすれば迷宮は遺跡ごと崩壊する』

 

 一度聞いたら忘れられぬ(いぶ)し銀の響きだった。


 聞き覚えある晶斗は目を瞠り、フラッターは訝しげな目付きを端末機に落としている。

 げ、プリンス?と呟きかけて、ユニスはうっと唇を噛んだ。フラッターは魔物狩人のバシルがプリンスだと知らない。シャールーン帝国の宰相閣下が、戒厳令下の大陸間条約締結会議の真っ最中に変装して遺跡に入っているなんて、バレたら国際的スキャンダルだ。


「もう、簡単に言ってくれる人ね。……まあ、理屈はそうだけど」

 制限時間一時間で、めったに見つけられない『迷図の中の迷図』を速攻で発見し、さらに普通の迷宮探索なら見つけられないのが当たり前の稀少なお宝ラディウスを取ってこい、と。


『君ならわかるはずだ』


「げっ、聞こえてた!?」

 通信は切れた。


 晶斗とフラッターは何度も機器を調整したが、もうどこにもつながらなかった。

 フラッターの端末機から、データの転送を知らせるピピッという電子音がした。画面の表示を見たフラッターは、あっと声を上げた。

「そうか、空間異常だ。迷宮の固定ってのは、微弱な生体電磁波の影響を利用して波長を変えてやるものだが、内部で見たことのない異常なパターンが出てる。これが実体化の前兆らしいな。原因は不明だが」

「実体化なんて、実際には見たことが無いぞ」

 フラッターと晶斗が言うには、この巨大な遺跡が丸ごと実体化すれば、質量を持って地面に落ち、村は確実に潰れるらしい。と、そこで二人の強い視線がユニスに注がれた。


「よくわからないんだけど…………遺跡が、山になった伝説だったっけ。あれと同じ?」

 ユニスは上目遣いに二人を見返した。


「そう、あれだ」フラッターがうなずいた。「近世では記録に無いくらい、珍しいものだ。遺跡は固定化されても、空間の大部分は(こと)なる次元、見えざる存在を(たも)っているからな」

「それでいきなり破壊しろったってなぁ……。遺跡用の破壊工作準備はしていないしな」

 と、頬をかく晶斗。


 二人が言いたいことは何となくわかるが、さすがに期待が重い。

 ユニスは腕組みし、正面の壁に向いた。

「ラディウスは迷図に、迷図は迷宮のどこかにあるの。いくらわたしでも、ここからではわからないのよ。ある程度近づかないと。いつもなら、あちこち走り回って探すんだけど…………」


――――走り回る必要はありません。

 ユニスの頭の中でプリンスの声がよみがえった。


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