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ルーンゴースト  作者: ゆめあき千路


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42/81

041:マックス保安官

「ここには大陸で保存されている中でも最も古い遺跡(サイト)がある。定期調査のたびに新しい部屋が発見される、珍しい迷宮でもある」


 南黄砂村(みなみこうさむら)の保安局前の小さな広場で、トリエスター教授は先に現地入りしていた発掘チームに迎えられた。学術院(アカデミア)の学生を含む研究室の面々と、軍の研究室の学者連。ほか、機材の技術者や、医療班を合わせた総勢三十人のメンバーだ。

 聖都からの護衛官は、黄砂都市の空港で引き上げた。

 そこからは黄砂都市の保安局員が引き継いだが、田舎で人手がないのとで警備は付かず、定時連絡を入れるだけになった。

 遺跡地帯(サイトゾーン)の村はどこも似たような風景だ。街道の先は荒涼たる砂地が広がる。

 トリエスター教授の発掘隊は、空き家を三軒借りてベースキャンプにしていた。


 晶斗が保安局に行くという。

「あまり出歩かない方が良いんじゃないの?」

「どこにいても見張られているなら、この辺りの様子を、もう少し詳しく知っておきたいんでね。情報収集だよ」

 晶斗はトリエスター教授に一言断りを入れ、ユニスも一緒に出かけた。

 保安局は村の中央広場にある。ユニスは、広場のちょうど反対側から保安局の建物を見て、あっと声を上げた。

「あの二階の窓から、すっごいハンサムな人が覗いてたわ。保安官かしら?」

 こういう地域では遺跡管理局が警察も()ねている。守護聖都から任命される主任保安官の肩書きは、村長と肩を並べる村の名士(めいし)だ。

 晶斗が見上げたときには、窓には誰もいなかった。

「美形に引っかかるのはプリンスで()りろよ。うかうかしてたら、また呪いのアイテムなんかを贈られたりするぞ」

 晶斗に言われて、ユニスは左手の指輪を目の前に持ってきた。

「顔と呪いは関係無いでしょ。これについては日常生活に支障はないし、万が一の場合は、一生付き合う覚悟はできたわ。もし不都合が生じたら」

「外科手術で切り落とすか?」

「これを証拠に、正式に(うった)えて、莫大な賠償金をふんだくる」

「……それなら大丈夫かな」


 晶斗がドアを開け、ユニスが先に中に入った。が、ユニスはくるりと百八十度方向転換して、晶斗のガードベストの硬い胸に、いきおいよく顔面をぶつけた。

「はっ、あたし、どうしてこんな動きを?」

 鼻を押さえて呟いたら、晶斗が不審そうに見下ろした。

「おいおい、なにやってんだよ。昨夜の後遺症でまだ気分でも悪いのか?」

「ううん、違う。でもなぜか、今の一瞬の記憶が飛んで……?」


「やあ、ようこそ、南黄砂村へ」

 耳障(みみざわ)りのいい重厚なバリトンが聞こえた。

 ロビーの奥から大きく膨らんだ物体が、ノッシノッシと歩いてくる。薄い砂色の制服の胸に、点と輝く金色の保安官バッジ。腰のガンベルトの右に銃、左にはガードナイフ。年の頃は四十半ばか。

「わたしがここの主任保安官のマックス・ダンだ。人には早撃ち(スピード)マックスと呼ばれているがね」

 マックス・ダン保安官は、端正な目鼻立ちにニヒルな微笑を浮かべた。ただし、顔の周囲の肉は本来の骨格よりも、直径が三センチばかりはみ出している。身長は晶斗と同じくらい高いが、しかし、横幅はゆうに五倍はありそうだ。


 保安官を見たユニスは後退(あとず)ろうとして、後ろにいた晶斗に背中をぶつけた。首を捻って背後を見れば、晶斗も目を真ん丸くしている。

 そうして見ること二十秒後に、ユニスはあることに気付いた。

「わかったわ! さっきは、窓枠のフレームに(さえぎ)られて、顔のまわりのお肉が見えなかったのよ。この保安官は、フレーム・ハンサムなんだわ!」

「……なんだよ、それ?」

 ユニスの背中に、わけがわからない、という晶斗の呟きが落ちてきた。この失礼な会話は確実に聞こえていたはずだが、推定体重二百キロオーバーの保安官は大きな腹をゆさゆさ揺らしながら、すばらしい重低音で笑った。

「やあ、かわいいお嬢さん。保安局にどんなご用かな?」

「え? わたし?」

 ユニスは、保安官とばっちり目が合ってしまった!

「い、いいえ、その、ええと……晶斗ッ!」

 ユニスはすばやく晶斗の後ろに移動した。

「おい、なんで隠れるんだよ?」

「あたし、だめなの。こーいう常識をはるかに超えたプロポーションの人は」

 目頭が潤むのを感じながら、ユニスは小さく言った。

「はっはっは、内気(シャイ)なレディだな。まあ、遠慮せずに入りたまえ」

 保安官はほがらかに招いた。


 ユニスに押される格好で晶斗は進んで名乗り、用件を告げた。

「ここの遺跡分布図と、現在、村に滞在している発掘者の詳しいリストが欲しい」

「君たちは初顔だな。護衛戦闘士(ガードファイター)理律使(シェイナー)のコンビか。どこかに売り込みかい?」

「俺たちはトリエスター教授のチームだよ」

「あそこは老舗(しにせ)だな。この辺は犯罪事件は少ないが、たまに魔物が出るから、気をつけてがんばってくれ」

 マックス保安官は、体型からは想像できない手際の良さで、注文の資料を揃えてくれた。

 晶斗は紙の地図を一枚もらい、保安局の端末から左腕の腕輪型装置(バングル)にコードを繋いで、現在活動中の発掘団と遺跡の詳細なデータをダウンロードした。


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