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ルーンゴースト  作者: ゆめあき千路


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037:二つの大陸

「ルーンゴーストの裏側にあるもう一つの大陸文明サイメスの、新たなる台頭だ。彼らは正式な大陸間条約の締結(ていけつ)を求めてきた。ルーンゴースト側の代表大使はシャールーン帝国宰相アルファルド・コル・レオニス。君らがプリンスと呼ぶ、セプティリオン大公その人だ」


 晶斗はコーヒーカップを口元まで運んで、飲むのを忘れた。

「サイメスの? あの科学の文明が、シェインのルーンゴーストに?」


 ルーンゴーストと対をなす、もう一つの大陸で発展した文明『サイメス』。大陸間は、世界で最も高い二つの山脈と険しい海峡(かいきょう)(へだ)てられている。歪みが多い危険地帯が陸と海の国境付近に集中しているため、近年まではわずかな国交のみで、文明の交流はほとんど無かった。

 人間の知恵と力の積み重ねがサイメスの科学ならば、太古より連綿(れんめん)と続く人間の血と特殊能力と伝統がルーンゴースト、理律(シェイン)を操る文明だ。二つは対極の位置にある。


「これまでは、歪みを制御するシェインを持つルーンゴーストに主導権があったが、彼らの科学力は、歪みをコントロールできるメカニズムを発明したらしい。ようやく科学もシェインのレベルに追いついたと言うべきだな」

「初耳だ」

 晶斗はカップを置いて頬杖をついた。


 大陸同士の交流が乏しくても、近代化が進んだ現代ではそれなりに情報が入ってくる。生活文化の程度は、さほど変わらないという。ただし、科学とシェインの違いは決定的で、乗り物や機器などは、外見が似ていても、稼働する原理が根底から異質である。

 ルーンゴーストはあるがままの自然の性質と調和を利用する。

 サイメスは自然を加工し、変換したエネルギーを取り出して消費するのだ。


「蹴砂の町の遺跡で遭遇したブローザの海賊だが、盗掘団ではなく、実はサイメス政府直属のスパイ団だそうだ。サイメスは連盟国家だ。連盟国の一部と軍の過激派が手を組み、ルーンゴーストのシェインを独占で手に入れようと、暴走しているという噂だ」


 晶斗はリビングルームに顔を向けた。

 ソファで眠るユニスの寝顔は穏やかだ。空中からシェインの目は周囲に在るすべての情報をあますところなく捉えている。ユニス自身はお腹が減ってイライラしているのだが、誰か気付いてよ助けて!とわめいても、晶斗もトリエスター教授にも、心の声は届かない。トリエスター教授もシェイナーのはずだが、波長の合わない者の声を捉えるほどのシェインの強さはないようだ。


「それが、俺たちに、なんの関係がある?」

 公的には死亡済みの護衛戦闘士と、モグリだが一流の能力を持つシェイナー。日常ではあり得ないコンビを媒体に、ご神体であった世界の迷図(ワールドメイズ)を混ぜ合わせ、期待する結果とは?

 トリエスター教授は、腕組みして椅子の背にもたれた。

「君たちは、これからどうするつもりだ?」

「とにかく逃げるしかない。俺とユニスは世界の迷図を破壊した重犯罪者にされたんだ」

 リビングに目をやり、教授はうなずいた。

「そうだな。戒厳令は聖都全域に敷かれている。解除まで外出は禁止、街を出るなど論外だ」

「ユニスが起きたら、空間移送で移動できないかな?」

 晶斗はわざととぼけて言っている。だが、その言葉の裏の真剣さを()ぎとったトリエスター教授は、あっさり希望を打ち砕いた。

「シェインはつかえないぞ。フェルゴモールは帝国でもとりわけシェイナーが多い都だ。こういう時、そっちは特に取り締まりが強くなる。守護聖都の名は伊達じゃない。本領発揮で、地中のネズミ一匹見逃さん」

「だったら、どうしろっていうんだっ!」

 晶斗が食卓をぶっ叩いた拍子に、銀のポットと磁器のカップが跳ね跳び、けたたましい音を立てた。


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