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ルーンゴースト  作者: ゆめあき千路


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32/81

031:守護聖都フェルゴモール

 ルーンゴースト大陸最大の帝国シャールーンの首都、守護聖都フェルゴモール。

 その中央駅は、大陸最古の歴史を誇る巨大ターミナルだ。

 中心に高い塔がそびえる。一七二階建ての指令センター。帝国古来の理律(シェイン)と最新科学の粋を結集した巨大な城だ。

 そこから各地へ、放射状に二十二本の線路が延びる。複雑な血管にも似た鉄道網は、大陸全土を駆け巡っている。広大な駅には、大陸の各地から集まった大勢の人びとが人種も格好も様々に行き交い、多量の物資が到着、配送を繰り返していく。


 構内は東西南北に延びる十字の通路を街道とし、数えきれぬ横道でつながれた全長十キロにも及ぶ巨大ショッピングモールがある。大陸の物産品すべてが揃う、帝国最大のマーケットだ。


 ホームに降り立った晶斗は、歴史ある駅の偉容に圧倒された。

「これがシャールーン帝国の心臓か。聞きしに勝るってのは、このことだね」

 昨日までいた町など比較にならぬ人の海だ。

 創設から五百年、増築に増築を重ね、八方に腕を広げた建物は、常にどこかが改築中だった。

「地図がないと迷子になるわよ。迷路みたいに広いんだから」

 ユニスは中央改札から出た。

 中央改札口前の観光案内図で場所を確認する。

 神聖宮は観光名所なので、でかでかと表示されていた。


 晶斗と地図を指差して道を検討していると、明るい声に呼ばれた。


「ユーニスー、迎えに来たわよー」


 ぎょっとして、ユニスは振り返った。晶斗も同じ方向を見る。


 中央改札の正面入り口で、金茶色の髪を高く結い上げた女性が、大きく手を振っていた。薔薇色の片襟を左肩へ大きく折り返した、翡翠色のワンピースという、聖都で流行のファッションに身を包んだ、黒い瞳のすばらしい美女だ。


「マ、マユリカ? なんでここに?」


 びっくりするユニスの横で、晶斗はヒューッと口笛を鳴らした。

「すごい美人の友だちじゃないか。紹介してくれよ」

「あ、うん。わたしの幼なじみで親友のマユリカよ。フェルゴモールで公務員をやっているの」

 マユリカは輝く笑顔でやって来た。ユニスより十センチほど背が高く、胸は大きくウェストは細く、並ぶとユニスよりも五歳くらい大人びて見える。

「ひさしぶりねー。こちらはどなた?」

「晶斗・ヘルクレスト。護衛戦闘士(ガードファイター)だ」

 愛想よく返事する晶斗とは逆に、ユニスはよく見知ったはずの幼なじみを不審げに見やった。

「連絡、まだしてないわよ」


「あら、今朝早く、黄砂都市のホテルから電話があったわよ。この時間に中央改札口に車で迎えに来てほしいって、ユニスが伝言残したって……皇宮殿の観光に来たんでしょ?」


 皇宮殿と神聖宮は同じ敷地内にある。一点の曇りもない友の発言に、ユニスは暗く呟いた。

「あー、観光ね。マユリカ、今日は仕事は?」

「お休みよ。同僚が休暇をとったから、休日を交代したの」

「それ、いつから?」

「昨日から。今日が休みでよかったわ、車も買ったばかりだったし」

 そこで顔を見合わせたユニスと晶斗を、マユリカはじっと見つめ、気遣うように訊ねてきた。


「あのー、何か事情でもあるの? もしかして、その人と駆け落ちしてきたっていうんじゃ……?」


 親友の無邪気な発言に、とっさに返事が出なかったユニスの横で、晶斗は声を殺して笑っていた。トランクを持つ手が震えている。


 ユニスは人差し指でこめかみを押さえながら、黄砂都市の遺跡地帯で晶斗を拾い、雇うに至った経緯をやや詳しく説明した。ついでに、晶斗にはマユリカの正体を補足しておく。


「マユリカは特別職国家公務員……理律(シェイン)(しょう)に勤める、シャールーン帝国お抱えのシェイナーなのよ」


「シェイナーのエリート職じゃないか! すごい能力者でないと採用されないんだってね」

 晶斗はマユリカを見直し、素直に感心した。

 マユリカはころころと笑った。

「やだ、ほめ過ぎよ。わたしなんかユニスの足元にも及ばないわ」

 気をよくしたマユリカは、駐車場から車を回してきた。赤い小型車で、タイヤが着いていない。ボディは大人の膝くらいの高さに浮いて静止している。二人は後部座席に乗りこんだ。


「ちょっと、マユリカ。あなたのお給料で、最新型の理律仕様車(シェインカー)なんて、よく買えたわね」

 シェイン仕様の乗り物は、外観と操縦は燃料で動く機械仕掛けと似ている。機械よりは操作が簡単なのが特徴だ。


 また機械が四人乗りの小型車なら、同じ外形サイズでシェイン仕様は大人が六人、余裕で座れる。何より、動力もシェインだ。(ことわり)にかなった形状の部品を組み上げ、地面に反発する自然界の力を利用するので、ガソリンや電気などの消費するエネルギーを必要としない。

 同じ形状の機械装置に比べ、稼働する部分が少なく、摩耗(まもう)による劣化(れっか)も遅いという、長期に渡った場合の保障が妥当なのだ。


「もちろん、分割払いよ。理律省でも、わたしはシェインのメンテナンスができるから、かえって安上がりなの」

 マユリカは混み合う幹線道路を避け、街の裏道を走った。


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