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結婚と叔父上

 兄上が結婚した。

 お相手は山形の羽州探題最上義守の娘である義姫だ。


 山形からの行列を家中筆頭である桑折景長と小梁川宗秀が迎えに行き、米沢に連れてきた。

 そして、米沢城で婚姻となったんだけど、この時代の婚姻って三日間も続けてやるんだよ。

 俺は当事者じゃないからまだいいけど、将来自分もやると思うと結構億劫だな。

 まあ、とりあえず無事に婚姻は終わったわけだが、兄上のお相手である義姫は美人なんだけど、気が強いというかなんというか。あれは兄上も大変だね。絶対に尻に敷かれると思う。

 俺は、もう少しおしとやかな人がいいなあ。


 まあ、とにかくこれで兄上は無事結婚し、最上家とも新たに血縁関係を結ぶことができた。




 そんな中で、婚姻から数日たった後、兄上と俺は親父に呼び出された。


「父上、彦太郎輝宗参りました」

「六郎政景参りました」


 親父はすでに待っていたが他には家中筆頭の桑折景長に親父の側近かつ重臣である中野宗時と牧野久仲親子、そして叔父である亘理元宗と伊達実元の二人もいた。


「これは叔父上もおいででしたか」

「うむ、彦太郎の婚姻も終わったことだしそろそろ帰るからのう」


 この二人の叔父も、自分の所領があるからなあ。基本的には米沢におらず、亘理の叔父は亘理郡にいるし実元叔父は大森城主として信夫郡と名取郡の一部を領している。

 ちなみに実元叔父は、親父と爺さんの壮絶な親子喧嘩の原因の一つである、越後に養子入りさせられそうになっていた時宗丸だ。天文の乱の時は爺さん方の武将として争ったが、乱の終結後は、親父に赦されて、大森城を任されて、兄である親父に仕えている。

 亘理の叔父は、亘理郡の領主であった亘理氏に爺さんによって養子として送り込まれた。現在では、亘理氏はほぼ完全に伊達氏の家臣に近い形になっているが一応麾下に属している大名っていう立ち位置かな。

 俺も、将来は亘理の叔父と同じような立ち位置になるはずだから学ぶことは多いと思う。



「常陸や播磨、それに藤五郎(実元)、源五郎(元宗)とも相談して決めたことじゃがのう。藤五郎達は近く自領に戻ることになるため、帰る前にはっきりさせておこうと思ってのう」


 親父が、しずかに話し出す。


「彦太郎、儂は今年の終わりにでも、そちに家督を譲るつもりじゃ」

「なっ、それはまことなのですか。まだ父上はお若い、隠居するには早いと思いますが」


 どうやら親父は隠居するみたいだ。兄上は止めているが、ここで言うってことは中野や叔父上たちとはすでに了解を得ているってことだろうな。


「彦太郎よ、何も兄上は家中のことから一切手を引くといっているのではないぞ。それに、儂や源五郎もおるし、常陸などもおる。六郎も彦太郎の家督相続に異論はあるまい」

「はい、叔父上。私は兄上を支えていくつもりにございます」


 実元叔父上から聞かれたので俺は素直に答える。兄上が家督を継ぐことに異論なんて存在しない。


「彦太郎、そちも二十じゃ。家督を継いでも不足はあるまい」

「しかし…」

「彦太郎、これはすでに決めたことよ、異論は認めんぞ」


 なかなか家督を継ぐことを決断できない兄上に対して、親父が強く言い切った。


「分かりました。まだまだ若輩者ではありますが、覚悟を決めます」


 兄上も家督を継ぐことを受け入れたようだ。

 叔父上たちや中野、桑折らも安堵の表情を浮かべている。


 中野宗時親子が実権を握っているとはいえ、形式上は家中の筆頭である桑折景長が代表して、兄上に挨拶をする。


「若君様、この播磨以下家中一同、若君様に誠心誠意お仕えする所存にございます」


 桑折に続いて中野親子や実元叔父、そして俺が兄上に対して頭を下げる。

 亘理の叔父は実質伊達麾下とはいえ、まだ亘理家という独立した家の当主であるから頭は下げていない。亘理家の立場は何ともいえないんだよなあ。従属国衆に近いとはいえ一応、亘理郡を治める群主だから伊達家臣ではないという扱いだ。対等な同盟というよりは伊達家に庇護されている大名家って感じ。今の状態は、独立大名から伊達家臣へなる途中っていうのが妥当なんだろうな。


「分かった。まだ至らないところもあると思うがよろしく頼む。実元叔父上と亘理の叔父上もいろいろとお願いいたします」

「うむ」


 まあ、これで今年中に兄上が家督相続をすることが決定した。よかった、よかった。







 輝宗と政景の息子達や実元、元宗の弟達に景長を下がらせた晴宗のもとには中野親子だけが残っていた。


「さて、家督は彦太郎に譲ることとしたが、まだやらねばならん事は多いのう」

「はっ、現在の最優先事項は岩瀬でございますな」


 現在、岩瀬郡の二階堂盛義は蘆名盛氏、盛興親子と激しく争っていた。

 二階堂盛義の妻の阿南は晴宗の長女で輝宗や政景にとっては姉にあたる。

 その為、伊達氏は二階堂救援として度々蘆名氏と争っていた。


「止々斎(蘆名盛氏)めに岩瀬郡まで飲み込ませるわけにはいかんな」

「さようでございますな。ここは蘆名と争っている田村や佐竹と手を結んではいかがかと」

「うむ、岩瀬の件も含めてまだまだ彦太郎に任せるわけにはいかんのう」


 家督を譲ることは決定したものの、晴宗にはまだ実権を手放すつもりはなかった。

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