表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

stage4『夢と現の住む世界で』


 その罪を悔い改めるならば剣を持ちて悪を絶て


 力の使い方を学び、人に尽くせ


 罪が消えることはない


 だが善行を重ねることにより軽くすることは可能だ


 永遠の命と信望の剣


 これがお前に与えられる罰となる




「げ、霊緋……」


「え? ちょっ、なんであからさまに避けるのよ!」


 霊緋はレーザーの射線をたどってルーミアの元へ来たはいいものの、肝心のルーミアから避けられていた。


「…………もう」


 霊緋もルーミアが何を言っても聞く耳を持たないことがわかるとその場を離れて行く。


「ふぃぃ、やっと行ってくれた」


 ルーミアの脳内では霊緋は完全にトラウマになっていた。


 まあ元からあまり関わることはなかったのだが。


「それにしても一体どれだけ湧いてくるのよ」


 攻撃を開始してからかなり時間が経つが、いっこうに終わりが見えないでいた。


 天狗が加勢したのはある意味ラッキーだったがこのままだとキリがない。


「敵の大将の首を刎ねないとやっぱりダメかな」


 もうすぐ夜が明けてしまう。


 そうなるとルーミアの能力にとって不利な状況になる。


「やりたくはなかったけど仕方ない、レーザーを一点に絞って……っ!」


 うかつだった。


 空にばかり目が行ってて背後から迫る敵に気付けない。


「しまっ……」


 光弾もレーザーも発射までに遅延が発生する。


 ルーミアはとっさの判断で闇をマント状にするとその中に隠れた。


「これで!」


 逆に背後に回り込むと、背中から闇を固めた剣を突き立てる。


 敵は刺された場所から砂状になって崩れた。


「ふう」


「嬢ちゃん、後ろががら空きだぜ!」


「え?」


 慌てて振り向くが既に敵の持つ槍が目と鼻の先まで迫る。


 しかし槍がルーミアを貫くことはなく、横から現れた影が敵を吹き飛ばした。


「危ない危ない……まったく、わしらの幻想郷に何曝してくれとんのやこいつらは」


 現れた影の正体は巨体の鬼だった。


 地下から出て来たと思われる鬼はルーミアに笑いかけると地上に降りた敵に次々と殴り掛かる。


「おいお前ら! 遠慮はいらねぇ、やっちまえ」


「よっしゃぁぁ!」


 巨体の鬼の号令で随伴していた鬼達も戦闘に加わった。


「よし、私も!」


 ルーミアも剣をもう一度握りしめると、敵の中へと突っ込んで行った。








「急げ! 急いで避難するんだ!」


 桔梗は一人、進路を邪魔する敵を相手にしながら人間の誘導を担当していた。


 避難先には天狗の好意で妖怪の山にある建物を使わせてもらえることになっている。


「すまないな、無理言って」


「非戦闘員しかいませんがね。ですのでここの防衛はお願いしますよ?」


 若い天狗はそれだけ言うと転びかけた老人を支えて先に歩いて行った。


 このまま行けばなんとか里に被害が出る前に避難出来そうだ。


「さてと……てめぇらなぁ!」


 振り向きざまに虎鉄を抜いて投げつける。


「いい加減引っ込みやがれ!」


 すぐに虎鉄を呼び戻して振り回す。


 既に囲まれているのは薄々気付いてはいたが、狙いまでは気付けなかった。


「俺を狙ってたとはな……マヌケにも程があるぜ!」


 一気に襲い掛かる敵を虎鉄で薙ぎ払いつつ隙を見て妖力も貯めていく。


 次の大技までは少し時間がかかるがそれぐらいは持つはずだ。


「しつこい!」


 足に縋り付いてくる敵を振り払うと、顔と思われる部分を踏み付ける。


 だがこの異形の敵は倒せば倒すほど大量に出て来て確実に桔梗の体力を削って行った。


「ちっくしょう……多過ぎるだろこれは!」


 やがてまた足を掴まれ、腕を掴まれ、身動きが取れなくなっていく。


「仕方ない、行くぜっ拳技……」


 今まで溜めた妖力を全身に流し込む。


 指先まで妖力が完全に行き届くと同時に桔梗の身体を光が包み込んだ。


「『無頼滅霊拳』!」


 技の発動と共に桔梗の身体にしがみついていた敵が弾き飛ばされていく。


 桔梗は虎鉄を地面に突き立てると素手で異形の敵に殴り掛かった。


「オラオラぁ! そんな程度か!」


 その頃、敵の侵入してきた大結界の穴では新たな侵入者がその姿を現し始めていた。








「そう、わたくしたちの脅威となる障害は少ないの……がっかりね」


 ぽっかり開いた大結界の穴では黒い服に身を包んだ女性が中の様子を眺めていた。


 女性は口元を綻ばせると、身に付けていたマントを外して大結界の中へと放り投げる。


 するとマントは黒い巨大な鳥に姿を変えて女性の元へと戻ってきた。


「退屈ねこの世界は。もう壊しちゃおうかしら」


「なら私が全力で邪魔させてもらうわ」


「っ! 誰!」


 女性と配下の敵達は驚き、声の主を探す。


 やがて目の前の空間が歪んで中から紫が現れた。


「あら、誰かと思えば下賤な妖怪さんじゃない。このわたくしに何のよ……」


 言葉はそこで途切れた。


 紫がスキマから機関車を出すと女性にぶつけたのだ。


 機関車はそのまま大結界の外まで出ると、パッとその姿を消した。


「この世界はね、人間と妖怪の相互関係で成り立っているの。今すぐ訂正しなさい」


「あらあら、もしかしてお怒りになりました? 頭の沸点の低い妖怪さんですね」


 突然の攻撃で回避しきれなかったのか女性はよろけながらまた穴まで戻ってくる。


「この世界は、幻想郷は私の全て。これ以上戦いを続けるなら私は……あなたを殺す!」


 紫の周囲に大量のスキマが開くと、中から光弾が撃ち出された。


 女性は回避しながらも体制を整えると手に持った杖を構えて特大のレーザーを紫に向けて放つ。


「アハハハハハ! 我が名は暗夜天、禍を授く者! あなた達この世界に暮らす者に極限の絶望を見せてあげるわ!」


 紫は舌打ちしながら暗夜天の攻撃を避けつついくつかを撃ち返した。


 レーザーの攻撃範囲さえ気をつければ回避は容易だ。


 回避の間に妖力を溜めていく余裕さえある。


「隙だらけよ、弾幕結界!」


 紫は暗夜天のレーザーをスレスレで避けると右手を掲げて技の発動の体勢に移った。


 弾幕結界は比較的隙の少ない技だから一瞬でも詠唱時間が出来ればすぐに発動出来る。


 しかしその一瞬の間に勝負が決してしまった。


 避けたはずのレーザーがなぜか紫の背中に命中する。


 死角からの攻撃。


 完全に不意を突かれて高威力のレーザーの直撃を受けた紫はそのまま湖に落下していった。


「ああ、惜しい惜しい! もうちょっとだったのにねー、残念だったねー!」


 嫌みたっぷりに墜落する紫を罵る暗夜天。


 紫が湖に沈んだことを確認すると杖を頭上に掲げた。


「さて、さようなら幻想郷。つまらない世界だったわ」


 博麗大結界の外に4つの魔法陣が現れて、それぞれ中から巨大な砲台が顔を出す。


 暗夜天も砲台が現れると同時に詠唱を始めた。


 詠唱が進むに連れて砲台の先端も光を帯びていく。


「壊れなさい、『ワールドブレイカー』!」


 砲台から放たれたレーザーが轟音と共に幻想郷の大地を穿つ。


 雑魚を相手にしていた霊緋や四神達が気付いた時には既に遅く、暗夜天の高笑いと共に幻想郷は光に包まれて行った。








「くっ……がはっ!」


 桔梗は喉に絡んだ血の固まりを吐き出すと、よろめきながら立ち上がった。


 さっきの一撃で雑魚は吹き飛んだようで辺りは静まり返っている。




 音がしない……。




 光で眩んだ視界が戻るに連れて周りの景色が明らかになっていく。




「何なんだよこれは……嘘だろ……」




 絶句して立ち尽くす桔梗の周囲は木一本すら生えていない。


 はげ山のように土が剥き出しになった山、跡形もなく消し飛んだ人里……。


 そこにあったはずのものがなくなっていた。



「桔梗! 無事だったのね」


 霊緋は桔梗の隣に降り立つと桔梗の顔を覗き込む。


「桔梗?」


 桔梗の反応はない。


 ずっと眉間にしわを寄せて前を睨んでいる。


 何もなくなった幻想郷の大地を風だけが通り過ぎていった。


「許さねぇ……絶対にな!」


 仰ぎ見る空は砲撃の影響なのか敵のカムフラージュなのか分厚い雲が覆っていて真っ黒になっている。


 桔梗の咆哮だけが虚しく響いた。








「大丈夫か? 嬢ちゃん……」


 ルーミアはゆっくりと目を開けると頭を起こす。


 正直、あの一瞬に何が起きたのかわからない。


 ただ気が付くとたくさんの鬼達に囲まれてその中で倒れていた。


「さっきのは一体……」


「…………。」


 返事がない。


 ルーミアは鬼達の壁の中からはい出ると、頭を振ってまだフラフラする身体を何とか立たせる。


「ねぇ……っ!」


 振り返るルーミアの目に映るのは真っさらになった湖の周辺と、背中の焼けただれた鬼達だけだった。


「何なの? え? え?」


 付近には何人か天狗や影から支援してくれていた低級妖怪の姿もある。


 皆一様に意識はなく、着弾の衝撃で開いた穴が敵の攻撃の凄まじさを物語っていた。


「ルーミア……無事だったの」


 突っ立ったまま動かないルーミアの背後で紫が湖から出て来る。


「紫……幻想郷が、幻想郷が!」


「落ち着いてルーミア、まだ望みは捨てちゃだめよ」


「でも、もう……」


 ルーミアは足元に残っていた雑草の葉をちぎって手に乗せる。


 雑草の葉はルーミアが軽く握っただけで粉々になり、風に乗ってどこかへと飛んで行った。


「ルーミア、確かに何もかもがなくなってしまった。けれどまだ幻想郷は残っているわよ?」


 紫は服の裾を絞りつつ、傘で地面をトントンと軽く叩く。


 紫の言う通り、まだ幻想郷の地盤自体は残っている。


 どれだけの時間がかかるかはわからないが復興は不可能ではないはずだ。


「…………。」


「俯いてても始まらないぜルーミア、まずは残ったやつらであいつを討つしかない」


 後ろから霊緋に持ち上げられて桔梗も合流する。


 残った戦力はさっきまでの2割にも満たないが、他の四神達が集めてくれていることを紫に伝えると桔梗は虎鉄を呼び出す。


 霊緋も数が減ってしまった陰陽玉を一つ一つ確認するとルーミアに向かって親指を立てた。


「聞いてちょうだいルーミア、敵の攻撃はかなり強力よ。もし次弾を撃たれたら幻想郷は確実に消滅するわ」


 霊緋はボロボロになった陣羽織を脱ぎ捨てて手を打ち合わせる。


「私たちの任務は何としても次弾の発射を阻止すること、まだ戦えるわよね」


「フフフ、誰に物を言っているのかしら」


 ルーミアの周囲に闇がオーラ状になって現れる。


 ルーミアはそれの先端を掴むと思い切り抜き取った。


 闇で形作られた剣は禍禍しい光を放ち、今までのものとは比べものにならないぐらい狂暴な形へと変貌していく。


「さあ、第二ラウンドだ。敵の大将の首は俺が頂くぜ」


「あんた飛べないでしょ? 私たちが何とかするから妖怪の山を守ってよ」


「相変わらず冷たいな霊緋」


「当然よ。さあ、ごちゃごちゃ言ってる暇があったらさっさと片付けるわよ」


 四人は別れるとそれぞれの目的のために動き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ