悪魔ノ 三
僕が駅前にある時計台の前に着いたとき、クラスの友達達はすでに集まっていた。
時間は約束の時間から二十分は過ぎている。
僕は走ってきた足を緩め、息を整えてから、恭しく集団の中に合流しようとする。
『遅いぞ、サトル』
クラスの学級委員の昇君が言う。クラス一の優秀なメガネをキラリと光らせ、僕を睨む。
『ごめん、ごめん。ここに来る途中に変な宗教の勧誘に掴まっちゃって』
そう言い、僕は変な帽子の女性の事を思い出していた。あの人に捕まってなければ約束の十分前にはここに着いていたのだ。
『まったくだ。あと五分遅れてたら置いていくとこだったぞ』
そう言い、同じく怒ってるのは野球部の主将で運動神経抜群の新一君。
僕はこいつにも軽く頭を下げておいた。
『ほんと、お前は千夏ちゃんに感謝するんだぞ。みんなお前を置いて行こうとするのを千夏ちゃんが待とうよって言ってくれたんだからな』
そう言うのは学校一のプレイボーイな隼人君。
その先には女子の集団があって、ひときわ輝く千夏ちゃんがいる。
ハヤトが千夏ちゃんは優しいと連発し、他の男子には焦燥感。
千夏ちゃんの照れた笑顔に先制点を取ったのはプレイボーイのハヤトなのだ。
千夏ちゃんは僕とは同じ学年だけど、一緒のクラスになった事はない。
でも、その噂はクラスや学年にはとどまらず、今や他の学校からも一目見たさに人がやってくるほど。
キリッと引き締まった顔は小学生でも美しいと分かり、誰にでも優しい心、学年で一番の頭脳明晰。友達も多く、誰にでも好かれ、愛されている。
噂ではすでに大学生と付き合ってたり、モデルで億単位の金を稼いでいたり、なにやら女優になってもうすでに月9のレギュラーも決まっていたりとか。
とにかくスーパースターな彼女なのだ。
僕はそんな彼女に密かに恋心を抱いていた。
いや、僕だけじゃない。ここにいる男子全員が千夏ちゃんを狙いにきている。
集まったのは学年でもトップに位置するスター軍団。そこに何故僕が紛れ込んだのかはまさに疑問だった。
『そんな、みんなで集まってからの方が楽しいし』
そう言い微笑む千夏ちゃん。僕達、男子の心はメロメロだ。
かくして、僕の遅刻はうやむやになり、僕達は隣町へと遊びに行った。
僕達の住む新町市。何もない市内より、若者は常に楽しい隣町を好む。