好奇心は戦闘員を殺す
ピクピクと、痙攣した147番の黒タイツ。
金仮面を外した一つ目はそいつを見下ろして一言。
「ふむ、廃棄処分であるな」
「へ?」
部屋が壊されたという事で二度目の手術中断をされた一輝は、手首をさすりながら思わずそっちを振り返る。
一つ目が黒マントから取り出した杖を地面を一突きすると、どこにスタンバッてたのかとツッコミを入れたくなるほど素早く黒タイツの戦闘員Aが一人部屋に飛び込んでくる。
ポーズが第二次世界大戦でドイツで人種差別で毒ガス部屋な感じでヤバい。
「Qー!」
「147番を廃棄処分にしてくれたまえ」
「Qー!」
手足が変な具合に折れ曲がった黒タイツを、五体満足の黒タイツが素早く担ぎ上げる。
「いやちょっと待て!」
「何かね?」
「Qー?」
思わず呼び止めた一輝に、二人は首を傾げて振り向いた。
「疑問形まで同じ叫びかよ・・・じゃなくて廃棄処分だって?」
「うむ、そうであるが?」
「殺すのか?」
「正確には分解して、新しい戦闘員を生み出す材料にするのだが、何か?」
「・・・・・・っ」
口篭った一輝を黒マントは興味深そうに見ていたが、何時までも黙っていると金仮面を外して心臓に悪い巨大な目が一輝に向けられる。
「ほう、つまりやめて欲しいのかね」
え?
一つ目はふむふむと頷く。
「なるほど、倫理観の違いかね、人の命は尊い、戦闘員は地球人どころか我々の次元でも人間ではないのだが・・・なるほど、個性に社交性を鑑みて、哲学的な人類として定義すると、実に興味深い」
愕然とした。
「あんた・・・心が読めるのか?」
「ああなるほど、君達はテレパシーが使えなかったのだな、心を読まれるのも不快らしいな、知らなかった事とは言え非礼を詫びよう・・・そう言えばまだ私の名を知らぬのだったな、山部一輝君」
そう言いながら一つ目の上に金仮面を被せる。
「これでテレパシーは通らなくなる、では改めて我が名を告げよう」
呆然とした一輝の前で、金仮面はお約束で黒マントをバサッと。
「我が名はゴールデンマスク、秘密結社クアンタムの首領である」
「ダサッ」
一輝の反射的な一言がアッパーカッ。
仰け反った彼は素早く体勢を整えて部下達に振り返る。
「そんなにセンスのない名前かね?」
手足の折れ曲がった147番までがうん、と頷いた。