詳しく説明するまでが悪役です
平成時代に流行った丸っこい黒いボディ。
複眼式の赤い目。
回るベルト。
うげー、である。
声を出さずに呻く一輝の目の前で、そいつはヨロヨロと姿を現した。
そして目にしたのは黒マントの金仮面、ドリルとメス両手の博士っぽいジジイ、顔面Q文字の黒タイツ。
台座に縛り付けられた大の文字。
あ、この流れは・・・。
「貴様等ぁ・・・その人をどうするつもりだ!?」
ヒーロー、怒りの叫びである。
えええええええ、これ俺が二号になる流れ?力の?赤い手袋の?一号役者が撮影で事故ったから急遽キャスティングされた?
あるいは内心慄いている一輝が我に返れば、もしくは金仮面がもうちょっと地球人の常識を弁えていれば今後の展開は違ったかもしれない。
生憎と黒マントが包むのは三メートル超の巨体であり、金仮面の下は一つ目だった。
「どうもうこうも、君のように改造手術を施して我が結社のために働いて貰うつもりだがね?」
「改造手術・・・」
金仮面が首を傾げると同時に一輝も我に返る。
「ふむ、何が不満なのかね? 地球上の他の生き物を参照して人工的に肉体の退化と再進化を行い、今までの地球人より優れた肉体と知力を持つ、言わば超人類になったというのに」
ふむふむ、と一輝。
(この爺さん、実は凄い?)
と本人の前で口に出さなかったのは不幸か幸いか。
そいつはヨロヨロと後ずさり。
「貴様らは・・・一体何なんだ」
「うむ、我々は秘密結社クアンタム、一つ隣の次元から地球を併合に来た使者だ」
「地球征服か!?」
「正しくは違うな、未だ恒常的に飢えと戦争を繰り返すこの次元に、資源の増やし方を教授しに来たのだよ、代価は貰うがね」
「おのれ・・・そうはさせん!」
ビシッと金仮面を指差すそいつ、やたらと腰を落としたビシッとしたポーズで。
特撮ショーかよ。
ある意味二人だけの世界が構築される。半目になった一輝は縛られてるので大の文字のまま動けない。
博士と黒タイツなんかお茶してるし。涙もそうだったがどこから飲んでやがる。
「無理はしない方がいいのではないかね、手術直後は力が上手くコントロールできないはずだが」
あ、だからポーズがやたらとロボっぽくて腰を落としてるのか。
「くっ、そこの人、待っててくれ、俺は絶対に君を助け出す!」
「え・・・」
意表を突かれる一輝、ビシッと金仮面を指差すそいつ。
「秘密結社クアンタム・・・貴様らは絶対に許さん!俺は貴様らを打ち砕くための暴力となろう・・・そう、俺の名はライオットだ!」
バカーン!
なんとか走る事はできたようで、壁を突き破って部屋を出て行くライオットとやら、空中に撥ね上げられて大文字の上を茶飲みと共に吹っ飛んで行く黒タイツ、速すぎるので回転数は数えてない。
金仮面をさすりながら一つ目の黒マントが呟く。
「ふむ、彼らは何が不満なのだね」
待て、聞き捨てならない言葉を一輝は聞いた。
「・・・彼ら?」
「うむ、かれこれもう四十八人目なのだがね、不満をぶちまけて飛び出して行った改造人間は」
「多すぎだろ!」
ベシャリと、手足を変な方向に曲げた黒タイツがようやく着地した。