表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密結社Q  作者: 大根
3/10

秘密結社は世知辛い

「それでは5番、前へ!」

「Qー!」

「辞令、5番、秘密結社クアンタム戦闘員として、新宿区への配属を命ずる!」

「Qー!」

「悪の尖兵として励むがよい!」

「Qー!」

黒マントの偉そうな金仮面から受け取った辞令を胸に抱き、感涙にむせぶ黒タイツ。

いいなー、と広場に並ぶ戦闘員の面々。

どうでもいいが、一体どこから涙が出ているのだ。


「なに、これ?」

カクンと、首を傾いげた一輝の横には今だ内股気味の戦闘員。

「何って、研修明けの辞令授与ですが」

「あるんだ・・・」

「普通あるでしょ?秘密結『社』なんだから」

「ねーよ」

心なしかぼやきにも力がない。


少し切なくなった。


「あー、一輝さん、もう十四社も採用試験に落ちちゃってますもんね」

「・・・何でそれを知ってやがる」

「そりゃスカウトする相手を調べるのは基本ですから」

プライバシー侵害だっ!とそいつを蹴飛ばそうとしたが止めた、虚しい。

二人でその場に座り込んで目の前の辞令授与式を眺める。32番の戦闘員が田舎に配属されて肩を落としながら列に戻っていた。

無性に羨ましく思い、思わず呟きが出る。

「世の中って世知辛いよなー」

「そりゃ一輝さんが高望みしすぎなんですよ、小中高と勉強せずに遊び呆けて、Fラン大学を出ても新卒で就活しないのにブラック企業以外に入りたいなんて」

「嫌なことをズバズバと言うな、お前、てか何でそこまで知ってる」

「え、ありがちでしょ?」

ガリガリと後頭部を掻く。

「あー、くそ、そうだよな、世知辛いんじゃない、甘くないんだ、だから頑張るしかねーよな」

「そうそう、その意気ですよ」

うるせー、と恥ずかしさを誤魔化すようにチョップを入れようとして気付く。

黒タイツが横座りをしていた、俗に女の子座りだとか野郎にウケのいい姿勢である。

「・・・お前、女だったの?」

そこまではまあいい。

しかしその割には、と思いながら胸に視線を向けたのはいけない、いけません。

顔面に大きく描かれたQの下がニッコリと笑ったのが何故かわかった。


手首のスナップが効いた見事なビンタを食らい、軽々と宙に舞う一輝。


戦闘員ってすげー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ