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第三章 王子殿下たちのこと

 第一王子レオナルド殿下について、客観的に述べる。


 端正な顔立ちをしている。王妃様の血を引いているからか、黒髪に青みがかった灰色の瞳。

 すらりとした長身に、完璧な姿勢と着こなし。

 見た目だけなら非常に優れた王子様だ。


 問題は中身だ。


 レオナルド殿下は完璧主義者で、自分の思い通りにならないことが許せないタイプ。

 「自分が正しい」という確信が強すぎて、他者の感情への想像力が著しく欠けている。


 私への扱いは、幼い頃は露骨だった。


 「お前は本物の王族ではない」「側室の子が王宮をうろつくな」。


 前世で上司から言われた「使えない新人は席を温めるだけでいい」と

 構造的によく似ていた。

 人を傷つけることで自分の立場を確認したいタイプは、

 どの世界にも必ず存在するらしい。


 私が腹を立てたのはそういう時ではない。


 お母様が廊下で呼び止められ、人前で「お前の娘を見ると気分が悪くなる」と

 言われたことがあった。


 お母様はその場でぴっと背筋を伸ばし、静かに答えた。


 「陛下のご意向でございます」


 それだけ言って、一礼して去った。


 私はその後ろに続きながら、心の奥で何かが煮えているのを感じた。


 怒鳴り返したいわけではない。

 ただ、お母様があの顔をするたびに——微笑んでいるのに目が笑っていない顔——

 この状況をなんとかしなければならない、と強く思う。


 第二王子クロード殿下は、兄とは正反対のタイプだ。


 気に入らないことがあると即座に行動に移す猪突猛進型で、

 悪意よりも考えなしから動く。


 廊下で肩をぶつけてきたり、わざと足元に物を投げてきたり。

 子供のいじめとして非常にわかりやすく、その分対処しやすかった。


 ある日の廊下で、クロード殿下が私を呼び止めたことがある。

 当時、私は六歳で、殿下は十三歳だった。


 「セレス」


 背が高くて体格もよい。普通の六歳児なら怖いかもしれない。


 私は振り向き、深々とお辞儀をした。


 「クロード殿下、何かご用でしょうか」


 「何かご用って……なんでそんな落ち着いた顔をしているんだ」


 「何か粗相がありましたでしょうか」


 「そうじゃなくて! 俺に話しかけられたら、もっとびびるだろう普通!」


 ……ああ、怯えた反応を期待していたのか。


 私は首を傾けた。


 「殿下のお顔を見てびびるほど、度胸がないわけではないので」


 「それって俺が怖くないってことか!?」


 「そのような意味ではございません。殿下には威厳がおありです」


 「なんか腹立つ!」


 憤慨してずかずかと去っていく背中を見送りながら、私は「まあこれが正解だろうな」と思った。


 感情的な相手には、受け流しが一番効く。前世で学んだことだ。


 ただ、今になって振り返ると——クロード殿下は単に「相手にしてほしかった」だけかもしれない、とも思う。

 兄は完璧で常に褒められ、自分は次男で扱いが違う。

 その苛立ちを、ぶつけやすい相手にぶつけていただけかもしれない。


 ……だからといって許せるかどうかは、また別の話だが。




◆◆◆




 私が七歳になった年の冬、魔力の計測があった。


 「魔力石」と呼ばれる宝石に手を触れることで、魔力量と属性を判定する。


 この日、私は密かに緊張していた。

 でも事前に調べた結果、石は「触れた瞬間に本来の魔力が測定される」のではなく

 「流した魔力が測定される」という仕組みらしいとわかっていた。

 (侍女のエルナが詳しかった。ありがとうエルナ)


 つまり、意図的に抑えれば低い数値が出る。


 私は魔力石の前に立ち、そっと「ほんの一滴」だけ流した。

 石が淡く青白く光った。


 「……無属性魔力、量は並み以下、ですかな」


 先生がそう記録してくれた。


 よし。完璧だ。


 ところが、お母様が計測を受けた時のことだ。


 お母様は正直に計測したらしく、石が眩いばかりの翠色に輝いた。

 それを見て魔法教師が驚き、その日のうちに王妃様側の耳に入った。


 翌日から、王妃様のお母様への視線が少し硬くなった。


 ……お母様の魔力が明らかになったことで、警戒されるようになったのだ。


 私は改めて確信した。


 あたしの魔力がバレたら、もっとひどいことになる。


 絶対に、隠し通す。

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