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<EP_006> ラビリンス

兵士たちの話を聞いたミノス王はアステリオスを危険視し、アステリオスを閉じ込める迷宮の建築をダイダロスに命じた。

実の母であるパシパエもアステリオスの幽閉に反対せず、むしろ積極的であった。

ダイダロスも新しい発明に心躍らせ、夢中で迷宮を作り始めた。

奴隷のナウクラテーの言葉はどこにも届かず、無力であった。


ダイダロスはすぐに迷宮を完成させた。

迷宮が完成すると、ナウクラテーは兵士とともにダイダロスの毛糸を手に、幼いアステリオスの手を引いて迷宮の奥深くへと入っていった。

幼いアステリオスは暗い迷宮を歩いていく不安にナウクラテーの手を痛いくらいに握り締めた。

その温かな温もりにナウクラテーは心を焼き尽くされるような想いだった。

迷宮の奥深くには、どうやって作ったのかはわからないが、日の光が差し込む部屋があった。

天井の仕掛けからは日の光が差し込み、豪華な部屋を照らし出していた。

しかし、その光は人工の光であり、アステリオスが太陽を再び見ることはなく、名前にある星の光など入るはずもない空間であった。

部屋にはアステリオスが好きだった絵本が多く用意されており、入るなり、アステリオスはナウクラテーに読み聞かせをねだってきた。

用意された寝台に添い寝をしながらナウクラテーはいつものように即興で物語を聞かせていった。

いつもの星の国に行ける帆船の話をナウクラテーは紡いでいった。

時折、涙ぐみ言葉を詰まらせる母を幼いアステリオスはつぶらな瞳でじっと見ると、母の手をギュッと握りしめ、顔を母の胸へと埋めた。

やがて、アステリオスが寝てしまうと、ナウクラテーはアステリオスをそっと抱きしめ、兵士とともに地上へと戻っていった。

地上へと戻る道は、どんどんと明るくなっていったが、ナウクラテーの心は反対にどんどん暗くなっていった。

地上へ戻ると、イカロスがナウクラテーへと走り寄ってくる。

「ねぇ、母様。アステリオスは?一緒に遊ぼうって約束してたんだけど、どこにもいないんだ」

無邪気に尋ねてくるイカロスを抱きしめた。

「アステリオスは、遠いところへ遊びに行ったのよ。イカロスが追いつけない遠いところへ…」

ナウクラテーがそう嘘をつくと、イカロスは無邪気な顔のまま話してくる。

「いいな、僕もいつか、もっと広い、誰も追いつけないところへ行きたいな」

その言葉に、ナウクラテーはイカロスを抱きしめ、初めて声を上げて泣いた。

「どうしたの、母様。痛いよ」

力強く自分を抱きしめ、泣き崩れる母を前にイカロスは困惑するばかりだった。


「迷宮の重い扉が閉まる音を、私は今でも夢に見るわ。ガタン、というあの音が、私の幸福が砕ける音だったのよ。ごめんなさい、アステリオス」

辛い記憶を思い出したのか、そう言って顔を覆って甲板に崩れ落ちるナウクラテーをアステリオスが支えた。二人の目が合うと、アステリオスは静かに首を横に振った。

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