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<EP_004> 尊厳を奪われた日、尊厳が生まれた日

翌日からダイダロスは木で中が空洞となった雌牛の像を作り始め、その外に雌牛の皮を被せていった。

像が完成するとナウクラテーに裸になって中に入るように命じ、牛の群れへと歩くように命じた。

作り物の雌牛に牛たちは興味を持つこともなく、逆に怯えて逃げていく始末だった。

ダイダロスはそれを見ると、ナウクラテーへ戻って来るように命じた。

戻ってきたナウクラテーが外に出ると、ダイダロスは牛の模型を工房に運び直し、また作り直していった。

そうして、何度も作り直しているうちに、雌牛の模型はどんどん本物に近くなり、次第に雌牛の模型に入ったナウクラテーが近づいても牛たちは恐れなくなっていった。

そして、ついには雌牛の模型に欲情するまでになり、ナウクラテーに覆いかぶさる牛まで出てきた。

しかし、元々人間と牛であるため、交わるまでにはいかなかった。

その後も雌牛の模型は改良を続けられ、ついに牛と交わるまでに完成してしまった。

背中に牛の重みを感じつつも、模型の中でナウクラテーは泣いた。

牛に貫かれ、人間としての尊厳をことごとく失ったことに絶望し、涙を流した。

模型の外から聞こえる、実験の成功を子供のようにはしゃぐダイダロスの声がナウクラテーの心をより一層抉っていった。

牛が離れ、絶望のままダイダロスの元へと戻ると、ダイダロスはナウクラテーを模型から引きずり出した。

牛の体液まみれで、絶望に打ちひしがれるナウクラテーには目もくれず、ダイダロスはひたすら模型の完成を喜んでいた。


パシパエへ模型を献上されると、その夜にパシパエは模型に入り、白い雄牛へと近づいていった。

雄牛はパシパエの入った模型に欲情し、パシパエはついに思いを遂げたのであった。

その後もパシパエは雄牛の元へと行き、何度も交わうこととなった。

やがて、パシパエは懐妊した。


その頃、同じ様にナウクラテーも懐妊した。

ダイダロスは、時折、ナウクラテーを抱いたが、牛と交わった自分を平気な顔で抱ける夫に嫌悪感しか抱かなかった。

しかし、妻としては夫を拒むことはできなかったので、その時は心を殺して時が過ぎるのをじっと耐えていた。

ダイダロスに抱かれながら見る窓の外の星空はナウクラテーにとってあまりにも遠く虚しいものだった。


やがて、パシパエは子供を産んだ。

その子供は半人半牛で牛頭を持つ子供だった。


「その子がこのアステリオスよ。あなたの時代ではミノス王の牛という意味のミノタウロスと呼ばれることが多いかもね」

ナウクラテーは操舵手の少年に歩みより、頭を撫でながら優しく肩を抱いた。

アステリオスは少女に向き直ると恥ずかしそうに頭を下げた。

その顔はどこかはにかんでいるようにも見えた。

アステリオスに寄り添うナウクラテーの反対側に翼の少年が降り立つ。

翼の少年の頭も撫でてやりながらナウクラテーは少女に少年を紹介する。

「そして、同じ頃に生まれた、この子がイカロスよ」

ナウクラテーに紹介されたイカロスは笑みを浮かべながら少女に手を振った。

「この子たちが、私の人生を変えたのよ」

アステリオスとイカロスの頭を撫でる、ナウクラテーの顔は輝いていた。

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