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<EP_015>私は私

ナウクラテーの美しい黒髪が夜空に煌めいていた。

「私のお話はここでお終い。どうだった?」

甲板で聞いていた少女の元にナウクラテーは再び戻り、肩を抱きながら笑顔で聞いてきた。

少女は涙が止まらなかった。

「私は…私は…」

ナウクラテーに答えたいのだが、言葉が出なかった。

そんな少女をナウクラテーは優しく抱きしめる。

「いいのよ、無理に言葉にしなくても」

ナウクラテーの言葉に少女は泣きながら何度も頷いた。

「大丈夫。あなたはあなたよ。あなたはあなたのままでいて良いの。あなたの生き方は誰にも決められないのよ。ほら、ごらんなさい」

ナウクラテーは少女を立ち上がらせると空を指した。

そこには満天の星空が広がっていた。

「ほら、空にはこんなに星が瞬いているわ。そして、あなたの住む地上にも」

ナウクラテーはそう言って、地上を指す。

そこには夜の町に浮かび上がる人工の光が星のように数多く瞬いていた。

「星はこんなにたくさんあるのよ。その一つだけにこだわるなんてもったいないじゃない。あなたはあなたのままに生きて、あなただけの星を見つければ良いのよ」

そう言うと、ナウクラテーは少女にウインクをした。

少女はナウクラテーの胸へと飛び込み泣きじゃくった。

「大丈夫。今は見つからなくても、あなたにもきっと見つかる日が来るわ。私が奴隷から彼らの母としての役割に目覚めたような時が、あなたにもきっと来る。それまではゆっくりおやすみなさい」

ナウクラテーは胸の中で泣く少女をあやすように、優しく、そして力強く抱きしめた。

ナウクラテーの胸の鼓動を感じながら、少女はまどろんでいった。


少女はベッドの上で目を覚ました。

いつもと同じ部屋、いつもと同じ天井だった。

カーテンを開けると、そこにはいつもと同じ風景が広がっていた。

でも、少女にはどこかいつもと違って見えた。

そして、いつもと同じように顔を洗い、いつもと同じように朝食を食べる。

そして、いつもと同じようにスーツに着替え、いつもと同じように玄関前に置いた姿見で衣服を整える。

姿見に写った自分と目があった。

少女は鏡に写った自分の目をまっすぐに見つめ返した。

「私は私、それでいい」

そう呟くと、いつもと同じように玄関を開け、外へと飛び出していった。

その少女の顔は、誇りの被ったトランペットケースの上のコルクボードに貼られた写真と同じように笑っていた。


【星屑を拾う帆船 新解釈ギリシャ神話・ナウクラテー物語 Fin.】

【星屑を拾う帆船―新解釈ギリシャ神話・ナウクラテー物語―】いかがだったでしょうか。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。

今後の執筆活動の励みとなりますので、読まれた方は感想など聞かせていただければと思います。

作品冒頭にも描きましたが、私の創作がかなり入った作品となっております。

実際のギリシャ神話とは違う部分も多いので注意して下さい。

いろいろと細かい注釈を入れておきます。

ダイダロスが甥を殺してアテナイを追放された→事実です。ダイダロスが殺したのはいろいろと諸説あるみたいですけど。

ミノス王がポセイドンとの約束を違えたためパシパエが白い雄牛に欲情する呪いをかけられた→事実です。一説には別の話もあるみたいですけどね。

アステリオスという名前→事実です。ミノタウロスは「ミノス王の牛」という意味ですので、ミノタウロスの本名はアステリオスです。

ミノタウロスの犠牲者数が18年で28人→概ね事実です。これも諸説あるのですが、アテナイからミノタウロスの迷宮へ9年ごとに男女7人ずつの生贄が送られることになっていたという説があり、テセウスは3番目の生贄に自らが立候補したという説を採用しています。

ギリシャ神話におけるナウクラテーはミノス王の奴隷、ダイダロスの妻、イカロスの母として名前だけが登場している女性ですので、ナウクラテーに関する記述はほぼ創作となっております。

アテナイからミノタウロスのラビリンスへ9年ごとに7人の男と7人の乙女が生贄ということから、ミノタウロスが人喰いの化物ならば少食すぎるという考えがこの話の出発点です。

ミノタウロスへの生贄が食料でないならば、ミノタウロスを世話していた人物がいるはず→迷宮への出入りにはダイダロスの毛糸が必須→ならば、その人物はダイダロスの身近な人物のはず→イカロスorナウクラテー。

こんな設定ができあがりました。

パシパエはミノタウロスを忌み嫌っていただろうから、乳母がいたはず→乳母には同時期に子供を産んだ奴隷があてられていたはず→イカロスとアステリオスが同時期に産まれていれば、パシパエの奴隷であったナウクラテーが乳母に選ばれてもおかしくない。

こんな考えになりまして、ナウクラテーはアステリオスの乳母であり、イカロスとアステリオスは乳兄弟となりました。

その後は、読んでいただいた通りとなっております。

ここで書かれた設定はほとんどが私の創作ですので、実際のギリシャ神話とは違っております。

アテナイからクレタ島のラビリンスに奴隷が送られていた。ラビリンスに送られた奴隷は戻ってこなかった。テセウスがラビリンス奥でミノタウロスを殺した。イカロスは太陽に近づきすぎて死んだ。ナウクラテーはダイダロスの妻であり、イカロスの母であり、クレタ島の奴隷であった。

この事実は変えずに解釈だけを再構築して作った創作神話です。

本気にしないで下さいね。

それでは、また、お会いできるのを楽しみにしております。

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