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<EP_010> 家族の肖像

テセウスの宣言を聞いたナウクラテーは震える足を必死に堪えながら、ダイダロスの毛糸を取ると迷宮へと向かった。

「母様!アステリオスが!」

フラつきながら歩いていくナウクラテーの元へイカロスも駆け寄ってきた。

ナウクラテーとイカロスは迷宮へと降りていった。


暗い迷宮を降りていくと、霊廟の中から強い鉄の臭いが漂っていた。

二人が中を見ると、そこには凄惨な光景が広がっていた。

霊廟の中は血に塗れており、壁に描かれた海と星空は真っ赤に染まっていた。

中央に横たわる首の無いアステリオスの死体を壁際に座っていた28の死体が静かに見つめていた。

あまりの凄惨な状況にナウクラテーは倒れそうになるが、イカロスがそれを支えた。

ナウクラテーはフラつきながらアステリオスに歩み寄ると、自分の身体が血に染まることを厭わずにアステリオスを抱きしめ涙を流した。

イカロスはそんな母とアステリオスの姿を奥歯を噛み締めながらジッと見つめ、歩み寄ると足元にある割れた石板を見つけた。

石板は血に塗れており、そこにはテセウスのものであろう足跡がしっかりとついていた。

イカロスは拾い上げ石板を読むと、そこには「我が友、ジェレミー、ここに眠る。彼の魂が星の海を越えて安寧の地へと向かわんことを祈る」と書かれてあった。

イカロスは周りを見渡し、石板の無い死体の前に置き、彼の冥福を祈った。

そして、アステリオスに覆いかぶさって泣いているナウクラテーを押しのけると、アステリオスの死体を持ち上げた。

「イカロス、何を?」

「兄さんを友人と一緒にしてあげないと可哀想だろ」

涙を流しながら不思議そうに見上げてきた母にそう答えると、真一文字に口を結び、アステリオスを壁の死体と同じように座らせた。

そして、何も書かれていない石板へ書きつけていく。

「我が兄アステリオスここに眠る。兄の星の国への旅路が健やかであらんことを願う」

そう書きつけるとアステリオスの前へと置き、ナウクラテーとともに亡き兄へと祈りを捧げた。

祈り続ける母を残してイカロスは迷宮の奥の部屋へと行った。

アステリオスの部屋には、何度も読み返されたのであろう、ボロボロになった最初に運び込まれた絵本が棚にならんでおり、朝日が差し込んできた場所には一つのキャンバスが置いてあった。

そこには、笑顔のナウクラテーとその両脇で微笑むイカロスとアステリオスが描かれていた。

その絵を見ると、イカロスは唇を噛み締め、強く目を瞑ると俯き、拳を強く握った。

やがて、目を開けると天井から射す朝日を睨みつけた。

イカロスはアステリオスの絵を取ると、霊廟で祈りを捧げ続けている母の元へと戻っていった。

ナウクラテーへ絵を渡すと、彼女は絵を強く抱きしめ、声を上げて泣いた。

イカロスは亡き兄へと祈りを捧げた。

ナウクラテーが落ち着くのを見て、二人はアステリオスの絵とともに地上へと戻っていった。


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