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探せ!神頼み先

「……つまり、うちらにその女の子の縁結びをして欲しいと?」

 翌日、事務所で明石さんに昨日の報告ついでに彼女に良縁を、とお願いしたのだが、意外にも昨日の勢いとはうってかわって、返ってきたのは困惑混じりのものだった。

 彼女はまさかそんなこと言われるとは思っていなかったという様子で目を丸くすると、渋い顔をしながら考え込んだ。

「そんなに難しい話なんですか?」

 昨日は縁結びどんとこいと言った調子だったのにいざ話を持ってくるとこれである。

俺はどういったことかと明石さんの顔を覗き込んだ。

 彼女は天を仰ぎ、

「なんちゅうたらええか……。」

 と唸るように呟き、言葉を選びながら話し出した。

「昨日も言うたけど、うちらもそら神やから、縁を結ぶのは簡単やで?でも、そこから先は当人同士の努力が必要なんよ。」

「というと?」

「たとえば、榊くんが出先で気の合いそうな女の子に出会ったり、道端でぶつかったりとか、そういう「縁」を繋ぐことはできるで?でも、そこからおつき合いに発展して、結婚するとなると、そらお互いの努力が必要になるやろ?」

「ああ、なるほど。」

 確かに、出会いから結婚に至るまでの間には大きな開きがある。今日道でぶつかった相手が絶世の美女だとしても、そこから結婚するかと言われるとそれはもう果てしないやり取りが必要になる。そうなるにはやはりお互いにそれなりの強い意志が必要になるだろう。当然、岩永咲耶にそんな意志と行動力があるのかといえば甚だ疑問である。なんなら結婚させたいと言ってるのは周辺の話であって、彼女にその意志があるかどうかすら怪しい。

「そうなると、まずは彼女に結婚したいと思わせるところから始めなきゃいけませんね。」

「流石にうちらも人間の考えを操ることはできへんわ。せいぜいそっと囁くくらい。」

「そうなると、強引な方法もそんなにないわけですね。」

「まぁ、一定の条件が整えば、親子の「縁」を繋ぐことはできるから、あとは野となれ山となれで、少なくとも話は進むやろ?良縁になるかどうかはまぁ、それこそ本人の努力次第やけど、半々くらいかな?どっちにしても、相手がおらなんだら話が進まんけどなぁ。」

「……最近気がつきましたが、できちゃった婚って神様の都合だったんですね……。」

「最近は「授かり婚」って言うらしいで?」

「……言い方変えただけじゃないですか。」

 神をも恐れぬ所業。

 いや、神々の所業だが。

 流石にそれはいかがなものか。

 こうやって人間は神に試されていたのかと思うと寒気がする。

 第一、そんな手段を使ってあとあとヤモリ様の望む結果になるとは到底思えない。

「やはりお相手を見つけて縁を繋ぐしかないんですね。」

「まぁ、大昔はその辺の手続きをすっ飛ばした神様もおるんやけどあれはあれで……。」

「いや、絶対やらないでください。」

 流石にそんな気軽に奇跡を起こされてもそれはそれでたまったものではない。現代社会でそれをやったらこれはこれでどう考えても彼女の人生はろくでもないことになるだろう。強力な霊威を示すには副作用も大きいと言うことだ。

 と言うわけで、結局話はふりだしに戻るわけだ。

 すなわち、お相手がいなければ話にならない。

「じゃぁ、どうすればいいんでしょうかねぇ。」

 うーん、唸り声を上げる。そこに声を上げたのは隣の席で話を聞いていた南さんだった。

「じゃぁこれはどうでしょう?他所には縁結びを専門にする神様がおられます。榊さんがそちらに彼女を連れて行って、本格的に縁結びのお願いをするんです。それで、神様のご加護で良縁を結んでもらえば。」

「え?俺が連れて行くんですか?」

「神様に直接お話ができるのは榊さんですし願主である咲耶さんがいないと神様も対応出来ないじゃないですか。」

「まぁ、確かに……。」

「それ、ええやん!行こう、縁結びのお参り!」

 南さんの提案の問題点について話そうとした俺だが、明石さんはそれに膝を叩いた。そして南さんはにっこり頷くと、パソコンで何やら調べていたのか画面を見ながら候補地の紹介をし始める。

「やっぱり、縁結びといえばここですよね。出雲大社!いつも縁結びの相談を行うところで。ご利益はバッチリですよ。」

「いや、大阪からだと遠くないですか?」

「ほなここは?長野の四柱神社。御祭神の徳の高さから言うたらここなんかええと思うなぁ。」

「遠い遠い。」

「じゃぁ宮崎県の青島神社とかは?海彦山彦伝説で有名ですし、景色も綺麗ですよ?」

「いやいや、遠くなってます。」

「えー、ほなここは?沖縄の波上宮。景色もそうやし、二人で行くならついでにあちこち寄れそうやない?」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 二柱の神々がネットサーフィンしながら盛り上がるのを俺はたまらず静止した。神々はその声にきょとんとした顔でこちらに振り返る。

「なんでそんなことさら遠いところ探すんですか?」

 俺の言葉に明石さんはああ、と小さく返事すると何を言っているんだと言わんばかり被表情で答えた。

「いや、せっかくやし、一泊くらいするところやないと、勿体無いやん?」

「レジャー旅行の計画か!」

 神々にはプライベートと仕事の区別がないのだろうか?俺は明石さんの言葉に流石に突っ込んだ。だが明石さんは納得したような気配はなかった。彼女はニコニコしながら俺の肩を叩くと諭すように俺に話しかける。

「まぁ、いつも休日があるかないかわからんような仕事やし、ここいらで羽を伸ばしてもええんちゃう?うちらも一月くらい音信不通でも、結果さえで出たらなんも言わんから……で、ここはどうやろ?ローマの教会にある「真実の口」映画「ローマの休日」で有名になった所。」

「……もはやお参りですら無くなってるじゃないですか。」

 労働という概念がないのか、根本的に能天気なのかわからないが基本的に本来の目的がどこかに行っている。こんな神々に相談していたら流石に解決は難しそうだ。

 俺は手元のパソコンを操作してあれこれ検索してみた。

 案の定、定番からマイナーなものまであれこれ検索にひっかかる。

「とりあえず京都や大阪にも縁結びで有名なところはありますから。そこを当たってみます。」

 俺はいくつかの候補を挙げてプリントアウトした。並ぶリストを眺めて二柱の神々は。俺の自主性を尊重することにしたのか、言いたいことがありそうだが、可もなく不可もなくと言った面持ちで頷いた。

「まぁ、京都近辺やったら確かにあれこれ回れるから、それなりにご利益もあるやろ。一度くるっと回ってみるのもええんちゃうかな?……なんやったら、泊まりがけで。」

「……何なんですか?そのこだわりは?」

 どこまでも俺に休日を与えたがる神に俺は流石に突っ込まざるを得なかった。


神頼みされたとて縁結び

解決するほど楽じゃない

では専門の神様に

聞けばどうにかなるものか?

ではまず近場の京都から

次回更新まっててね

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