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依頼人はどこですか?

今回仕事の依頼者として紹介されたマンションは、いつもの縄張りから外れた、どちらかというと俺の自宅方が近いかのような場所にある、見た感じ変わったところのないマンションだった。

 と、いうか、何時も出勤時は目の前を通っている。

 この仕事にかかわってから色んな意味で「見える」ようになってしまったわけだ

が、そういった霊的な観点でも特に印象に残っていない。

 いや、この場合「おかしなモノ」が見えないというのは、ある意味良好な状態と

言ってもいいくらいだ。何しろ町の中は何もしていなければ放っておいてもいろいろ

なモノが入ってくるものだ。おおよそこういう場所にはそれなりの守り神がいること

が多い。

 「空室あり」の看板がやる気なくかかっている。いまどきオートロックはついてい

ないようで、ふらりと中に入ることができた。

平日の昼間なのでさすがにマンション内は静かだ。行き届いているとは言えないが、

郵便ポストも共有部もまぁ、さっぱりしていて荒れているという気配はない。

霊的にも気になるところはない。

こうなると何の相談か想像もつかない。

……。

ふと人の気配を感じて振り向くと、遠巻きに眼鏡の女性がこちらを見ている。

住人だろうか?

確かにこの時間帯にスーツ姿の男がマンション内をうろうろしていれば、セールス

か、さもなくば空き巣の下見とすら見られてしまうだろう。

 俺は気にしないふりをしながらさらに上の階に上がる。

 そして、依頼者を探し、うろうろ各階を歩き回った。

 確かにこれでは普通の人間の目から見たら怪しげに見えるだろう。

 だが、俺の依頼者はどこにいるのかわからない。

 神棚のようなわかりやすい所ならよいが、木のうろや天井裏、何なら排水口、トイレに棲んでいる神々もいるのだ。出迎えがないとこうやって探す羽目になってしまう。

 ある程度霊感のようなものや今までの経験則で最近はそんなに苦労なく守り神にお会いすることができていたのだが、今回はとんと見つからないし、出迎えもない。

そうこうしているうちに、俺はとうとう最上階のフロアにたどり着いてしまった。

「さて困った。」

俺は最上階のフロアを一通り見回し、まったくそれらしき神が見えないことを確認すると、途方に暮れてつぶやいた。

大体こういう場所には霊的な主ともいうべき守り神がいるはずだ。第一、相談があるというから来たのだから相談主がいるはずだ。

 それがなぜか姿が見当たらない。

毎度こういう時は呼ばれなくても縄張りに入ってくれば顔を出してくるのが常なのだが。

「依頼主のこと聞いとくべきだったなぁ。」

 俺は最上階から街を見下ろしながら、そうぼやくとため息をついた。

 景色はなかなかのものだが、ずっとここにいるわけにもいかない。

 なにしろ現実社会では俺は訪問者、部外者もいい所である。

俺は上の階には登れないことを再度確認すると、下に降りる階段に向かった。

 そして、一階の出入り口にその人はいた。

「あの、どのような御用でしょうか?」

 彼女は一階エントランスの管理人室の前におどおどした様子でこちらに話しかけた。

 それは、先ほど遠巻きにこちらを見ていた人間の女性だった。


依頼者に、会ってこいとは言うけれど

姿見えないマンションの中。

うろうろしてたらそれは不審者

さて見つかった榊君

この人は誰?依頼者はどこ?

続きは次回のお楽しみ




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