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ムーンライトベリーの香りが忘れられなくて  作者: 餅月 響子


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42/51

第42話 スクリーンの前で母との静かな時間

 何十年ぶりだろうか。

母と隣同士に映画を見るのは。

愛香は何故か緊張していた。別に小さい子みたいに歩きまわったり、ジュースこぼ     したりすることはない。

叱られる要素は何もない。一緒にただ映画を見るだけ。

一緒に過ごす時間が久しぶりの環境だからか。

自分の気持ちに向き合っても何だか、そわそわする。

大人になったようでなりきれてない。母を超えることはできない。

大人になってもそれはどこまでも同じだ。


「愛香、ポップコーン食べてよ。今、予告だけど。今のうちに食べておかないと、本編になったら、目立つでしょう」

「あー、食べてる音がね」

「そうそう。飲み物はいいんだけどさ。何にしたんだっけ」

「私は、レモンティー。お母さんは」

「ジンジャーエールの炭酸」

「シュワシュワだから、げっぷに気をつけて」

「出ないわよ」

「……」


 愛香はその話だけで楽しかった。何気ない会話が何だか嬉しい。母とこんな話したことあったかな。


「ほら、本編始まるから」

「うん」


 最近、テレビCMでも放送されていた。映画予告。2人の刑事が数々の問題を解決していく。ミステリー映画だ。愛香は前から気になっていた話題作だ。テレビドラマで人気になって、今回初の映画化だった。俳優の2人がかっこよく、演技もうまいと絶賛していた。にこにこと笑顔で見ている愛香の姿を見て、母もご満悦だった。シングルマザーでこれまで頑張って来た。1人の稼ぎで吊り橋を渡るようにギリギリで生活してきた。親子で健康であることだけが何よりも救いだ。もうすぐ、20歳になり、いずれ結婚相手が出て来るだろう。そしたら、いよいよ、母は1人になる。今回千晃先生の元に愛香を預けて数カ月。1人になるのは、慣れていなかった。いつも愛香が支えてくれていたことに気づく。煙たがっていたこともあった。仕事に行けなくなったことを悔いたこともある。子供は宝というか、母にとって愛香は人間として必要な存在の1人なのかもしれない。


「愛香、ありがとうね」

「……え? 今良いところだから。なんて言ったかわからない」


 映画に夢中になっている愛香の横で真っ暗な中、お礼を言う。母の目から涙が出ていることに気づかない。


「ごめん。なんでもない。映画に集中しないとね」

 

 犯人を追い詰めるシーンだった。愛香は興奮して心は大満足になっている。今は千晃先生や暁斗のことは忘れている。かっこいい好きな俳優2人を追いかけている。現実から逃れたいのかもしれない。


 ポップコーンが美味しくてとまらなかった。早くもレモンティも全部飲み干していた。

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