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最上級の鬼のこと

「両面宿儺と出会った!?」


 事務所へ帰ってくるなり大声を上げるのはミサさんだ。


「それで、倒したの!?」


「いやいや、逃げられてしまったよ」


「ええー、明日香先輩が最上級の鬼を逃がすなんて……いったい何回目ですか?」


「数えていない!」


 数えておいてくださいよ明日香さん。最上級の鬼に出会う確率なんて宝くじ当たるくらい低いでしょ。てか、この広いセカイで何体の最上級の鬼がいるんだい?


 はぁ、とミサさんはため息をついた。


「あの、これまでに最上級の鬼を仕留めたヒトっているんですか?」


 おれは質問した。犬学や鬼の歴史についてはここの誰よりも無知だからだ。


「いるよ。今の犬屋敷当主の遠い先祖――桃太郎、ではなく八坂桃源(やさかとうげん)摩睺羅伽(まごらが)という最上級の鬼を殺している」


 明日香さんは答えてくれた。八坂桃源か、それが何時代の人間かは分からないけど凄い人間ってわけか。


「犬神って最上級の鬼を倒さなくてもなれるんですか?」


「なんだ日野少年、ドッグズの階級に興味があるのか?」


「いや、まあ、おれって犬草なもので、将来鬼狩りで食っていけるのか不安なだけです」


「なるほどね。なら安心していいよ、犬神になるには実績だけでいい。簡単に言えばそうだけど、最後に決めるのは八坂家と八木家と霧江家と……今は無き比渡家だ」


 おっと明日香さん、比渡家ならいるじゃないですか。


「比渡家なら比渡ヒトリがいるじゃないですか」


「正式に当主と認められればね」と比渡は言う。


「そうだね。比渡家の当主だった比渡犬道(ひといぬみち)がいない今、ドッグズの階級制は八木と霧江の好き勝手だ。まあ御三家の話は難しい話だよ」明日香さんは比渡を見ながら言った。


 つまり八木と霧江に嫌われているおれって一生ドッグズの下っ端ってこと? 嫌よ嫌よ! 比渡! 当主になっておれを犬闘くらいに上げてよ!


「と、比渡ちゃんは当主になりたいのかな?」


 唐突に明日香さんは比渡に訊いてきた。


 そうだ比渡! 当主になりたいって言え! 今なら犬神のコネで当主になれるかもしれないぞ!


「まだわたしには早いと思います」


「つまり、当主にはなりたいわけだね」


「…………」比渡は沈黙だ。


「分かるよ~その気持ち、当主ってめんどくさいし、嫌いな奴らと話をしなくちゃならないしでストレス蓄積状態になるよねぇ」


「いえ、わたしの実力で当主になれるのかが問題なだけです」


『――なれる!』おれと明日香さんは声を揃えた。


 比渡なら当主になれる。比渡以上に鬼を憎いんでいる者なんていないだろうから、比渡は当主に相応しい。


「御家の問題にはなるだろうけど、比渡ちゃんについて来る犬聖は多いよ。自信もってね!」


「……頑張ってみます」


 比渡の返事に明日香さんはうむうむと頷いてから、


「それでは実績を積まなくてはならないな! 君たちには最上級の鬼について話しておこう。運が良さそうだからね」と、下手くそな絵を描き始めた。


「まずは両面宿儺だ! 三年前、わたしが仕留め損なったこいつの話をしよう」


「あの、両面宿儺って低級の鬼に化けられるんですか?」とおれは訊く。


「どうだろうね、わたしも両面宿儺が低級の鬼に化けているとは思わなかったよ。しかも青春エネルギーを吸って元の姿へ戻るとも思わなかった。まだ完全体にはなっていないけど、今のままでも最上級の鬼なのは間違いない」


 そっか、両面宿儺はまだ完全体じゃねぇのか。叩くなら今だけど、今のおれの実力じゃ無理ってものだな。


「ええー、明日香先輩その状態の両面宿儺に逃げられちゃったんですか……」


「仕方ないさ! はははは!」


「歳ですか? そろそろ世代交代の話が上がってきますよね」


「誰がババアだと?」


 と、明日香さんはミサさんの頭を掴む。


「言ってません! ババアとは言ってません!」


 ミサさんは全力で否定する。ほんと明日香さんって何歳なの?


「と、話を戻して、両面宿儺の能力は特にない。ただ、わたしが戦った最上級の鬼の中でも体術は化け物だよ」


 体術か。おれと似ているな。


「まあ、両面宿儺に出会ったら接近戦は避けた方がいい」


 ふむふむ、おれの得意分野では両面宿儺に勝てないな、つまり武器が必要だ。てか、最上級の鬼って何体いるんだ?


「あの、最上級の鬼って何匹いるんですか?」とおれは訊く。


「現在確認されている最上級の鬼は――巖堕羅(がんだら)両面宿儺(りょうめんすくな)阿修羅(あしゅら)迦楼羅(かるら)。そして二つで一つの仁王阿形(におうあぎょう)仁王吽形(におううんぎょう)。その六体だよ」


 六体もあんな化け物いるの? でもドッグズには明日香さんレベルがあと二人いるとすると余裕か。


「と、話を戻すとだ――近頃鬼の動きが活発になってきた。その兆候が両面宿儺の出現にあるとわたしは考えている」


「つまり、また《《あれ》》が始まるかもしれないってことですね」ミサさんは深刻な顔で言う。


 あれって何? 


「そう、近々百鬼夜行があるかもしれない」


 百鬼夜行? 妖怪のパレードってか?


「あの、百鬼夜行ってなんですか?」


「日本各地で同時多発的に鬼が発生することよ」と比渡は言う。


 つまり、日本各地で鬼といいう名の災害が発生するってことね。それをドッグズは止めなくちゃならないってことね。


「百鬼夜行の時期が分かればいいんだが、いつ発生するかは分からない」


 予測は不可能だが、明日香さんは両面宿儺の出現に百鬼夜行と関係性を見出しているのか。


「まあ、百鬼夜行の心配はしなくていい。それより心配すべきは犬学のイベントだ」


「イベント?」おれは首を傾げた。


「うむ、犬学の闘技大会だ!」


 

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