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イレギュラー

 くそ! さっそくイレギュラーじゃねぇか。明日香さんの嘘つき、いいや嘘はついてないか……でも大丈夫でもない!


「うおらぁぁ!」


 おれは進化寸前の鬼を殴り飛ばした。それに合わせて比渡は鬼の首を刎ねようと斬りかかる。


 しかし、鬼の復帰が速い。比渡は投げ技で飛ばされた。


 さすが都の鬼だ。発生からすぐに青春エネルギーを吸って成長してやがる。って鬼を褒めている場合じゃねぇ。


「比渡!」おれは比渡を空中で受け止めた。


 おれが着地すると同時に鬼は攻めてきたが、比渡は鬼の攻撃をガードしてくれた。


 低級の鬼にここまで苦戦するものなのか? それにこの鬼、中級になる予兆があると言っても何かおかしいぞ。


「日野君、今ならわたしたちで攻めればあの鬼を倒せるわ」


 今ならか……つまり中級の鬼に進化しちまったらおれたちだけじゃ力不足になるってことだよな。


「まずはおれが突っ込む、比渡はサポートしてくれ」


「犬のくせにわたしに命令?」


「仕方ねぇだろ、今は緊急事態だ」


「そうね、仕方ないわね」


 じゃあ行くぞ。とおれはベータ階級因子を発動させる。


「ベータ階級因子、身体強化、開」おれは鬼に突っ込んでいった。


「オラァ!」


 おれの攻撃は簡単にガードされた――だがそれでいい。悪いな鬼さん、おれは噛ませ犬だ。


「はあぁ!」


 比渡が首を刎ねようと斬りかかる。


 その時――


「――ここは青春エネルギーがよく集まるなぁ」


 鬼から《《新たに二本の腕が生えた》》。


「こいつ! 鬼神両面宿儺(りょうめんすくな)か!」


 比渡がそう言うと、今度は新たに脚が二本生えた。てか、りょうめんすくなって何?


 と、考える間もなくおれと比渡は吹き飛ばされた。


 鬼の方を見ると、つい先ほどまでいた低級の鬼は変貌を遂げている。


 なんだか体系が人間と大差ないほどに小柄になったな。


 腕四本と脚四本になっているけど、さっきの姿よりも弱そうじゃねぇか。


「ネームドの鬼……両面宿儺」と比渡は青ざめた。


「ネームドって――最上級の鬼」


 え、マジ? でも最上級って自然発生しないんじゃなかったのか?


 てか中級ならまだしも最上級の鬼なんて倒せるわけがないだろ。


 これが本当のイレギュラーか。低級から最上級に飛び級しやがって!


 と、両面宿儺が比渡を狙って接近戦をもちかけて来た。


 比渡は刀で攻撃をいなしていくが、両面宿儺の方が攻撃速度がある。このままじゃ比渡のガードが間に合わなくなる。


 おれは比渡のサポートに入ったが、殴り飛ばされた。


 背後からの攻撃すら読まれるってどうなってんだ? 後ろに目でもついてんのか?


「黒犬! その顔を憶えているぞ!」


 両面宿儺は吠えるように言った。


 どうにかして比渡から引きはがさねぇと。


「ベアトリクスはどうした?」


 比渡のガードは破られ、日本刀が折られた。


 まずい! おれは比渡の方へと向かおうとしたが、カラダが動かない。


 両面宿儺に首を掴まれた比渡は宙吊りになった。


「答えろ、ベアトリクスはどうした?」


「……犬の寿命は人間に比べて短いのよ」


「死んだか……」


「……いいえ、ベアトリクスの想いは受け継がれている」


 やばい! 比渡が殺される!


 動けおれのカラダ! 飼い主がピンチだぞ! 今動かないで青春とは言えないぞ! 動け! 動け! 動け!


「ベアトリクス、力を貸せ!」


<まったく、仕方ないですねぇ>と、ベアトリクスは言うと、


 おれの中のアルファ階級因子とベータ階級因子を強制発動させて、おれを動かした。


 カラダが軽い。これなら比渡が殺される前に助けられる。


 と、おれは比渡のところまで跳躍した。


「なに!?」おれは両面宿儺の顔面を殴った。


 痛ぇ、殴ったおれの拳の方が砕けそうだ。でも、お姫様救出完了だぜ!


 地面に転がるおれと比渡はボロボロだ。


「比渡、明日香さんが来るまで時間稼ぎするしかねぇ」


 でもどうやって時間稼ぎする? こんな奴相手に一秒ももたねぇぞ。


 考えろ日野陽助……てか、さっきの因子の強制開放でカラダが痺れて動かねぇ。


 でも考えろ! 考えろ! 考えろ!


「死ね! 人間!」


 と、両面宿儺がおれと比渡に迫ってきた。


 そして――


「――よく頑張ったな! 少年少女よ!」


『明日香さん!』

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