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反省会

 食堂でカレーを頼んだおれは空いている席を探していた。


 だいぶ席が埋まっているな、もう少し早く来るべきだったか。


「日野君日野君、こっちこっち」


 と、おれを呼ぶのは秋だった。


 秋と比渡と実凪は同じテーブルに座っていた。


「おう、どうも」おれは一つ空いている席に座った。


 って、どうしてこの四人なの? おれをパシリにでも使う気か? 残念だがおれには比渡ヒトリという飼い主がいるからな。お使いなら比渡を通してもらわないと困るぞ。


「それで、ぼくたち第十班で反省会をしようと思うんだけど、陽助君はこの後用事とかある?」と実凪。


「いいや、時間ならあるぞ」


 本当は飯食い終わったらグラウンドで犬因子鍛えようと思っていたけど、こうなっては断りずらい。


「そっか、良かった」と秋。


「それじゃあ、食べながらで悪いけど陽助君はみんなの動きを見ていてどうだった?」と実凪。


 え? 急におれから? そこはショタの実凪からでしょ。若そうな順からでしょ。おれは結構渋い顔だと思うぞ、特に目が腐っているし。


「うーん、そうだな……チームワーク的には良かったと思うぞ、初めて組んだ割には役割分担出来ていたと思うし。でもやっぱり噛み合わないところも多少見受けられたか。作戦っていう作戦は練れなかったし、お互いの犬因子の特徴を活かしきれていなかったと思う」


「だよねぇ、わたしもそう思うよ。超人型がいながら作戦のレパートリーが少なかったよね」


「まあ急だったしね。ぼくは、東雲先生相手になかなか粘った方だと思うよ。本来なら開始数分で気絶させられていたけど、今回は十数分は立っていられた」


 そうか、中等部からいる生徒は東雲先生と戦ったことがあるのか。


「ヒトリさんは何か思ったことはある?」と実凪。


「わたし……そうね、わたしは自分のことで精一杯だったから、チームワークというのは出来ていなかったと思う。わたしが足手まといになってしまったことが敗因だと思う」


「いや、足手まといじゃない。今回の問題というのは如何(いか)にして東雲先生に一発与えるかだ。互いが互いを想い行動していては絶対に一発与えられない。あれだけの格上を相手にするのであれば、犠牲もやむを得ないってもんだ」


「そのやり方は嫌いよ。わたしたちはチームで戦っていたの、誰かが欠ければ勝機すらない」


「しかしだな、犠牲を作って勝利を得られることもある」


「実践で通用するかしら……誰か一人でも行動が遅ければ倒せるタイミングを逃すわ。今回の作戦Bはわたしの行動速度が遅かったのが原因よ」


「今回の演習は比渡だけが悪いわけじゃねぇよ。東雲先生を抑えきれなかったおれたちも悪い。ただ、作戦Bは誰かが犠牲となって初めて成功する合理的な作戦だ」


「誰かを犠牲にして生き残ったとして誰が喜ぶのよ……」


「勝った奴が喜べばいい」


「そんなことで勝っても嬉しくないわよ」


「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」と秋はおれと比渡に冷水をかけるが如く言った。


 なんかこれ青春しているって感じがする。お互いを高め合うところとかさ。この学園来ておれの青春が始まったって感じる。


「作戦Bを提案したぼくとしては、ちょっと乱暴な作戦だったと思う」


「いいや、作戦的には良かった。ひとり生き残ればみんなの勝ちだったからな」


 と、おれが言うと比渡はおれを睨んできた。そんな目で見ないで、おれのマゾ心が反応してしまいます。


「あはは……」


「あはは……」


 秋と実凪のふたりはこの空気が苦手なのか空笑いで答える。


 すっかり空気が悪くなったが仕方ない。おれはヒトとの接し方なんて学んできていないので仕方なかろう。


「まあ、みんなまだまだ成長途中ということだ」


 東雲先生がそう言っておれたちのテーブルに大盛りのカツ丼を置いた。


 何? さっきの会話聞いてたの? それとも盗聴してたの? 犯罪だよそれ。


「日野、確かに犠牲の上にわたしたちドッグズはある。でもな、人間はひとりでは生きていけないんだよ」


「それは分かっているつもりですけど」


「分かってないから言っているんだ。鬼を倒す合理的な作戦でも、犠牲なんて言葉は使ってはならない。最後まで諦めず、仲間を信じることが勝利への近道だ」


「じゃあ、今回の問題の正解はなんなんですか? 学校の問題には正解があるものでしょ? 正解が無ければテストや試験なんてやる意味がない」


「はぁ、そんなことでは本当の孤独になってしまうよ」


 と、東雲先生はため息をついてからおれの頭をなでてきた。


 解らねぇ問題だ。大問題だ。


 と、おれはカレーを早食いしてひとりグラウンドに向かった。



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