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鬼殺し

 イテテて……あれ? 痛くない。


 あんな上空から真っ逆さまに落ちたのにどうしておれは生きている? いや待て、おれは死んだのか? 痛みを感じないってことは即死だったってことか?


<おや、傷ひとつ無しですか。すべての階級因子に適合しただけはありますね>


 階級因子だ? そんな因子聞いたことねぇよ。なんだ、もしかしておれは狼にでもなったのか? 遠吠えしたら他の狼が返事をしてくれるのか?


 そんな考えは置いとくとして、おれは立ち上がった。


「貴様、なぜ生きている?」


 え? おれのこと? いやまあ、分かんないけど生きているんだよねこれが。


 目の前には鬼がいる。その鬼の手には気絶しているのか死んでいるのか判断のつかない比渡ヒトリが握られている。


「決まってんだろ、お前を倒しに地獄から舞い戻ってきたんだよ。いや、空から落ちてきたから天国から舞い戻ったのか」


「そうか……貴様、適合者だったか」


 鬼は訳の分からないことを言う。


 なんだか知らないが今のおれは気分がいい。気分がいいから鬼から財宝をかっぱらって逃がしてやってもいいが、許さねぇ。おれは優しい桃太郎さんじゃねぇからな。


「そんなことより、決着つけようぜ鬼野郎」


「適合者だからと言って調子に乗るなよ小僧! ドッグズの下っ端が!」


 と、鬼はおれを殺す勢いで攻撃してきた。


 なんだこれ? 鬼の動きが遅く見える。避けれる、鬼の攻撃を簡単に避けられる。


 おれはカウンターで鬼の顔面を殴り飛ばした。


「ぐあああぁ!」みっともない声を発しながら鬼はフェンスにぶつかった。


 空中を漂うようにして飛んだ比渡をおれはキャッチする。


「お姫様は返してもらったぜ、間抜け鬼野郎」


 なんか分からねぇけど、今なら鬼に勝てる気がする。てか比渡体重軽いな。おれのお姫様抱っこ第一号が比渡か……よし! このまま結婚(ゴールイン)しようぜ。


「ぐっ、貴様! 許さん!」


 許してもらうつもりは最初からねぇよ。


「野郎共! そいつを捕らえろ!」


 と、豚学の生徒はおれを取り囲んだ。


 邪魔だワンなぁ。こいつらは人間だから殺さないでおくとして、さてどうするか。


 おれは豚学の生徒を殴る蹴ると気絶させていった。


<素人にしてはまずまずの力の使い方です。人間と戦う時の力加減を理解しているようで安心しました>とベアトリクス。


 そりゃあおれが本気出したら皆殺しにしちゃうし、おれって明日から本気出すタイプの人間だからな。


「くっ! 貴様は殺す!」


「貴様じゃねぇ、おれの名前は日野陽助だ。拡散希望だから地獄に行ってお前の仲間におれの名前を広めとけ」


 うわぁ、おれって今結構かっこいい? このままだとおれの青春ラブコメはハーレムラブコメになっちゃう?


 鬼はどこからともなく棍棒を取り出した。


 あのさ、武器はずるくない? おれも武器が欲しいよ、お父さんおれにもあれ買って。


「調子に乗るな! ニンゲンが!」


 おれに向かって棍棒を振るう鬼。おれはパンチで棍棒を粉々に砕いた。


「調子に乗ったのはどっちだ? 鬼野郎」


 おれの蹴りが鬼にヒットすると、鬼はまたフェンスにぶつかった。


 やっぱおれ覚醒したんだわ。人間の限界を超えた力って凄いな、それともこれが夢落ちってか?


 と、そこで比渡が起き上がった。


「おう、大丈夫か?」


「えぇ、なんとか。それより日野君、あの鬼を殺しなさい」


 殺す? 物騒だな、おれは殺しなんてしない優しい人間だぞ。誰がなんといおうと殺しなんてしない。虫だろうが鬼だろうが殺せないんだワン!


「殺すって……冗談だろ? 半殺しって意味だろ? 桃太郎さんは殺しはしないぜ?」


「そう……」


 と、比渡は日本刀を掴むと鬼の方へ向かっていった。


 次に比渡がすることを予想できたが、おれはただ結末を眺めていた。


「悪く思わないで頂戴」


「ニンゲンめ……お前たちのした事を我ら鬼の一族は忘れんぞ」


 ――比渡は鬼の首を刎ねた。そう、鬼を殺したのだ。


「日野君、わたしたちは桃太郎でも聖人でもない。わたしたちは鬼を殺し、学生の青春を守る――鬼殺しなのよ」


 鬼殺し……そんなお酒みたいな名前言われたところでどう反応してよいやら。


 と、急に眠気が襲ってきたおれは、目を瞑った。

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